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Tohjiやチャーリーxcxとのコラボで注目を集めるメカトック(Mechatok) 「坂本龍一からの影響」と「ポップ・ミュージックの拡張」

ドイツ・ミュンヘン出身の音楽プロデューサー、メカトック(Mechatok)がイギリスの気鋭レーベルである<ヤング(Young)>から昨年9月にリリースしたソロ・デビュー作「Wide Awake」は、シンセ・ポップやトランス、ダブステップ、あるいはクラウド・ラップやヴェイパーウェイヴ、さらにはJ-POPやK-POPの残響がこだまする、ハイパー・コンテンポラリー・ダンス・ポップ・アルバムだ。このように彼はポップ・ミュージックの混沌とした世界に飛び込んでいるが、そこにはそのカオティックなさまを外から観察しているような冷静なまなざしがある。

Tohjiやチャーリーxcx、オーケールー(Oklou)、ヤング・リーン(Yung Lean)、エヴィアン・クライスト(Evian Christ)などとの交流を経て、そんなデビュー作をリリースした彼は今何を考えているのだろうか。「Wide Awake」を携えて来日した彼に、自身の音楽からポップ・ミュージック、坂本龍一、インターネット・カルチャー、ファッションのことまでざっくばらんに語ってもらった。

エレクトロニック・ミュージックとの出会い

——デビュー作「Wide Awake」が発売されて、少し時間が経ちましたけど、今はどういう心境でいますか。

メカトック:もうリリースしてからずっとツアーを回ってて、8カ月の間スーツケースの中で生活しているような状態で(笑)。 時間の感覚が3カ月なのか8カ月なのかさえ自分の中で分からなくなってきてはいるんだけど、未だに新鮮な気持ちで過ごせているよ。

——ちなみにどうしてMechatokというアーティスト名にしたのでしょう。

メカトック:tokは自分の苗字(Tokdemir)の最初の3文字で、Mechaは自分がティーンエイジャーの頃にグラフィティをやっていたときのタグ名なんだ。グラフィティ・シーンって自分の素顔を出しちゃいけないところが少なからずあると思うんだけど、あえて自分のタグにパスポートに載ってる苗字の最初の3文字を合わせて、Mechatokにしたんだ。

——では今まであなたがどういう音楽に触れてきたか少し聞かせてください。幼少期をミュンヘンで過ごしたそうですが、そこで体験したことは、今のあなたの音楽にどうつながっていますか。

メカトック:ミュンヘンではクラシック・ギターのプロになるためにトレーニングをしていて。最初はバッハやスペイン人のコンポーザー、ブラジルのモダンなギタリストなどを結構聴いてたんだけど、12、13歳くらいにエレクトロニック・ミュージックと出会って。

そのときはその時代のエレクトロニック・ミュージックを聴いていて、最初はジャスティスとかのインディー・エレクトロにハマり、そこからもっと深いエクスペリメンタルなものに踏み込むようになった。それで、この「Wide Awake」を作っていたころから今にかけては、ティーンエイジャーの頃の自分のテイストに戻ってきていて。「Wide Awake」を作るまでは結構アンビエントとかエクスペリメンタル系を聴いていたんだけど、今は自分が若かった頃——2010年代のヴァイブスに戻っている感触がある。ギターも積極的に取り入れているしね。

インターネット・カルチャーからの影響

——なるほど。あなたはミュンヘンで生まれ育ち、その後はベルリンやアムステルダム、ロンドンと移り住んでいますよね。いわば動き続ける音楽家だと言うことができると思うのですが、そうやっていろんな都市で生活することは、あなたの音楽にどのような影響を与えていると思いますか。

メカトック:自分はティーンエイジャーの頃からずっとインターネット・カルチャーの中で育ってきたから、気がついたときには、もう全ての世界と触れ合っていたような感じではあったんだよね。だからどの都市に行っても、友達はすでにそこにいて。今までとは違う土地に住むことになってすごくクレイジーな変化が起きたというよりも、すでに知ってる人がいるから落ち着いているみたいな状態だった。

ただ、ベルリンとロンドンでの自分の生活の違いを考えると、ベルリンでは結構ライブやDJを観に行って体感するっていうことが多かった気がする。一方でロンドンでは、どちらかというとずっとスタジオにいるみたいな、スタジオの中でいろいろ作っているような感覚だね。

——東京には何度も来ていらっしゃると思うんですが、東京や日本のクラブ・シーン/音楽と、あなたが今まで聴いてきた/体験してきた音楽との間には、何か違いを感じたりしますか。

メカトック:まず東京に対して一番いいなと思っているのは、自分がやってるライブもそうだけど、自分が遊びに行ったイベントでも、お客がすごく音楽を大事にしていること。イベントに来るときも、ただお酒を飲むために来ているのではなくて、ちゃんと音楽を体験しに来ている。ベルリンとかロンドンだと、どちらかというともっと社交的なイベントというかソーシャルな感じでパーティーに遊びに来ている印象があるから、日本では音楽を大事にしている感じがすごく伝わってくる。

——先ほどもおっしゃっていましたが、あなたにとってインターネット・カルチャーっていうのは非常に重要なキーワードだと思うんです。あなたが音楽を作り始めた頃と、今のインターネットの風景とはどのように変わったと思いますか。

メカトック:すごく変わったと思う。僕が音楽を作り始めた頃って、やっぱりコミュニティーのヴァイブスがすごく強かった。プラットホームで言ったらサウンドクラウドとかフェイスブックで、そこに20人ぐらいのアーティストが集まって、音楽の話を延々とするみたいな感じの親密な雰囲気があった。

でも今はもう完全にアルゴリズムの時代になっていて、スパムもすごく多いし、コンテンツも過剰でバズる人も多すぎる。ただ、競争心が昔に比べるとすごく強くなっているようには思うけどね。

——例えば、AIっていうものをどう考えていますか。

メカトック:正直なことを言えば、今はちょっと遠くから眺めているような感じかな。現段階だとあまり良くは感じていなくて、クオリティーが良い部分があるのは確かだと思うけど、使い方がそんなに分かってはいないのもあって、そこまで使ってはいない。

強いて言うなら、ボーカルのテスティングをするために使ったりはしていて。コラボレーションで他のアーティストの音楽を作っているときに、生成されたフェイク・ボーカルをサウンドに当てて、それでいろいろ試してみたりはしているね。

——あなたはTohjiやブレイド(Bladee)、エコー2k (Ecco2k)などさまざまなアーティストとコラボレーションしてますが、アーティストとコラボレーションして音楽を作ることと、一人で孤独に音楽を作ることとの間には何か違いはありますか。

メカトック:基本的にコラボすることが多いから、コラボするアーティスト次第かな。今回のアルバムだと仲の良い人を集めて制作したから、個人的には結構チルな感じでできた。しっかりとした信頼関係があるから、向こうが与えてくれたものに対して、僕は自由にやることができてすごく楽しかったね。逆に大きなアーティストとかのプロダクションやコラボレーションになってくると、ちょっと気持ち的にも、頭の使い方もだいぶ違ってくる。

ポップ・ミュージックへの意識

——では音楽を作る時にポップ・ミュージックっていうものをどのくらい意識しながら作っているのでしょうか。

メカトック:いつだって自分の作る音楽をパラレル・ワールドのラジオ・ポップだという風に思っていて。この先自分の音楽がどう変化していくか、予想はできないけど、今のところはそんな感じかな。

——ポップ・ミュージックに強みがあるとしたら、その強みをあなたはどのように考えていますか。また、その限界を超えるためのポイントはどこにあると思いますか。

メカトック:ポップ・ミュージックの強みといったら、全ての人に通じる言語っていう部分なんじゃないかな。間口もすごく広いし、良い意味で敷居が低いと思うから、「誰でもすぐに体験して感じることができる」のがポップ・ミュージックの良さかな。

その限界っていうものは、おそらくエンタメ産業のロジックで、どんどん先鋭化するのを拒否するというか、チャレンジをするっていうことに対して懸念が示されるみたいな部分だと思う。だから、僕はそのポップ・ミュージックに対して、どこまで拡張できるかを考えてちょっと遊んでみるのが結構好きなんだ。

エクスペリメンタルな音楽を作るのはある意味でそこまで難しくはないと思うんだけど、ちょっとばかり変なポップ・ミュージックを作るっていうのはやっぱり結構挑戦的で、だからこそ面白い。そういう一風変わったポップ・ミュージックを作って、もしリスナーの習慣みたいなものを変えることができたら、それはそれで良いなと思っている。

坂本龍一と中田ヤスタカ

——あなたの音楽の軸っていうのはメロディーを軸にしたソングライティングだと思うのですが、音楽を作るにあたって大切にしていることはありますか。

メカトック:もちろんメロディーはすごく大切にしているね。実は、僕が小さい頃にすごく憧れていたのが坂本龍一で、ティーンエイジャーになった頃に中田ヤスタカを知ったんだ。中田ヤスタカの方はどっちかっていうとちょっとベタな感じだったんだけど、 2人とも自分の中では建築家のようなイメージがあって、すごく憧れているんだ。自分は彼らとは直接面識はないし、ちょっと変かもしれないけど、「これはどう思う?」って頭の中で彼らに問いかけたりもしているんだ。

——よかったら坂本龍一の好きなアルバムだったり曲を教えていただけませんか。

メカトック:2枚あって、まずは「千のナイフ」。実はこの作品のジャケットをオマージュした写真撮影をしたこともあって。このジャケットで彼はお風呂で座っているんだけど、僕の写真は彼がそのバスタブで転けてしまったところを想像して撮ってもらったんだ(笑)。もう一つは「スウィート・リヴェンジ」。このジャケットのフォント・デザインが「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」のフォント・デザインに似ていて、面白いなと思っている。

——ミュージシャンとしては、坂本龍一のどんなところに惹かれたりするんですか。

メカトック:僕から見て、彼はクレイジーなキャリアだったなと思うんだ。まず最初にYMO——ある種のポップ・スターとしてスタートして、そこからエクスペリメンタルなものも作り始めてさらにクレイジーになっていったと思ったら、最終的には非常にアブストラクトなアンビエントにたどり着いて、こんなに違うことをやっているにも関わらず、そこには必ず彼のソウルがあって、それがいつ聴いても感じられるところがすごくかっこいいなと憧れている。大げさかもしれないけど、自分もいつかそうなれたらいいなって思ってるね。

スケートシングとのコラボ

——ありがとうございます。少しファッションのことも聞かせてください。あなたのアーティスト写真で「コム デ ギャルソン」のTシャツを着ているものがありました。また、 2000年代初期の日本のストリート・ウエアが好きでハマってたそうですね。音楽とファッションの関係性をどのように考えているか教えてほしいです。

メカトック:どの時代の音楽にもユニホームのようなファッションが存在しているという風に感じていて。個人的にはグラフィック・デザインに心を持っていかれてることが多いから、服というよりはポスターとか香水とかを見たりするのが好きだね。「コム デ ギャルソン」もそういう視点でみることが多い。服に関しては、最近だと「キコ コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)」が気になっている。

——あなたとTohjiの共作曲「200」で、「シーイー(C.E)」のデザイナーのスケートシング(Sk8thing、以下スケシン)がMVのロゴを担当しているそうですが、それはどのようなきっかけでそうなったのでしょうか。

メカトック:KIRIというとても仲の良い友人がいて、彼がこの10年間くらい何度も僕を日本に呼んでくれて、それでライブをやったりしているんだけど、彼がスケシンさんと仲が良くて。それで、自分のアルバムを作るってなったときに、スケシンさんを紹介してもらったんだ。スケシンさんは僕が18歳のころから知ってはいたんだけど、 10年経ってやっとロゴを作ってもらってうれしかったね。今後も一緒にいろいろやろうっていう話をしているよ。

——では最後の質問です。レコード・ショップやCDショップには行かれたりしますか。

メカトック:僕はCDがすごく好きで、特に日本に来たときにCDショップに行くことが多いかな。最近はK-POPのパッケージにハマっていて。クレイジーなパッケージングが多くて興味深いね。

——例えば、そのCDショップに自分のCDを並べるとして、その両隣にはどんなアルバムを置きますか。

メカトック:さっき渋谷のタワーレコードに行ったんだけど、ダフト・パンクとかアヴィーチーとかが並べられている「ヒットしたエレクトロニック・ミュージック」みたいなところに、ちょっとした遊び心で自分のCDをこっそり置いてきたんだ。今頃スタッフが戻していると思うけどね(笑)。

PHOTOS:HIRONORI SAKUNAGA

アルバム「Wide Awake」

◾️メカトック「Wide Awake」
2025年9月5日リリース
レーベル:Young
トラックリスト:
01. You Don't Exist
02. Don't Say No - Mechatok & F5VE
03. Expression On Your Face - Mechatok, Bladee & Ecco2k
04. Everything
05. Virus Freestyle
06. 200 - Mechatok & Tohji
07. Addiction
08. House Of Glass
09. She's A Director - Mechatok & Isabella Lovestory
10. When You Left
11. Sunkiss
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15143

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