ビューティ

ロート製薬がヘアサロン市場に参入 その理由はサロンビジネスの根幹にかかわるものだった

 ロート製薬は社内ベンチャーとして、ヘアサロン向けのヘアケア事業をスタートさせた。いわゆるパーソナライズヘアケアを提案する新ブランド「コンステラ(CONSTELLA)」を立ち上げ、同社の事業戦略室がAIベンチャーと共に新会社アノマリーを設立し運用している。

 パーソナライズヘアケアは、一般市場では「メデュラ」「ミクス」「ボタニスト」など数ブランドが既に事業展開をスタートさせ、徐々に認知度を上げてきている。しかし「コンステラ」はそれらの後追いではなく、“CO-CREATION(共創)”という全く異なるコンセプトで展開していくという。ロート製薬といえば目薬や薬などのイメージが強いが、実はビューティシェアも高く、スキンケアブランド「オバジ」や「肌ラボ」、「エピステーム」などが人気。そうした企業が、新ジャンル開拓に向けて掲げた“共創”というコンセプトとは――。ロート製薬の平澤伸浩・事業戦略室長に新ビジネスの概要とビジョンを聞いた。

WWD:ヘアサロン市場に参入した理由は?

平澤室長(以下、平澤):私が室長を務める事業戦略室は、ロート製薬の本業とは異なるカテゴリーで、新規事業を立ち上げる部署です。新ビジネスを模索する中で、最近登場し始めたパーソナライズシャンプーが、とても面白いビジネスモデルだと感じました。ただ一般市場においては、既にいくつかのブランドが展開しているので、あえて参入する魅力は感じませんでした。そこでヘアサロン市場をリサーチしていく中で、いくつもの発見があったんです。中でも興味深かったのが、“スタイリストと顧客の関係”が他に類を見ないほど強く、信頼により結ばれていること。そしてその関係は、スタイリストそれぞれの裁量によって培われていて、システマチックなサポートがなされていないケースが多いことです。そこでパーソナライズヘアケアと、アノマリーが得意とするAIを組み合わせたサービスで、そのサポートをすることに大きな魅力を感じたんです。

WWD:そうして立ち上げたパーソナライズヘアケアブランド「コンステラ」の特徴は?

平澤:主に3つあります。1つはヘアサロン市場で展開し、サービスの提供において必ず美容師を介するビジネスモデルであるという点です。ヘアサロンでお客さまはまず、専用の問診プログラムを使って頭皮や髪質、髪の状態や生活習慣に関する質問項目に答えます。次に美容師がヘアケアのプロの目で髪を診断し、お客さまの問診データを補正していく。診断結果に興味を持ったらブランドサイトへ行き、美容師と一緒に香りを選ぶ、というプロセスでカスタマイズしていきます。「コンステラ」のテーマは“旅”ですので、“レイトチェックアウト”“寺院へと続く道”“予期せぬ出逢い”といった、旅を通じて出合うシーンから着想した個性ある香りを用意しています。

WWD:その場で買わなければいけない?

平澤:診断結果が出ても、その場で購入を決める必要はなく、帰宅後にカウンセリング内容をマイページで確認してから購入することもできます。その場合でも利益が美容師に行く仕組みを整えているため、美容室は在庫を抱えることなくビジネスができる。また、お客さまが製品をリピートする場合は自宅からの購入が可能ですが、その際も美容師との簡単なカウンセリングを介してからの購入となります。あえて手間暇かけたオーダー方法にすることで、信頼できる美容師とのコラボレーティブ製品を、大切に作っていく感覚を強く感じられるサービスになっているんです。また、自宅からの購入の場合でも美容師に利益が入るようになっています。

WWD:2つ目の特徴は?

平澤:2つ目は、AIが一人一人のお客さまにより適した処方を学習していくという点です。カスタマイズのプロセスにおいて、お客さまが髪の状態などを自己診断した後に、担当スタイリストが診断していくことは先述しました。データを蓄積することで、自己診断とプロによる診断の“差異”をAIが認識し、お客さまの現在の髪の状態と、なりたい髪質との差異を分析して処方を割り出すようにしていく。AIはこのプロセスを繰り返すことによって、よりニーズに合ったものに進化していくんです。

WWD:AIの登場とは新しいですね。

平澤:AIはヘアケア製品の処方のみに留まらず、スタイリストがお客さまを知るためのあらゆるデータを蓄積・分析できる可能性を秘めています。実はここが「コンステラ」の核となる部分で、ヘアサロン独自の価値である“スタイリストと顧客の関係”をより深めるサポートをするビジネスで、パーソナライズヘアケアはその1つでもあるんです。

WWD:3つ目の特徴は?

平澤:3つ目は製品そのものの性能です。アイテムはシャンプーとトリートメントで、9600通りの組み合わせからAIが処方したベースに加え、効果成分である2つのインフュージョン(添加剤)が付いてきます。それをお客さまが使用前に調合することで、より細かなパーソナルニーズに応えられるよう設計しています。そういう意味で、私たちは「コンステラ」は“パーソナライズヘアケア”というより“CO-CREATION(共創)ヘアケア”と考えています。

WWD:自分の手でさらにカスタマイズできるところが面白いですね。今回、ロート製薬という一般的な知名度の高い企業がヘアサロン業界に参入したこと自体が大きなニュースですが、“スタイリストと顧客の関係”というヘアサロンビジネスの“核”に着目した点も新しいと感じます。

平澤:パーソナライズヘアケアは私たちの目指す事業の第一歩であり、今後も“スタイリストと顧客の関係”のさらなる構築をサポートしていきたいです。

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