フォーカス

「専門店はアプリ?」東急百貨店の構造改革を考える ITのプロ「WWDジャパン」最新号につぶやく

 大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。

今日のニュース:P.5「東横店閉店」から反転攻勢への準備

読み解きポイント:オーバーストアという課題の先にある「次の一手」

ニュースのポイント

 東急百貨店が、一番店である東横店閉店を機に、百貨店事業の構造改革を急いでいる。「東急フードショー」を始めとした食、化粧品、ファッションなどの専門店事業を自社の百貨店、東急沿線のショッピングセンターだけでなく、他沿線へ拡大することを計画。専門店事業も百貨店のマーチャンダイジング(MD)と定借で入るテナントのMDを融合させ、新しい顧客との接点を増やすことを狙っている。

CKRはこう読む!

 「2割減」。この10年で失われた、全国の百貨店の総売り場面積です。

 2008年、680万平方メートルだった総面積は、19年7月には540万平方メートルに減りました。今回は、百貨店が抱えるオーバーストア(店舗過剰)という課題に注目したいと思います。

 もともと百貨店は、目利きした商材を通じて「素敵なライフスタイルとは、こういうことです」という、ワクワクする情報を発信するところに価値がありました。オーバーストアという状況は、旧来の情報発信の仕方に「No」がつきつけられたと言い換えられるのではないでしょうか。

 07年からの10年間で、百貨店の売上高は、約8兆円から6兆円を割り込む水準まで縮小しました。リーマンショックや東日本大震災によるに消費の冷え込みもありますが、注目すべき出来事は、07年の「iPhone(スマートフォン)」の発売です。

 スマホの出荷量と百貨店の売上高は、見事に逆相関しています。スマホを活用したECが、百貨店の売り上げを全て奪ったということではありません。消費者は、スマホで入手した情報を活用して、百貨店ショッピング以外のことを楽しんでいるということです。

 それまでモバイル通信の主役だった携帯電話は、iモードなど通信キャリア毎に統制されたメニューによる情報流通が中心でした。スマホの登場によって、その統制が解き放たれ、ホーム画面のアプリを一人一人がカスタマイズし、世界中のリッチな情報へ、いつでもどこでもアクセスできるようになリました。

 今回、東急百貨店が取り組む構造改革は、iモードのようにフォーマット化してきたビジネスから離れ、スマホのように専門店をアプリとして、オープンに消費者とつなげていく動きにも見えます。D2C(Direct to Consumer)というビジネスでブランドが直接顧客に寄り添い世界観を共有する時代に、遅すぎる改革かもしれませんが新しい一歩を踏み出したところに、東急百貨店の危機感が伝わってきます。

 今回の「WWDジャパン」紙面で、隣にある記事は「ロンハーマン日本上陸10周年 サザビーリーグが本国事業を継承したワケ」です。「WWD」の記者の方には、ぜひこのタイミングで、元伊勢丹バイヤーのサザビーリーグ リトルリーグ カンパニープレジデント 三根弘毅氏に「今、百貨店の三越伊勢丹に戻ったら何をしますか?」と突っ込んだインタビューをして欲しかったです。

 そこに今後の百貨店が手を打つべき、ヒントが隠されているかもしれないからです。

CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中