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「ここに行く理由がある空間を」  佐藤可士和が手掛けた“美”のスタジオが完成

 ヘアサロン専売品などを取り扱うヘアケアメーカーのビューティーエクスペリエンスは10月7日、美容師の作品撮りなどのために提供する4拠点目のスタジオとして、大阪市中央区に「ビューティーエクスペリエンス 大阪スタジオ」をリニューアルオープンした。これにより東京、名古屋、福岡スタジオに続いて、最後の大阪スタジオのリニューアルが完了したことになる。全スタジオのスペースデザインをはじめ、同社の新ミッションの策定や社名およびロゴの刷新など全てを手掛けたのは、クリエイティブスタジオSAMURAIの佐藤可士和クリエイティブディレクターだ。ここでは、佐藤クリエイティブディレクターと福井敏浩ビューティーエクスペリエンス社長が、大阪スタジオの魅力と、美の体験を発信する全スタジオの総括に関して熱いトークを交わした。

WWD:今回のスタジオのデザインコンセプトを教えてください。

佐藤クリエイティブディレクター(以下、佐藤):“美”という漢字をもとにデザインしたビューティーエクスペリエンスのロゴを軸に考えて、空間に配置しました。細長いスペースを最大限に生かしつつ、あると便利な収納やシンクをそのままアートにできたらいいなと思ったんです。ここはショップではありませんが、最近は何でもネットで買えるのでお店に行く理由がなくなりつつあります。そこで“ここに行く理由がある空間”を作ることが大事だと考えました。

福井社長(以下、福井):なるほど。ビューティーエクスペリエンスの世界観が、東京、名古屋、福岡、大阪と全て異なるデザインで表現されているのですが、決してバラバラではないというのがすごいですね。毎回驚きです。

佐藤:同じものを作るのではなく、毎回違うエクスペリエンスを作ることが重要なんです。

福井:シャンプー台の前には撮影用のホリゾント(舞台やスタジオで使われる背景用の幕または壁)もあるんですね。

佐藤:美容師の方が撮影をされる場所であることを踏まえ、奥のシャンプースペースとの仕切りを普通の壁にするより、ホリゾントの方が使いやすいのではないかと。また入口から見たときに、普通の壁で仕切ると空間がそこで終わりに見えてしまうので、空間の広がりを見せるのにもいいと思いました。

WWD:活用法はいろいろありそうですね。

福井:美容業界以外のことにも使えそうだなと考えています。さまざまな企業とコラボして、ここを発信の場にするのも面白いかなと思います。

佐藤:それはすごく重要なことですね。せっかくこういうスペースを作ったのでどんどん活用して、美容業界だけでなくいろいろな方が訪れる場にすることが大事だと思います。

福井:そうですね。大きな収納棚はオープンキッチンのようにも見えます(笑)。

佐藤:ここには冷蔵庫も備え付けられていますし、かなりの収納力があります。セミナーにも使えますし、新製品をディスプレーするなどさまざまに活用していただくために、オブジェでありつつ使い勝手のいいものにしています。

福井:一般の方向けにも何かできたらいいなと思っています。福岡スタジオはヨガを行うなどしているようです。

佐藤:そうなんですね。週末限定で社員食堂を一般開放している会社もありますね。

福井:面白い取り組みですね。大阪はアジアの玄関口でもあるので、そういう視点でも何か考えたいです。

WWD:4カ所のリニューアルが終了しました。今、どのような思いですか。

福井:私は当初から、他社のスタジオと同じようなものは作りたくないなと考えていました。可士和さんのおかげでそれが実現できました。これで一通りのリニューアルが完了し、4拠点全てにおいて世界観を統一できたと思います。

佐藤:最初は東京からでしたね。社名やロゴなど全部を一貫してやらせていただいたので、うまくできたのだと思います。これがもしスタジオだけ手掛けるということだったら、

こういう風にはできなかったかもしれません。プロジェクトの最初から関わらせていただいているので、ロゴをベースに、それをどこまで崩してデザインしてもいいか、などの加減が僕には分かっていますから。

福井:確かに。スタジオのデザインだけ別の方に頼んだら、大事な部分が崩れてしまったかもしれません。

佐藤:グラデーションの色の選び方ひとつにしても、考えに考えてデザインしています。一色ではないけれどイメージに合うもの、全スタジオのトータルイメージで考えました。

福井:なるほど。おかげさまで、スタジオに来てくださったたくさんの美容師さまが喜んでくださっています。スタジオで撮影をした画像をインスタに上げている美容師さまも多いのですが、うちのどこのスタジオかすぐに分かります。

佐藤:まさにそういうことも狙いのひとつです。このスタジオも見てすぐに分かると思います。SNSには莫大な情報量があるので、そこにちょっと写っているだけでも、たくさん拡散したときに大きな効果を生むんです。

WWD:お二人は出会ってからどれくらいになりますか?

福井:社名を変更した2015年よりも前ですから、初めてお会いしたのは5~6年前でしょうか。

佐藤:そうですね。モルトベーネからビューティーエクスペリエンスに社名を変えたのは、イメージ通りでしたか?このようなスタジオができることは想像されていましたか?

福井:いえ、全然。ここまで変わるとは思っていなかったです。当初は社名を変えようとも、オフィスを移転しようとも思っていませんでしたから。まず私自身がやりたいことをミッションにし、それが空間(オフィスやスタジオ)になりました。可士和さんから学んだところが多く、製品ブランドなども取捨選択してスリム化しました。1つの山を登り切った感じです。するとまた次の山が見えてくるので、今後もいろいろなことが変わっていく可能性があるかもしれません。

佐藤:オフィスを移転したときがターニングポイントだったのかなと思いますが、いかがですか?

福井:そうですね。会社全体の一体感が出ました。

佐藤:空間のインパクトは大きいですよね。働く場所が変わると、社員の方の気持ちも変わるのだと思います。

福井:それら全てを同じタイミングでできたのはよかったですね。