ファッション

グレース・ケリーに捧げた“グレース”バッグも アメリカ老舗のバッグブランドがリブランディング

 「マーク クロス(MARK CROSS)」は1845年に創業したアメリカで老舗のバッグブランドだ。元女優でモナコ公妃として知られる故グレース・ケリー(Grace Kelly)にオマージュを捧げたバッグといえば、「エルメス(HERMES)」の“ケリー(Kelly)”が有名だが、「マーク クロス」にも1954年の映画「裏窓(Rear Window)」に出演するケリーのためにデザインした“グレース(GRACE)”があり、今もアイコンバッグとしてブランドの看板商品で、現在レディー・ガガ(Lady Gaga)をはじめとするセレブリティーにも愛用されている。

 現在、「マーク クロス」はリブランディングを進めており、今年から「シャネル(CHANEL)」や「エルメス」「カルティエ(CARTIER)」「セリーヌ(CELINE)」などで経験があるデザイナーのペギー・ウィンキン(Peggy Huyn Kinh)をクリエイティブ・ディレクター・コンサルタントとして迎えた。2020年春夏シーズンには新たなコンセプトを取り入れたコレクションを発表する。

 日本では2018年春夏からブルーベル・ジャパンが「マーク クロス」の独占輸入販売権を取得し、本国と共にビジネスプランを立てている。来日したウルリック・ガールデ・デュエ(Ulrik Garde Due)マーク クロスCEOにリブランディングやバッグ市場の傾向について聞いた。

WWD:ブランドの魅力は?

ウルリック・ガールデ・デュエ=マーク クロスCEO(以下、デュエ):1つ目はアメリカで最古のラグジュアリーのアクセサリーブランドであり、美しい歴史を持つこと。1845年の創業は、「エルメス」(1837年創業)の8年後、「ルイ・ヴィトン」(1854年創業)より10年前のことだ。1920~30年代はブランドの歴史の中で重要な時代で、経営者のジェラルド・マーフィー(Gerald Murphy)と妻のサラ(Sarah)はアメリカ人として初めて南仏・コートダジュールに移住した夫妻で、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)やアーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)、フランシス・スコット・キー・フィッツジェラルド(Francis Scott Key Fitzgerald)といった一流のアーティストや文化人たちと交流していた。そうした人たちとのコネクションがブランドの歴史にも刻まれている。2つ目は、グレース・ケリーとの関係だ。54年に映画監督のアルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)から映画「裏窓」に主演するグレース・ケリーのためのバッグを作ってほしいと依頼され、“グレース”シリーズやボックスバッグが誕生した。

WWD:現在の顧客層とターゲットは?

デュエ:ラグジュアリーブランドにおけるターゲット層に年齢は関係なく、お客さまのライフスタイルによって区切られていると感じる。「マーク クロス」の顧客は、クラフツマンシップや品質の高さを重視し、タイムレスなスタイルや、美しく洗練されたものを好んでいる。特に重要なのが、オーセンティック(本物)であるということ。お客さまは製品がどこで生産されたのかということ、そしてブランドの世界観などを知りたいと思っている。「マーク クロス」の全商品がイタリア製で、卓越した職人技によって生み出されていることと、ブランドのストーリーや歴史を、現代のお客さまに合わせた方法で伝えなくてはならない。

WWD:リブランディングの計画を教えてほしい。

デュエ:社内にデザインチームがあるが、1月からクリエイティブ・ディレクター・コンサルタントとして、べギー・ウィンキンを起用している。代表的な“グレース”バッグもモダンなデザインで発表していく。また、ユニセックスのトラベル・コレクションも発表する予定だが、これは今後ブランドの重要な商品になっていくと思う。また、「マーク クロス」は紳士向けのカバンからスタートしたブランドなので、あらためてメンズバッグにも力を入れていきたい。

WWD:メンズバッグの強化策は?

デュエ:まだ2シーズン前にメンズを復活させたばかり。現状のビジネスは全体の10%も満たないが、この5年間で約40%に成長させたいと考えている。このリブランディングで現代の若い男性に向けた商品も拡充する。今のビジネスパーソンは、皆がオフィスで働いているわけではなく、ノマドワーカー(働く場所を自由に選べる人)もいる。それは10年前とは全く異なっていて、機能性が求められている。例えば、ジム用のスポーツウエアからデジタル機器までが全て収まるバッグが必要だ。

WWD:今後の出店計画は?

デュエ:9月にはニューヨーク・マディソン街に初の路面旗艦店を開く予定だ。バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)の向かいでとてもいいロケーション。内装は、バッグの裏地として使用している赤に加えて、緑をキーカラーにする。今後3〜5年間で、アメリカ、ヨーロッパ、アジアと新コンセプトを取り入れた店舗を出店していく。またポップアップストアも計画中だ。1920〜30年代にマーフィー一族がアート界と深いつながりがあったように、2020年らしい表現で「マーク クロス」とアートを融合させていく。実験的で面白い方法でお客さまにブランドの世界観を伝えてたい。9月にはアーティストコラボレーションの“アーティスト・イン・レジデンス”をスタートさせ、世界中のアーティストに協力していく。もちろん、日本のアーティストにも参加してもらいたいと考えている。

WWD:世界的にキャッシュレス化が進み、財布も小型化し、スモールバッグが売れていると聞くが、「マーク クロス」もそのような傾向はあるか?

デュエ:バッグの需要は両極化していると思う。スマートフォンと口紅がちょうど入るぐらいの小さなバッグか、パソコンやタブレットを入れられるワーキングバッグを求めている人が多くいる。それゆえ、その間の中途半端なサイズでは好まれない。20年春夏の最新コレクションでは、その両方のニーズに応えた新たな“グレース”シリーズとトラベルコレクションが登場するので、楽しみにしていてほしい。

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