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山本耀司がレスリー・キーに助言 “本気の写真を撮ってこい” モノクロのフォトアートブックに隠された秘話

 山本耀司がシンガポール出身の写真家、レスリー・キー(Leslie Kee)と一緒に制作した「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」2018-19年秋冬コレクションのフォトアートブックのインスタレーションが10月9日までヨウジヤマモト青山店で開催された。同コレクションは、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)らに代表される絵画のキュビスムと、17年11月に亡くなったファッションデザイナーで山本の友人だったアズディン・アライア(Azzedine Alaia)へオマージュを捧げたもの。写真は山本のディレクションにより、レスリー・キーが10年ぶりにフィルムカメラで撮影したというモノクロ作品で、力強いグレースケールで被写体をとらえている。12枚にセレクトされた写真は、手の込んだプラチナプリントで表現。店頭で展示作品について語り合っていた山本とレスリーの2人に作品の裏話を聞いた。

 山本がレスリー・キーと仕事をし出して8年目。レスリーは今回のフォトアートブックのきっかけについて「18-19年秋冬シーズンのウィメンズコレクションのバックステージは、亡くなったアライアへのリスペクトと愛を感じ、今までで見せていただいた中で一番感動したショーだった。当日ショーの後、耀司さんから真剣な表情で『ミッションを与える』と言われ、とても驚いた。それがこのフォトアートブックのプロジェクトだった」。撮影後には「モノクロ写真の難しさと、美しさに魅了された。この作品から僕の人生をかけたフィルムカメラでのモノクロ写真への挑戦が始まった」と話す。

 仕上がった作品を見ながら安堵の表情を浮かべた山本はレスリーについて「俺が心配になるくらい常に世界中を飛び回っていて、そのレスリーの行動力を尊敬している。昨日までシンガポールにいたかと思えば、今日は東京、次会う時にはパリで、その翌日にはニューヨークにいるという感じ。でも、その行動の早さゆえに彼の作品は、俺からすると写真の深みや痛みが見えないものだった。ショーの後、レスリーと2人きりになって、『こんな写真ばっかり撮ってちゃダメだ』と叱り、このコレクション(18-19年秋冬)のカタログにするから、『フィルムカメラで本気の写真を撮ってこい』と伝えた。レスリーは初めて僕に怒られたから、驚いた表情をしていたが、めげずに撮ってきてくれた。写真の仕上がりを見た時に、怒ってよかったなと思った」と明かした。

 フィルムカメラでの撮影にこだわった理由を山本は「今はなんでもデジタルの時代。インターネットで何でも情報もモノも手に入る。そんな時代でも、洋服や写真は人の手で作られ、触覚まで感じられるもので、これは絶対にデジタルでは表現することはできない。こういう大切なことを表現者たちは守ってやっていかなければならない」と語った。

 同インスタレーションは青山店の会期後、名古屋を巡回。10月27日~11月28日、ヨウジヤマモト名古屋パルコ ミディ店で開催される。