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連載 コレクション日記

ミラノはますますドタバタ日記Vol.1 「プラダ」流“こんまりのときめき”ミニマル? 「ジル サンダー」で2020年春夏の大正解出ました!

 ボンジョルノ〜。2020年春夏ニューヨーク・コレクション取材を終えて帰国して、3連休を日本で過ごし、やって参りましたミラノです。ミラノのウィメンズ・コレクションは超久しぶり。5年ぶり、くらいなのかな?その間に、「グッチ(GUCCI)」や「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」「ミッソーニ(MISSONI)」などは、男女合同ショー(通称「コーエドショー」)にシフト。もうすぐ、久しぶりの“再会”が待っております(笑)。

 というワケで、相変わらずバタバタは必至ですが、ミラノでも楽しくコレクション取材に参りましょう〜!

11:30 ユナイテッド カラーズ オブ ベネトン

 ミラノ最初の取材は、「ユナイテッド カラーズ オブ ベネトン(UNITED COLORS OF BENETTON.以下、ベネトン)」。かの有名なジャン・シャルル・ド・カステルバジャック(Jean-Charles de Castelbajac)に、昨日発表したコレクションについてのインタビューです。

 この記事の通り、1960年代から活躍する彼は昨年、「ベネトン」のアーティスティック・ディレクターに就任。今回が最初のフルコレクションです。

 「ベネトン」とカステルバジャック、パーフェクトマッチですね。お互い、今まで協業に至らなかったのが不思議なくらい(笑)。コレクションはスーパーカワイイし、「若者を鼓舞するメッセージを送りたい。特にサステイナブルの価値観については一緒に考えたい」と話すカステルバジャックにとって、昔はあれほど激しく社会を揺さぶってきた「ベネトン」は、ベストパートナーです。もっと早く出会えなかったものでしょうか?きっと、双方の運命は変わっていたハズ。これから、また輝かしい時代が始まるのか?楽しみです。

13:00 ピーター ピロット

 さてお次は、ロンドンからやってきた「ピーター ピロット(PETER PILOTTO)」。生地の多くがイタリア製ゆえ、生産の地に敬意を込めてミラノまで、だそうです。

 ご自慢の生地、いっぱい出てきました(笑)。花々をプリントしたシルクドレスは、数種類を組み合わせつつプリーツを寄せて露出度高めのドレスに。ラメ入りのリブニットもボディコンシャスで深いスリット入りです。初登場のメンズは、オーバーサイズの開襟シャツ。全体的にリゾート感満載ですが、ブリーチデニムなどダークサイドなストリートをほんのひと匙加えます。ん~、もうちょっとバリエーションが欲しいかな。美しいシルクドレスの色違いが登場するたび、そんな気分を抱いてしまいます。

13:55 フルラ

 お次は「フルラ(FURLA)」。

 このニュースの通り、ロゴも変わり、バッグも変わりました。ロゴは、はやりのゴシック調。「バーバリー(BURBERRY)」とかと一緒ですね。一説には、クラシカルな書体よりSNSでの視認性が高い。つまり、タイムラインを高速スクロールしていても目に留まりやすい、と言われますが、スマホ世代の皆さん、いかがでしょうか?

 ロゴとバッグはちょっと変わりましたが、安心してください。お値段はそのままです(笑)。個人的には、丸みと言うか柔らかさを帯びて、女性にはうれしい変身なのでは?と思います。特に全面花柄のバッグ、カワイイぞ!!

 この記事の通り、コレまでの「フルラ」の基幹コレクション“メトロポリス”は、カッチリバッグでした。総柄もあんまりなかったから、コレは新しいイメージの構築に一役買いそうです。

 そして、イマドキなインスタ映えスポットをたくさん用意。フェティッシュなモデルと一緒に記念撮影しちゃいましょう(笑)。

 商品を見た後は、ジョバンナ・フルラネット(Giovanna Furlanetto)社長にインタビュー。ブランド設立から90年以上がたった今、初めてロゴを考案したり、20年春夏のイチオシバッグに創業年の“1927”という名前をつけたり、ブランドのレガシー(遺産)を伝えようとしています。その理由を尋ねると、「私たちのレガシーは、ずっとあらゆる女性のために手ごろな価格でメード・イン・イタリーのバッグを作り続けていること。今までは上手にコミュニケーションできていなかった。コレからちゃんと伝えたい」と話します。なるほど、ブランドは変わらず。その伝え方が変わる変身なんですね。

15:10 ブルネロ クチネリ

 お次は、リラックス&スポーティー・ラグジュアリーの頂点に君臨します「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」でございます。ミラノ市内のショールームにお邪魔すると、ゲストは皆、“もぐもぐタイム”!ホスピタリティーに溢れる「ブルネロ クチネリ」のケータリングは絶品で、食いっぱぐれた昼ご飯を「ココで食べてやろう」というゲストが集結しています(笑)。

 残念ながら、僕にはそんな時間がなく(泣)、早速コレクションを拝見。20年春夏は「コレを買わずして、何を買う?」という存在になりそうなボックスシルエットのリラックスジャケットのスタイルが大豊作。そこにリラックスパンツ、もしくはひざ下ショーツのコーディネイトがイチオシです。デザインや装飾は控えめ。その分、素材と繊細な色のニュアンスを楽しんでもらおうという、最近のクリエイションは大賛成。白とベージュを基調にトルマリンブルーとフューシャピンク、それにピンクベージュを加えます。

 ウエアの売り上げ構成比が高いブランドは、バッグビジネスを開拓中。いろんなバッグがありますが、一番「クチネリ」らしいと思ったのは、コレかな……。ここはまだまだ工夫の余地がありそうですね(笑)。

16:35 プラダ

 さぁ、ミラノ初日のハイライト「プラダ(PRADA)」です。

 会場は、プラダ財団のアート施設、フォンダシオン プラダ。とにかくデカいです。セレブの姿もチラホラで、いよいよミラノコレ本格スタート!!というテンションが高まって参りました。

 このブランドのランウエイショーは、ちょっとした“禅問答”。パリでは「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」がその役割を務めますが(笑)、ゲストは皆、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)のちょっぴり不思議なクリエイションを見ながら、「コレはどういうことだろう?ミウッチャさん、アナタは今、何を考えているの?」と一生懸命考察するのです。こんな哲学的なブランド、そうそうありません。ミラノだと、あとは「グッチ(GUCCI)」くらいかな?

 ということで、皆さんも一緒に動画を見ながら考えてみましょう(笑)。

 コレクションは大別すると、パフスリーブのように盛り上がったショルダーラインのジャケットルック、ガーゼのような生地で作った粗野なくらいナチュラルなワンピース、そしてニットのベスト&スカート、もしくはポロニット&プリーツパンツに分かれます。

 さぁ、何かしら(笑)?

 上の写真をスワイプして見続けると、「似てるなぁ」って思いませんか?僕が最初に抱いた印象は、「とっかえっこ」(笑)。幼稚な言葉でミウッチャさんに失礼な気もしますが、コンケーブドショルダー&マザー・オブ・パールボタンのジャケット、リブ編みのポロニット、コットンガーゼのドレス、ボウタイブラウス、ミディ丈のペンシルスカートなんかを、みんながシェアして、取っ替え引っ替え着まわしている印象を受けました。そこでたどり着いたのが、「プラダ」流の“ときめきミニマリズム”。世界で大人気の、こんまり、のように、「ときめくアイテムだけを残したら、こうなりました」っていうアプローチなのでは?と思ったのです。以前からスタイルではミニマリズムと縁の深いブランドですが、今回は、MDの組み立て方がミニマリズムと言いましょうか?

 というのが、僕の“禅問答”の結果です。正解だといいな。というか、絶対の正解なんて、ないんですよ。それぞれが感じれば良い、それがファッションです。

17:40 ブルガリ

 「プラダ(PRADA)」周辺の殺人的な大渋滞を乗り越えて向かったのは、「ブルガリ(BVLGARI)」。今回はジュエリーではなく、レザーグッズのプレゼンテーションです。時計やジュエリーと同じ名前の“セルペンティ”や“ビー・ゼロワン”が今シーズンはピカピカのシルバー&ゴールド、もしくはホットピンクやターコイズのようなブルーに染まりました。

 会場には、コチラもSNS対策のコレが。お目汚し、失礼しました〜(サングラスが「ブルガリ」ですw)。

18:35 アルベルタ フェレッティ

 さぁ、昨日の睡眠は時差ボケでアラウンド3時間半。ネムイヨ。ツカレテキタヨ。そんな感じは否めませんが、テクテク歩いて「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」。1970年代風のサンドカラーをベースに、スエードのコンパクトジャケット&ミニスカートや、ストリートなGジャン、タイダイ、そしてヒッピーライクなカフタンドレスが盛りだくさん。カフタンドレスが、あまりに繊細なシフォンでできているので、オッパイ透けています。こういうの、そろそろなんとかした方がいいのかな?別にブラがあっても、誰も気にしないと思うのですが……。

19:30 N°21

 さぁ、お次は「ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)」。今回は男女合同ショーです。招待状は、なぜかパンツ(笑)。アレッサンドロ・デラクア(Alessandro Dell'Acqua)が大好きなベージュですが、コレを履くのは、なかなか勇気が入ります。実は今回、パンツを忘れちゃって(苦笑)、履いてきたパンツと持参したジムウエアのスパッツをこまめに洗いながら乗り切ろうとしているのですが、コレ、ワードローブに加えようかしら……(笑)?

 そんな話はさておき、コレクションは、合同ショーにふさわしいジェンダー・ニュートラルなムードです。袖に大きなスリットを刻んでマントやケープのように着るジャケットも、サテンで作ったノースリーブシャツとコーティング生地のショーツも、ジャージーで作ったボウタイ付きのプルオーバーも、総花柄のアイテムも、ドレス以外は男女の境界線がまるでナシ!!良きです。もともとメンズの中にフェミニン、ウィメンズの中にマスキュリンを忍ばせるブランドですから、当然の方向性でもあります。

 実は最近、「マスキュリン」とか「フェミニン」という言葉を使うことに、抵抗を覚えるようになっています。「もう、そういう言葉を使わなくて良い時代じゃない?」って思っているのです。だから「たくましい」とか「力強い」、「柔らかい」とか「優しい」という言葉に置き換え始めていて、僕はそれを心地よく感じています。だから、ジェンダー・ニュートラルを一歩前進させたかのごときクリエイションは、大賛成です。

20:35 ジル サンダー

 さぁ、本日のラストは、「ジル サンダー(JIL SANDER)」。見ているだけで微笑んじゃう仲良し夫婦、ルーク&ルーシー・メイヤーの(Luke & Lucy Meier)のコレクションです。

 ボックスシルエットのジャケットが盛りだくさんの今シーズンですが、出ましたね、1つの大正解が。この柔らかなシルクドレスの上から、カッチリジャケット。コレでしょう!!コレこそが、オンでもオフでも、(いや、そりゃこのブランドはお値段も張りますが)誰でも、季節を問わず、ドレスやジャケットを楽しめる1つの指針になるでしょう。

 素材からフォームを決めるかのごとく、ボリュームとドレープを自在に楽しむブランドですが、後半は、生地にラフィアを叩きつけたり、そのラフィアで飾りを作った後にラペルやヘムラインに加えたり、フリンジのように加えたり、アートの領域にも迫ります。それをごくごく穏やかなムードのまま、実はアヴァンギャルドに進めていく。堪能いたしました。

 ということで、初日から大満足。このあとは会食!!明日に備え、まずは寝ます(オヤスミナサイ……)。

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