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伊藤忠・繊維トップが語るデサントへのTOBの理由 「上場廃止案は断じて受け入れられない」

 伊藤忠商事が31日に発表したデサントへのTOB(株式公開買い付け)は、両社の対立が抜き差しならない状況まで深まり、伊藤忠が実力行使に出た格好だ。伊藤忠は約200億円を投じてデサント株の持ち分を現在の約30%から約40%に引き上げ、デサント経営陣の刷新を提案する。もしTOB後にも両社の話がまとまらなければ、決着は6月の株主総会に持ち越され、さらに長期化の様相になる。

 31日朝に発表された伊藤忠のTOBのリリースに対し、デサントは14時に「当社取締役会に対して何らの連絡もなく、また事前協議の機会もないまま、一方的に行われたものだ」とのコメントを発表した。

 昨年夏以降、経営を巡る対立が表面化した両社だが、今回のTOBに関して「(決定的となった)きっかけは年末にデサント側から提示されたMBO(経営陣による買収)案だった」と伊藤忠の繊維カンパニープレジデントの小関秀一・専務執行役員は説明する。デサントの石本雅敏・社長から出された案は投資ファンドと組んだMBOによる株式非公開化だった。デサントにしてみれば株式の非公開化で経営の自由度が高まるメリットがある。だが、MBOには膨大な資金が必要になる。実質的に無借金経営を続けてきたデサントの財務基盤が揺らぎかねない。けさ発表のリリースで伊藤忠は「本件非公開化は現経営陣の保身を優先し、対象者の(デサントの)社員の皆さまを軽視する可能性があるスキームだと考える」と厳しく批判している。

 小関専務もMBO案については語気を強める。「最初に聞いたときは愕然とした。無借金会社が借金漬けの会社になってしまう。デサント側は『初期的検討であって決定事項ではない』と言っているが、初期的検討でも断じて受け入れられるわけがない。現経営陣とは目指す方向が全く違う。早急にわれわれの影響力を行使できるようにしなければと考えた」。TOBの方針を固め、実行後のデサントの経営体制案と経営改善案をまとめるに至った。

 経営体制案では現状10人の取締役を6人程度に減らす。構成はデサント2人、伊藤忠2人(うち常勤1人)、どちらにも属さない社外取締役2人とし、意思決定の迅速化を図りつつ、ガバナンス(企業統治)が利くバランス良い体制にする。

 経営改善案での最大の焦点は、韓国市場に過度に依存した収益体制を改めることだ。そもそも両社の対立は、純利益のほとんどを急成長した韓国市場が占める危うさに対し、伊藤忠が注文をつけたことが発端になっている。「一本足打法は危険だと再三申し上げたが、全く受け入れらない」。伊藤忠が利益に貢献できてないと問題視する日本市場を立て直し、さらに進捗が遅すぎると批判する中国市場の強化を打ち出す。

 デサントを完全に伊藤忠のコントロール下に置くのなら、株式の51%を取得して過半数を握るやり方もあるが、小関専務はデサントの強さを生かすために適切ではないと言う。「デサントの強みは、水沢ダウンなどに代表されるクリエイションやモノ作り。(過半数を取ることで)その独自性が薄れるのは、競争力の低下に繋がる」と40%に留める理由を話す。