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ワンオーがD2Cブランド「イコーランド」立ち上げ ラグジュアリーブランドの残糸を使用

 PR事業などを手掛けるワンオー(松井智則社長)は、D2Cモデルのファッションブランド「イコーランド(EQUALAND)」を立ち上げ、8月9日から自社ECサイトで販売する。テーマとして掲げるのは“ファッションの信用”。ラグジュアリーブランドやスポーツブランドの残糸・残反(工場などに使われずに残っていた糸や生地)を使い、上質な商品を買いやすい価格で提供する。ただし、純粋にファッションブランドとして打ち出すというよりも、「コミュニティーを作り出して、その全体が潤っていくようなビジネスがしたい。われわれがD2C生産のプラットフォームを築き、それを若いデザイナーに開放するなどして社会に還元していきたい」(松井社長)と話す。ブランド開発はその最初の一歩だ。松井社長と、同ブランドのディレクターも務める古瀬伸一郎ワンオー取締役に聞いた。

WWD:クライアントからの依頼でPR業務やイベント制作をしたり、商業施設のコンサルティングをしたりというのが、現状のワンオーの主な事業だ。なぜ自分たちでブランドを立ち上げることにしたのか?

松井智則社長(以下、松井):プロジェクトが始まったのは約2年前。ワンオーがアッシュ・ペー・フランスから独立して半年経ったころです。僕らに出資してくれているベンチャーキャピタルのウィルとも、(クライアントから仕事を請けるだけでなく)これまで蓄積してきたノウハウを生かして、自分たちとして発信するようなことができればいいねと話していました。何をするか考えていた時にまず作ったのが小説です(笑)。「イコーランド」は、イコール(平等)とランド(島)を掛け合わせた造語なんですが、“平等な島”みたいな、価値あるものを適正な価格でちゃんと買えるコミュニティーを描いた小説。そういうコミュニティーを作っていくためのプロジェクトの中の1つとして、最初にブランドを作ることにしました。

古瀬伸一郎ディレクター(以下、古瀬):「イコーランド」が商品をお客さんに届けることで、生産工場が元気になって、将来的には若いデザイナーがそれらの工場を束ねたD2C生産のプラットフォームが使えるような形になればと思っています。プラットフォームを整えていくためには、まずは自分たちでブランドを作るのが分かりやすい。それで「イコーランド」を立ち上げることにしました。

WWD:コンセプトとして“ファッションの信用”という大きな言葉を掲げている。その意図は?

松井:サステイナブルとか、エシカルといったことを声高に打ち出すつもりはありません。いいものを作って、適正な価格で売るという意識だけ。地方の工場には、ビッグメゾンなどが使わずに余ってしまった糸や生地がたくさんあって、それを使っていきます。第1弾商品のTシャツは、和歌山のカットソー工場に余っていた、某ラグジュアリーブランドが使うはずだったオーガニック綿の糸で作りました。細番手の糸なので本来は薄くて繊細な生地になるものでしたが、僕らはあえて細い糸を2本より合わせて地厚な生地にしています。肌触りは繊細なのに、丈夫だし透けないというのがポイント。価格は6800円、草木染めだと8800円です。今後、スエットやムートンなども販売予定です。

古瀬:タグには、商品を作るのに関わった、綿花の栽培者や縫製工場、染色工場のスタッフの名前を入れています。最近は、やましい部分がないという意味で使用工場を公開する企業も増えてはいますが、そういう考えと僕らはちょっと違う。「やましい部分がない」ではなくて、もっとポジティブに、誇りを持って作っている人たちだから紹介する、という意識。映画のスタッフロールみたいな感覚です。

WWD:「エバーレーン(EVERLANE)」など、原価率まで消費者に明らかにしていくブランドも増えており、支持されている。

古瀬:「イコーランド」は基本的に卸販売はせず、自社ECのみで販売します。それは、卸では利益が出ないような原価率設定をしているから。具体的に原価率を明かしてもいいけど、その1点だけを声高に叫ぶようなことはしても意味がないと思います。あらゆる面で、(生産者と消費者双方にとって持続可能なビジネスのあり方を)自然に行っていきたい。

WWD:「将来的にはコミュニティーを作っていきたい」というが、具体的にどんな形を考えている?

松井;ブランドに共感してくれる賛同者を増やすことを考えています。特に異業種の賛同者を増やしたい。自動車のディーラーやラーメン屋さんがコミュニティーのメンバーになって、その制服を「イコーランド」が作ってもいいし、最近イベントに注力している通信機器メーカーと組んで「イコーランド」が一緒にイベントを作るという形でもいい。最初の小説に書いたように、「イコーランド」の住民が増えて、そこでエコシステムが生まれていくようなイメージです。

古瀬:パリのセレクトショップ「メルシー(MERCI)」も賛同者になってくれました。基本的に卸販売はしませんが、ブランド立ち上げに合わせて、「メルシー」では8月27日~9月21日にポップアップイベントを行います。これまでワンオーとして手掛けてきたショールーム事業で、同店とネットワークを築いてきたからこそ実現しました。他に、草木染めの原料となる果物などの搾りかすを提供してくれている、コールドプレスジュース専門店「サンシャインジュース(SUNSHINE JUICE)」も賛同してくれています。