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5年で売上高30億円超え 「バルミューダ」が韓国市場でヒットした理由

 「バルミューダ(BALMUDA)」が12日、空気清浄機“エア エンジン(Air Engine)”の後継機種となる新作“バルミューダ ザ・ピュア(BALMUDA The Pure)”の発表会を、同社初となる韓国で開催した。“バルミューダ ザ・ピュア”の価格は5万2000円。日本では12日に予約の受け付けを開始し、3月14日に発売を予定する。韓国では先立って13日に販売を開始した。

 寺尾玄・社長は冒頭、韓国のプレスを前に「日本において、あれほど輝いていた家電事業が特にここ10年で減衰に向かっている。理由は簡単で、誰もがあらゆる家電を持っているため。持っている人に持っているものを売ることは難しい。また、どんな技術も、多くの人に必要とされるほど、安くなり、利益を生むことが難しくなる。だから、われわれは家電ではなく、体験を売っている」と説明。つづけて、新製品について、「家の中でもっとも重要なものは家電ではなく、わたしたち人間自身。自分たちが心地いいと思う空間こそいい空間だ。あらゆるものを置いていくと部屋のバランスは崩れていく。だからこそシンプルなデザインに徹した」と語った。

 実は「バルミューダ」の売上高のうち30%を韓国市場が占めている。2018年度には売上高が100億円を超えたといい、すでに韓国では年間30億円以上の売り上げがある計算だ。同社は12年に伊奈博彦ビジネスオペレーション部海外セールスチームリーダー指揮のもと、初の海外展開として韓国での正規販売を開始。リモテックコリア社(以下、リモテック)という正規代理店と組んでサーキュレーターや扇風機を販売するも、最初は思うように売り上げが伸びなかった。転機となったのは13年12月に韓国展開を開始した空気清浄機“エア エンジン”の爆発的な人気。同年9月頃からメディアを騒がせたPM2.5問題がきっかけとなり、現在では韓国への出荷台数が日本の10倍という人気商品となった。

 そもそも、パンギョ(板橋)にある韓国大手百貨店のヒュンダイ(現代)百貨店を見学して驚いたのは、「バルミューダ」に限らず、空気清浄機の圧倒的な品ぞろえだ。実際に店頭でもPM2.5の対策のための詳細な問い合わせが絶えないそうで、一家に何台もの空気清浄機を設置したり、一台数十万円もする据え置き型の巨大空気清浄機を買う家族も多い。とくに性能のいい空気清浄機には高価なものも多く、「バルミューダ」はデザイン性にも優れながら手頃な価格帯だったことが人気を博した理由だろう。

 韓国ではリモテックが主軸となってブランディングを意識した販売戦略を立てる形でローカライズを図っており、直営店は百貨店をメインに12店舗。その他数カ所のディーラーへの卸も行っている。とくに面白いのはその売り上げの7割がネット通販経由だということで、EC文化が浸透している韓国では、ECサイトとロッテグループによる「Yura Choi Show」というテレビショッピングが重要な販路となっているという。テレビ通販では1回あたり5000台が売れるほどだ。また、認知度を上げた大きな理由の一つがチェ・ムンギュ(Choi MoonKyu)というキー・オピニオン・リーダー(KOL)を起用したためだというのも、いかにも韓国らしい。

 その後、韓国のカフェ・コーヒーブームとも相まって15年に発売した“バルミューダ ザ・トースター”も大ヒット。現地ではすでに空気清浄機に次ぐ人気商品になっており、伊奈チームリーダーは、「韓国では新居のためのまとめ買いも多い。『アップル(APPLE)』のようなミニマルなデザインを好む感度の高い層に対してシンプルなデザインが奏功した」と分析する。発表会後の個別取材でも寺尾社長は「韓国ではとてもいいブランディングができている。韓国での好調の背景には、形の美しさに強い関心を持つ彼らの嗜好性も大きく寄与している」と強調した。

 「バルミューダ」が韓国で成功した大きな要因は、結果的にPM2.5という社会問題に沿う形で商品が投入されたこと、その上で現地企業と組んでブランディングと販路、販売方法についての現地化に成功したことだろう。寺尾社長は発表会で「空気清浄機は韓国において必需品となっている。だからこそ先に韓国で発表・発売をした。韓国での販売に関してはリモテックを信頼している」と自信を見せる。

 現在、同社はグローバルにおけるさらなる市場開拓に向けて事業拡大の途にある。すでに韓国以外でも台湾や中国の他、ドイツなど一部ヨーロッパで販売をしており、将来的には海外売り上げの比率を6〜7割へ引き上げたいと寺尾社長は意気込む。事実、韓国では18年12月にはじめて家電量販店「ハイマート」へ2店舗を出店、店舗数を絞りながらもマス層獲得へ動き始めた。ただ、量販店では店頭独自のポイントサービスや値引きもあって、今後はいかにブランディングを維持しながら、売り上げを拡大できるかが一つの課題となりそうだ。

 寺尾社長は最後に、「わたしたちがやっていることはブランド事業でもある。自分が昔ミュージシャンであったこともあるが、ある種のショービジネス。だから、曲を安売りするつもりはない。商品こそがブランド価値を上げる唯一の手段で、つまり、いい曲を作ることで、ファンは次に期待をしてくれる。ブランディングとは信頼だ。どんな行動で、信頼を得られるか。これこそがわれわれが考えるべきことだろう」と意欲を見せた。

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