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「環境問題はビジネスで解決するしかない」 ヒット商品「米ぬか洗顔」の開発秘話

 ナチュラルコスメ「みんなでみらいを(MINNADE MIRAIO)」を手掛けるフロムファーイーストの阪口竜也代表は、気候変動などの環境や発展途上国の貧困といった社会問題をビジネスで解決することに挑戦している。「使えば使うほど健康にも環境にもいい」という「米ぬか酵素洗顔クレンジング」は、月2万本を売るヒット商品になり、一方で、カンボジアの荒地に植林して貧困をなくすプロジェクト「森の叡智プロジェクト」を立ち上げるなど、さまざまなビジネスを行う。彼はなぜ、サステイナブルなビジネスに取り組むことになったのか。

WWD:サステイナブルなビジネスを行おうと思ったきっかけは?

阪口竜也フロムファーイースト代表(以下、阪口):人生の時間はあと50年くらいかなと思っていたのが、14年前に子どもが産まれて、病院で子どもの顔を見た瞬間に、100年先を意識した。子どもの人生は自分の人生と重なっていくでしょう?それまでは正直、環境なんて興味がなかった。でもこのままだと100年先の地球に100%住めないと漠然と感じた。

WWD:そこからリサーチが始まった。

阪口:リサーチしている中でも一番衝撃を受けたのは1992年にブラジル・リオデジャネイロで行われた環境サミットで、当時12歳だったセヴァン・カリス・スズキ(Severn Cullis-Suzuki、“世界を5分間沈黙させた少女”としても知られる)が行ったスピーチ。“伝説のスピーチ”で検索すると出てきますよ。そこから人々の意識が環境に向き、エコやサステイナブルと言われるようになった。

僕がこのスピーチを見つけたのはそれから10年以上経ってからだけど、地球の環境は10年前より悪化していた。それで分かったのは、みんな言うだけで何もしないということ。環境をよくしようという事業は成り立たないと気づいた。これまでは経済発展すればするほど環境が悪化していったわけだけど、それを逆にできないかと考え始めた。つまり、モノを作れば作るほど環境が良くなり、使えば使うほど健康になる。廃棄することで環境がよくなって、事業が成功すればするほど環境がよくなるシステム――これが僕のビジネスの根幹にある。

WWD:そこからどうやって「米ぬか酵素洗顔クレンジング」が生まれた?

阪口:「米ぬか酵素洗顔クレンジング」は米のぬかと小麦ふすま(小麦の表皮の部分)しか入っていない。添加物も洗浄成分も入ってないけれど、不思議と泡立つし、ダブル洗顔はいらない。ウォータープルーフのマスカラなども落ちる。

なぜ汚れが落ちるかというと、米ぬかにはもともと米ぬか乳酸菌というものが含まれていて、その量を意図的に増やすことで、微生物の分解によって汚れが落ちるという仕組み。その排水で配管の中の汚れも分解してキレイにすることができるし、最後に川に流れて環境回復していく。こうした循環を生活消費財で作れば、生活するだけで環境がよくなる。

人間が地球を汚したわけだけど、これをもう一回キレイにしようと思うと、人間の力なんて大したことがないと感じる。なぜなら、自然界にはもともと浄化システムがあって、勝手にキレイになっていくから。その仕組みをうまく活用したいというのもビジネスの基礎にあり、その一つが米ぬかシリーズ。ほかにも過疎化が進む与論島との取り組みで、与論の海水からとれるミネラルが豊富なにがりを生かした化粧品を作っている。

WWD:化粧品の知識がない中でどのように開発し生産にこぎ着けたのか。

阪口:10年くらい奔走する中で、消費材でビジネスをしようと決めて、そこから自分でいろんなものを試すようになり、そういった製品の後ろにカタカナで書かれている物質を見るようになった。今ならインターネットで調べれば分かる。僕は化学を学んだわけじゃないけど、インターネットで調べた知識を蓄積して、それをベースにこういうものを作りたいといろんな人に話をする中で賛同者や協力者が出てきて、生産してくれるパートナー企業を紹介してもらったこともある――こうしてどんどんつながって商品ができた。

WWD:販売先にはどうアプローチした?

阪口:ナチュラル系の商品って百貨店でブランディングしてちょっと高い価格で売ることも考えられるけど、僕はそうはしたくなかった。コンセプトは“みんなでみらいを”。“誰もがいつでも買える場所”であることが重要だった。だからイオンから「取り扱いたい」とオファーがあったときはうれしかった。今の販路は、チェーンストアではユニー、バラエティーショップではロフトや東急ハンズ、そのほか、ドラッグストアや雑貨店、自然食品店や田舎の生果店みたいなところまで、僕たちのコンセプトに共感してくれたところで取り扱ってもらっている。

環境保全しながら経済発展する仕組みづくりを発展途上国で行う

WWD:カンボジアで「森の叡智プロジェクト」を行っている。

阪口:環境問題って、地域を限定して行っても解決しない。海も空気もつながっているから。そうして、僕の会社みたいな小さいところが大きなインパクトを与えたいと考えると、発展途上国だった。環境破壊を引き起こしたのは、アメリカ、ヨーロッパ、日本のようないわゆる先進国で、経済発展の代わりに環境を破壊してきた。

これからの問題は先進国よりも途上国にある。彼らがこれから発展して先進国と同じような経済力を持って消費活動を行うと、はっきり言って地球はアウトだから。でもそうした国の人々に発展するなとは言えない。先進国に生まれた僕は、そうじゃない発展――経済発展と環境破壊が比例するような発展とは異なる――方法を一緒につくる責任がある。つまり発展途上国で環境保全しながら経済発展できる仕組みをつくろうと思った。

WWD:カンボジアだった理由は?

阪口:カンボジアは東南アジアの中で最も森林の減少率が高い国。もともとはジャングルや森だったところが違法伐採されている。1日1ドルを稼げない人が、違法伐採した木が20ドルで売れるなら切ってしまうよね。

現地の人々と、伐採ではなくて収穫したものがお金に変わる森をつくろうと思った。木を育てて森を守りながら何かを収穫できる仕組みをつくりたいと考えた。そうは言ってもプランテーションにするつもりもないし、化粧品生産などで需要がある植物の種を持ち込んで植えるわけにもいかない。だから、現地に自生している植物の中で、何が使えるかという調査から始めた。例えばバナナ。バナナの茎は燃やして灰にして水に溶かして、その水を加熱するとカリウムができる。石臼で砕いた貝殻を燃やして消石灰にして、カリウムと混ぜると水酸化カリウムとなる。ヤシの木になっているココナッツを取って実をくり抜いて煮て2日間寝かすと、勝手に発酵してココナッツオイルができる。ココナッツオイルと水酸化カリウムと雨水を混ぜるとシャンプーができる。

こうした実験を繰り返し、植える植物を考える。雑草も生えてくるんだけど、それも抜かずに何かに使えないか考える。カンボジアは伝統医療がまだ盛んで、村の人々は切り傷の止血のために生えている草を取ってすりつぶして塗る。頭が痛くなったら生えているハーブを引っこ抜いて煎じて飲む。いわゆる薬草を生活の中に取り込んでいて、ハーブは生命力が強いしどんどん生えてくる。雑草すらお金に替わるということも伝えている。

WWD:どのくらいの広さの森を育てているのか?

阪口:現在、未整備の土地も含めると約13万8600平方メートル。でもそれを132万平方メートルまで広げたい。栽培している植物も自分のところだけでは使いきれなくなるだろうから、いろんな企業と組んでいきたい。

ある日、価値を逆転できることにはっと気づいた。例えば、僕が買ったカンボジアの土地はもともと荒地だったから値段も安い。そこに種から植えたら原料費はほぼかからない。村の人からも収穫したものを買うけれど、その金額は知れている。例えば、何かのオイルを買おうとすると、アフリカで作られたオイルは現地でそれを作る人がいて、現地の輸出業者がいる。日本には輸入業者がいてオイル問屋がある。そこから買うとしたらどれだけ値段が高くなるの?という話。カンボジアの田舎で土壌保全しながら無農薬・無肥料の自然栽培で育ったものは、そもそも土地が高い東京のど真ん中でオーガニックで育った植物よりも価値があるし、コストも低い。これが僕の言う価値の逆転。ビジネスだからもうからないと意味がない。そういった意味でこのプロジェクトも僕にとって挑戦すべきビジネスで、この仕組みは実は日本でもあてはまると気づいた。過疎化が進む鹿児島の与論島や、鳥取県とも取り組んでいる。

WWD:石川県羽咋市とも取り組んでいる。

阪口:米ぬかシリーズで美容オイルを作ろうと考えたときに、無農薬の米ぬかで作りたいと考えた。日本で米油っていろんな用途に使われているのに、無農薬の米油すら存在しない。米ぬか洗顔クレンジングは、微生物が入っているから残留農薬はゼロだけど、オイルに圧搾する過程で残薬は必ず出る。石川県羽咋市は日本で唯一農協が自然栽培を推進しているところで、ある程度の量をまとめて購入できる。自然栽培の聖地である羽咋市との事例をつくることができたら、今後いろんな人が新しい事業を起こすきっかけになるかもしれない。

WWD:少しずつだが、環境に対する人々の意識も変わってきていると感じる。

阪口:例えば、日本で何年か前に(世界で一番貧しい大統領として)ムヒカ大統領フィーバーが起きたでしょ?彼の言うことは変わらないのに、突然フィーバーが起こった。ということはみんなの意識が変わっているということ。世の中はものすごいスピードで変化していて、これからサステイナブルな方向に変わっていくと感じた。

僕が行うのはあくまで商売。だからマーケットがないと成立しない。でもこの変化から、今はまだマーケットが小さいけれどこれから大きくなると思った。みんなの中にこのままじゃヤバイという意識があって、その度合いは人それぞれだけど――「明日で地球が終わりです」と言われたら、みんな家族と過ごすし、あと10年と言われたら子どもは作らないでしょ?誰もそんなことを考えないということは、ずっとこの環境があるという前提でしか生きていないということ。

WWD:特にSDGsという共通言語ができたことで、より具体的になった。

阪口:国連が旗を振ってくれて加速している。企業も含めさまざまな団体から講演依頼があり、そこで伝えているのは、サステイナビリティーを追求した方がもうかるということ。僕の会社は5人しかいないけど、僕に協力してくれる人は本当にたくさんいる。例えば、化学成分を配合した化粧品を格好よくてオシャレに売っても、こんなに協力してもらえないと思う。サステイナビリティーに取り組んだら売り上げ増や利益とは逆になる、と思われているけど、違う。売り上げを伸ばしたいのであれば、社会貢献できることをする――今はそんな時代になっている。