ファッション

「着る人の顔が浮かばないならショーをやる意味はない」 ファッションフリークOL「WWDジャパン」最新号につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuがリアルな目線を生かし、「このニュースからはコレが見える」という切り口でさまざまな記事につぶやきます。

今日のニュース:P.8-9「楽天支援の東コレは何が変わった?」

読み解きポイント「何を見せたいかハッキリしていた“裏”東コレが面白かった!」

ニュースのポイント

 冠スポンサーがアマゾン ファッションから楽天に代わって初めての東コレ。準備期間が短かったとはいえ、Rakuten Fashionサイト内に導入した予約購入システムの告知が十分でなかったり、公式スケジュールのショーと同時に楽天が記者会見を行ったり、運営には疑問が残る初回となった。とはいえ盛り上がりに欠けたわけではなく、JFWOが「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」や「コウザブロウ(KOSABURO)」といった海外で活躍するブランドを招へいしたり、「ハイク(NYKE)」や「ミスタージェントルマン(MR. GENTLEMAN)」といったベテランが盛り上げた。

Azuはこう読む!

 すでにこの連載で東コレのことは何度か書いていますが、今まではファッションウイークの取り組みについて言及していました。そこで今回は、ブランドに着目したいと思います。とはいえ全てのショーを回ったわけではないので、あくまで見た範囲での意見です。

 今回、心に最も残ったのは東コレ“裏”の取り組みでした。この時点ですでに東コレへの意見ではなくなるのですが(笑)、ファッションウイークには公式スケジュールとオフスケジュールの2種類があり、公式は文字通りファッションウイークに正式に登録して参加しているところ。オフスケジュールというのは期間中にショーやインスタレーションを「非公式」で行うところです。

 非公式なので公式サイトには載らないし、ブランドやプレスから案内がなければ知る由もありません。しかも公式スケジュールなら他のブランドのスケジュールやゲストの移動時間を考慮してくれますが、非公式は時間がぶつかろうが場所が遠かろうが関係ありません。もちろんメディア露出も確約されません。それでも、オフスケジュールが面白かった!

 2018年春夏の東コレ(公式)で衝撃のTバックジーンズを発表した「ティーボー(THIBAUT)」は、老舗アンティークショップ「THE GLOBE ANTIQUES」を舞台にインスタレーションを開催。店内に入ると順路通り進むように案内され、「この先でショーかな?」と思ったら目の前には骨董品に紛れてモデルが立っていました。インビテーションには「Human's market」の文字。「ティーボー」の大胆で無邪気な洋服を身にまとったモデルたちが、まるではく製のように佇んでいます。もちろん周りは実際に売られている骨董品で、目につく値札には「ティーボー」の札が重ねられている徹底ぶり。まるで密かに怪しい商売がなされる路地裏マーケットのような空間は、「ティーボー」が作る、自由気ままで少しの狂気を孕んだジプシーたちの世界。ランウエイで見せる躍動感も良いですが、施工したアンリアルな舞台上では演出しきれない物語もあるのです。

 もうひとつ、個人的“裏”東コレNo.1だったのがロンドンから帰国したばかりの「ユウショウコバヤシ(YUSHO KOBAYASHI)」のインスタレーションです。青山のスタジオに作ったのは、彼が過ごした数年間のヨーロッパの夏に想いを馳せて描いた小さな部屋のような空間。ほぼ定刻に登場したのは、ギターを抱えた一人の女性。バンド「羊文学」の塩塚モエカによる優しい弾き語りから始まったインスタレーションは、彼の脳裏に焼き付いた「あの夏」を短編ムービーで見ているような気分にさせられる、とても私的で詩的なものだったように感じます。この映画に登場するのは二人の女性、歌い手、そしてカメラマン。二人の女性は置いてある服を着て、撮られて、寛いで、脱いでをゆっくり繰り返します。そして彼女たちだけではなく、動画を撮影するカメラマンやスタッフもどこかに「ユウショウコバヤシ」の服や小物を身につけていて、役者だけが主役ではなく、舞台に“袖”はないのだと感じてちょっと涙ぐんでしまいました。

 彼はこのコレクションに添えた文章を「このファッションが、また誰かの生活へと続いていきますように。」と締めくくっています。私はこのインスタレーションを見て、この服がどんな人たちの生活を彩るのか、ふわりと想像することができました。

 ショーの意義とは、ファッションウイークに参加する意味とは、が議論されていましたが、彼らのようにシンプルに「どう見せたいか」「何を伝えたいか」を突き詰めた結果、変わった場所でショーをやるなり、あえて裏でやるなりの選択は自由です。バイヤーが来ないと嘆いているなら、そのお金で展示会の地方巡礼とかをすれば良い。伝えたいことや着る人の顔が明確に浮かばないのなら、ショーをやる意味は無いと思います。

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne