ファッション

開催間近のギャルソン展 キュレーターに与えられた試練とは?

 コスチューム・インスティチュート(COSTUME INSTITUTE)がニューヨークのメトロポリタン美術館(METROPOLITAN MUSEUM OF ART)で5月4日~9月4日に開催する展覧会「Rei Kawakubo/Comme des Garcons Art of the In Between(川久保玲/コム デ ギャルソン 間の技)」が一足早くお披露目された。

 川久保玲はこれまで、未来的で白く、明るい空間にこだわりを持ってきたが、展覧会にもその意向が大いに取り入れられている。製作に1年を費やした同展では、「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」がパリコレデビューした1981年の作品から、2017-18年秋冬コレクション“The Future of Silhouette(シルエットの未来)”まで、140体のルックを展示。しかし、ただ単調にマネキンに着せたルックが並ぶのではなく、川久保の言葉やキュレーターを務めたアンドリュー・ボルトン(Andrew Bolton)による分析、説明が至るところに散りばめられている。

 同展では、川久保の作品にみる“間”の概念を、ファッション/アンチ・ファッション、デザインする/デザインしない、モデル/複数、過去/現在、高い/低い、自己/他人、目的/主体、服/服ではないという、8つのカテゴリーに分けて紹介している。迷路のような巨大展示スペースで最初に目に飛び込んでくるのは、1997年春夏に発表され、体の病気や変形、奇怪を示唆するものとして知られる“Lumps and Bumps”コレクションの球状のカラフルなギンガムチェックのドレスのセットアップ。このほか、1982年秋冬の“穴あきニット”、2015年春夏の“Blood and Roses(薔薇と血)”をテーマにしたドレス、2012年2月の“2 Dimensions(二次元)”をテーマにしたドレスがセレクトされている。

 川久保は、ボルトンに彼女の無意識に対する挑戦を与えたという。彼女はキャリアの早い段階で自身の作品について「意味を持たないことを、意図している」と語っている。それを踏まえ、ボルトンは形式に捉われず自由な展覧会を目指したとし、「『コム デ ギャルソン』について統括するような回顧展にはしたくなかった」と述べた。

 さらに、ボルトンは、川久保がショーを“現代主義者による芸術”と見なしていたことから、ルックを厳選しなくてはいけなかったと振り返る。「彼女は多くのデザイナーや芸術家と同じように、過去を振り返ることを好まない。彼女の全てが新しいもので満ちていて、毎シーズン新しいものを作り続けている。彼女は過去を振り返ることは痛みをともなうことだと話していた。展覧会については『私がよほど反対しない限り、あなたは自分のやりたいことに向かって突き進みなさい』と言ってくれた」と話す。

 同展について、川久保の夫であるエイドリアン・ジョフィ(Adrian Joffe)=コム デ ギャルソン最高経営責任者は、「ボルトンとレイが満足したときに初めて展覧会は素晴らしいものといえる。万人に評価されたとき、展覧会は良いものとはいえない。『コム デ ギャルソン』は、全ての人を満足させたことは一度もない。強調したいことは、全ての人を満足させることは出来ないということ」とコメントを寄せた。

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