ビューティ

「挑戦を超えた挑発」 人気美容師・中村トメ吉が語る“美容室「ゴールド」を始めた理由”

 今年7月に「オーシャントーキョー(OCEAN TOKYO)」を退社し、9月10日に自身のヘアサロン「ゴールド(GOALD)」をオープンした中村トメ吉代表は、経営者としても、若手を活用するマネジメントが注目を集めている。「一般の大手企業にも負けない美容室を作りたい」と語る中村代表がイメージする未来像を聞いた。

WWD:中村さんがまた一から美容室を始めようと思った理由は?

中村トメ吉(以下、中村):自分が思う理想の美容室、美容師を形にしたかったからです。美容室、美容師は現在さまざまな形態に溢れていて、何が正解か分かりにくくなっています。令和になったこのタイミングで“「ゴールド」の在り方こそ正解”だと業界や世の中に示したいと思っています。挑戦を超えた挑発です(笑)。

WWD:「ゴールド」が目指すものは?

中村:ヘアサロン業界は、いまだに美容師たちの待遇がいいとはいえません。ただ給料を上げればいいという単純な問題ではなく、会社として健全な経営計画を作り、自身が将来像を描ける役割やキャリアパスを提示し、成果に見合うライフスタイルを約束する。「ゴールド」は、そんな仲間の夢や幸せをデザインできる会社でありたいと考えています。

そして美容室を軸にしながらも、一般の人も憧れるようなライフスタイルカンパニーにしたい。もともと僕が美容師を目指したのはメンズをカッコよくしたいという動機からでした。だから美容室だけではなく、プロダクトやメデイア、教育機関など、カッコよくなれる、若者の背中を押せる要素は全部用意してあげたい。そのためには土台となるしっかりとした仕組みづくりと経営計画が重要です。それなら自分で一から作ろうと思い、「ゴールド」を創業しました。

WWD:具体的にどういった仕組みづくりを行っていくのか?

中村:美容室の組織は99%が営業職なんです。集客、売り上げといった評価基準がベースで売り上げが高くなれば、高い給料がもらえ、役職が上がるといったシンプルなもの。「夢があるでしょ」って表面的に見えますが、組織は目の前の評価を追わせて、未来のライフスタイルを描ける教育を放棄している形だと思います。そして体力的にも感性的にも35歳くらいでピークを迎えて、以降は売り上げが落ちて、将来が見えなくて不安になってしまうケースが多いんです。そのため従来の美容室が取り入れているサロンワークの売り上げによる歩合制だと、限界がきてしまうんです。「ゴールド」では未来のキャリアプランをしっかりと示し、安心して働ける環境を整えていきたいと考えています。

やっていきたいのは、スタッフを、“人、モノ、お金をちゃんと動かせる人”に育てていくこと。そのためにはそれぞれの役割と評価基準が必要だと思っています。「ゴールド」では10の役職とそれぞれの評価、目的を定めています。例えばアシスタントでも3つの役職があり、研修は22万円からのスタートで、25万~30万円まで稼げるシステムになっています。

WWD:“人、モノ、お金をちゃんと動かせる人”というのはどう実現する?

中村:将来的には各スタッフに自分のお店を持ってもらう。ゴールドという会社があって、その中にスタッフのさまざまな美容室(子会社)があるというイメージです。そうすると自分の売り上げではなく、そのお店全体をマネジメントして利益を上げていかなければいけないですし、プレーヤーの価値観では通用しません。極端にいうと美容師から経営者にシフトするキャリアプランで、事業を広げたり、2店舗、3店舗といった複数の店舗を経営することも可能になります。

「ゴールド」では“個性の調和”を掲げ、仕組みづくり、教育とプロデュースに注力してやっていきたいと思っています。僕は美容室を“人の最大の教育機関”だと捉えています。特にメンズ美容室には中学生から投資家まで幅広いお客さまが来店し、こんなに人と時間を共有する仕事って美容師以外ないですよね。お客さまと時間を共有することで、美容師は多くのことが学べるんです。これってすごいことだと思うんですよね。そうしたコミュニティースペースとしての役割もあって、お客さまから派生してビジネスにつながることもあります。そのためにも“人対人”を大切にすることがすごく重要で、そうしたスタッフを育てていくことが僕の役目だと思っています。

「ゴールド」は若者の夢を応援する場所

WWD:出店場所は渋谷にこだわった?

中村:渋谷区が掲げる2020年以降のビジョンを聞いてからは、絶対に渋谷に出したいと思っていました。

WWD:オープニングメンバーは何人でスタートした?

中村:美容師は13人で、そのうちスタイリストは6人。美容師以外にも財務やマーケティング、広報、営業などを担当するスペシャリストが3人います。限られた時間の中で、最短でビジョンに向かうためにはそれぞれの得意分野の役割を100パーセント全うすることが重要だと考えています。

従来の美容師オーナー1人での経営だと、サロンワークもやりながら、経営もやっていかないといけないし、多くの場合サロンワーク以外の知識や経験が低すぎる。サロンワークと経営を両方やっていくのはすごく大変で、無理無駄が多くなり、スタッフに不安や負担をかけてしまう。過去の経験から、立ち上げ時からバックオフィスを充実させて、美容師がサロンワークに全力で取り組める土台がしっかりとあることが重要だと実感しています。美容師が安心して、楽しみながら働ける環境づくりを徹底していきます。

WWD:店名の「ゴールド」はすぐ決まった?

中村:最初は「リアリティー」にしようと思っていたんです。スタッフにもお客さまにも包み隠さず、真実を発信していくという思いを込めて。でもスタッフから「ダサい」って反対されて(笑)。そこからまた500通りくらい出して考えました。“カッコいい”を追求してきた結果「目的を全うして輝いて生きている人はカッコいい」と思うことがあって。“輝く”を意味する“GOLD”に目標や目的を意味する“GOAL”を組み合わせて「GOALD」という造語にしました。あと僕のキャラやチャラさも“ゴールド”って感じだし(笑)。

WWD:今後の展開は?

中村:美容室を成功させるハウツーはすでに持っているので、スピーディーに成長させていくつもりです。僕は神輿にのって自分が暴れて先陣を切るというより、神輿をしっかりとかついで安定させ、道筋を描き、その上でスタッフに自由に暴れてもらいたいです。まだ「ゴールド」はスタートしたばかりなので、最初は僕が先陣をきりますけどね(笑)。

ありがたいことに仲間にも恵まれているので、その仲間がどんどん活躍していける環境をつくってあげたいですし、スタッフが誇れる会社にしていきたいです。あとは、先ほども言ったように美容室はコミュニティースペースでもあるので、“人対人”にこだわり、若者の夢を応援する場所ではありたいし、少しでも多くの人を幸せにしてきたいです。

■GOALD
時間:火〜日曜日 12:00〜21:00
定休日:月曜日
住所:東京都渋谷区神南1-22-7 岩本ビル5F

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

原宿・新時代 ファッション&カルチャーをつなぐ人たち【WWDJAPAN BEAUTY付録:中価格帯コスメ攻略法】

「WWDJAPAN」4月22日号の特集は「原宿・新時代」です。ファッションの街・原宿が転換期を迎えています。訪日客が急回復し、裏通りまで人であふれるようになりました。新しい店舗も次々にオープンし、4月17日には神宮前交差点に大型商業施設「ハラカド」が開業しました。目まぐるしく更新され、世界への発信力を高める原宿。この街の担い手たちは、時代の変化をどう読み取り、何をしようとしているのか。この特集では…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。

メルマガ会員の登録が完了しました。