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勢いづくパリの新鋭「カサブランカ」 自然を愛する男の美しいメンズウエア

 スキンヘッドにたっぷり蓄えた髭とサングラス——この一度見たら忘れられない個性を放つのが、メンズブランド「カサブランカ(CASABLANCA)」を手掛けるシャラフ・タジェル(Charaf Tajer)だ。モロッコ生まれの同氏は、パリでマーケティング業やクリエイティブチームのパン オ ショコラ(PAIN O CHOKOLAT)のメンバーとしてクラブ「ル・ポンポン(LE POMPON)」を経営するかたわら、2019年春夏シーズンに出身国の都市名を冠した「カサブランカ」を立ち上げた。同ブランドはユナイテッドアローズ&サンズ(UNITED ARROWS & SONS)でポップアップストアを9月24日まで開催しており、同店と東京・原宿のアジアンレストラン「チャオ!バンブー(CHAO! BAMBOO )」とのトリプルコラボレーションTシャツ(6000円)などを販売している。

服作り経験ゼロだから作り出せた自由なムード

 「自分が着たい服を作りたかった」——ブランド立ち上げのきっかけについてそう語るタジェルは、服作りを学んだ経験がない。しかし「ピガール(PIGALLE)」を率いるステファン・アシュプール(Stephane Ashpool)と親交が深く、同氏のクリエイションを近くで見ながら自らのブランドについて3〜4年の構想を重ねていった。ストリートに軸足を置いた独学ゆえの自由なムードと、クラシックな高級素材や自然の風景といった“美しいもの”を愛するタジェルのパーソナリティーが融合したコレクションは立ち上げ直後から話題を集め、世界中で取り扱いが始まった。現在の取引先は世界に67店舗で、20年春夏シーズンには126店舗に倍増予定と、売り上げは右肩上がりだ。19-20年秋冬と20年春夏シーズンはパリ・メンズ期間中にランウエイショーを行うなど、立ち上げ3シーズン目とは思えない勢いを見せている。スタッフは現在17人で、さらなる規模拡大のための雇用も検討しているという。順調なスタートを切った同ブランドだが、「3000ユーロの資金からスタートしたときは、まさかここまで大きくなるとは思っていなかったからビックリだよ。(日本語で)ヤバイ」とタジェルは驚く。

 タジェルがコレクションを製作する際は、自身の幼少期を思い描く。「幼いころはモロッコのカサブランカで夏休みを過ごすことが多かったんだ。そこで見た人たちはとてもきれいに着飾っていた。まるで『世界が今日で終わるから美しい自分でいたい』と感じているかのようだったよ」と振り返る。アイテムはダブルブレストのスーツやコート、シルクシャツなどベーシックなものが多いが、素材感やグラフィックで“美しさ”を表現する。現在はメンズウエアのみだが「ウィメンズウエアから着想することが多いんだ」と話し、将来的にはウィメンズの構想もあるようだ。

 昨今、アパレルブランドが続々と表明しているサステイナブルへの姿勢についても、独自の視点を持つ。「ボタンはプラスチックではなくココナツ製だし、次のシーズンからコットンは100%オーガニックのものしか使わない。ありがたいことに知名度が上がっているから、ブランドとして環境に配慮するのは当然の使命。でも、僕たちは“エコ”ブランドじゃない。次世代を担う若者や子供に、自然ってこんなに美しいだよ、こんなに素晴らしいんだよということを伝えていきたいだけなんだ」。エキゾチックな夜空や雪が残る山脈、眼前に広がる広大な海など、ブランドの特徴でもある多彩なグラフィックには、美しいものを愛するデザイナーの強い思いが込められていたのだ。旅行好きで親日家でもあるタジェルは、最後にこう締めくくった。「いつか大好きな日本を車で縦断したい。そして、日本をテーマにしたコレクションを作りたい」。