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ワコールHDとデサント 数百億円規模のシナジーを目指す

 インナーウエアとスポーツウエアそれぞれの業界をけん引してきたワコールホールディングス(HD)とデサントが包括的業務提携を発表し、30日夕方から両トップによる記者会見を京都で開いた。

 提携に至った経緯についてワコールHDの安原弘展・社長は「関西発祥のアパレルなので長年交流はあったが、5年ほど前から互いの業界について話をするうちに、両社の強みを生かした新たなビジネスの可能性を考えるようになった。モノ作りを大切にする企業文化がある両社は親和性が高く、提携することで新しい価値が創造できると確信した」と語った。デサントの石本雅敏・社長も「それぞれ強みが異なるので、レディスインナーに強いワコールとスポーツに強いデサントが協業すれば、もっと市場拡大でき、多くのメリットが生まれると思う」と期待の大きさをのぞかせた。

 業務提携の内容は、3つの基本方針による施策が紹介された。今後、案件ごとに検討委員会が開き、具体化に向けて動く。基本方針の1つめは「事業領域の垣根を超えた新規事業の創出」で、アスレジャーに代表されるアクティブライフスタイルをテーマとした女性向けの新コンセプトブランドを立ち上げる。ワコールHDが持つ人間工学に基づく快適設計や高い縫製技術、デサントが持つスポーツ工学に基づいた運動機能性、両社の持つクラフトマンシップと日本企業ならではのブランド力を生かし、世界に発信する。安原社長によると「世の中の女性があっと驚くような商品」で、スピート感をもって開発するという。

 2つめは「両社の強みであるモノ作りの力を掛け合わせた商材の開発」。ワコールHDは人間科学研究所、デサントは7月に完成したDISC(デサントイノベーションスタジオコンプレックス)を有し、それぞれ人間工学とスポーツ工学に基づいた研究により高い基礎開発力を誇る。また、立体裁断、縫製、接着技術でも両社は業界トップクラス。これまで蓄積してきたデータとノウハウに商品企画力と製造段階での強みを生かし、新たな商材開発に力を注ぐ。

 具体的には、ランニング愛好者を中心に展開してきたコンプレッションウェアの協業に取り組む。両社のノウハウと特徴を組み合わせ、競技別に特化した商品や機能性を拡大した商品を展開する。国内はもちろん欧米やアジア市場の拡大も視野に入れる。コンプレッションウエアについては、ワコールは「CW-X」を手掛けているが、「売り場を確保できないなどの理由でこの数年苦戦している」。デサントの「スキンズ(SKINS)」とは「コアの機能が異なることから、売り場展開で補完しあえる」(石本社長)としている。

 3つめは「両社が保有するアセットの有効活用」。保有するブランドの価値や顧客、人材、国内の事業拠点、販売網、製造拠点、物流などの経営インフラを有効活用し、既存ビジネスの相乗効果と相互補完を図る。中でも海外での相互補完を重視。海外売上高のうち欧米が6割を占めるワコールHDに対し、デサントは95%がアジア・オセアニア地区。それぞれの得意なエリアで販路の相互乗り入れを行うことで、グローバル展開を加速する。さらに、国内外の自社ECサイトの相互リンクと送客、ジュニアカテゴリーでの協業などにも取り組む。

 提携によるシナジー効果については具体的な数字は公表しなかったが、将来的に数百億円の創出を目指す。「それぞれが得意とするエリアでの協業をテコに、両社のグローバル展開をさらに推進させ、あらゆる経営インフラを相互活用してシナジー効果を極大化させたい」と石本社長は語った。

 既存流通チャネルの伸び悩みやデジタル化の加速、消費者の購買行動の変化など両社を取り巻く経営環境は大きく変わりつつある。そんな中、ワコールHDは新規事業や他社協業を通した事業ポートフォリオの拡大に積極的に取り組んでいる。一方のデサントも、スポーツを軸足に事業領域の拡大を戦略として掲げている。今年度は両社にとって中期経営計画の最終年度。新たな3カ年計画を策定するタイミングでの発表となった。

 会見では一部で報じられた資本提携の可能性については否定した。