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伊藤忠がアパレルのD2Cブランドを立ち上げたワケ

 伊藤忠商事はこのほど、新ブランド「ジャメヴ(JAMAIS VU)」をスタートする。ブランドコンセプトはモデルでインフルエンサーのクリスウェブ佳子が作り、ファーストシーズンのメインビジュアルにはベッキーを起用した。“サイズレス・シーズンレス・エイジレス”を掲げ、ネット通販を中心にしたD2C(Direct to Consumer、顧客直結型)ブランドになる。運営は大手アパレルや小売り企業へのOEM(相手先ブランド生産)・ODM(相手先ブランドの企画生産)を手掛ける同社のファッションアパレル部門が行う。8月15日にティザーサイトを開設し、9月9日から販売を開始する。東京都内でインフルエンサーや関係者を招いた展示会を行った。かつてはご法度だったリテールビジネスに、商社自らが乗り出す。その狙いは何か?担当者を現地で直撃した。

 「ジャメヴ」を立ち上げた伊藤忠ファッションアパレル部門の長谷川徹氏は「最大の狙いは、主力事業であるOEM・ODMの“次世代化”。以前だったら直接消費者と接点を持つためには、自ら商品を企画し、在庫を抱えた上でリアル店舗を構える必要があり、多額の資金が必要だった。資金の回収のためにはビジネスを大きくする必要があり、取引先との競合だって覚悟する必要があった。D2Cなら資金的なハードルは低く、素材の調達から商品開発、プロモーションとマーケティング、販売まで一気通貫でできるため、ノウハウの吸収にはもってこい。当然のことながらリテールに参入なんていう気持ちはさらさらなく、主力の取引先とバッティングして迷惑をかけるなんて本末転倒だと考えている」と語る。

 伊藤忠は既存事業の“次世代化”を中長期的な経営戦略として掲げており、総合商社から繊維商社までがこぞって参入し競争が激化しているOEM・ODMのアップデートは、重要な課題の一つだった。「OEM・ODMといっても単に商品を供給するだけのビジネスは変わりつつある。原料までさかのぼって調達したり、経営支援を行ったりと、事業全体のパートナーになることだって増えてきた。取引先である大手アパレルやセレクトショップ自体が、ネット通販を成長分野として強化している上、当社自身もネット専業のアパレルや小売業者の取引先も増えつつあり、ネット通販のノウハウの構築は待ったなしの状況でもある」と長谷川氏。

 とはいえ、ゼロからの立ち上げは単独では難しい。同ブランドはECとマーケティング面ではEC事業支援のロゾパンサン(ROSEAU PENSANT)を、商品開発ではトゥモローランド(TOMMOROWLAND)のウイメンズMD出身の五味田渉氏をパートナーに迎えている。

 シーズンレスを掲げた同ブランドのファーストコレクションについて、長谷川氏はシーズンではなく“エディション”という言葉を使って説明する。「40SKUのファーストエディションの大半は秋冬ということもあり、伊藤忠が直接買い付けている上質なメリノウールである“メリノオプティモ(MERINO OPTIMO)と上質ラムウール“ハミルトンラムズウール(HAMILTON LAMBS WOOL)”を使用している。“メードバイ伊藤忠”で、もの作りに徹底的にこだわった」。価格帯はセーターが1万円台前半〜2万円台後半、ボトムス(スカート・パンツ)が1万7000〜2万3000円、ジャケットが4万円〜、コートが4万8000円と決して安くはないものの、「原価率はかなり高い。D2Cというビジネスを生かし、できるだけクオリティーを高めた。そうしたこだわりをきちんと伝えるためにも、サイトでは素材の丁寧な説明を筆頭に、着こなしの動画などできるだけリッチコンテンツ化することで、サイト接客につなげている」という。