アトモスの創業者・本明秀文さんの独自の目線と経験から、商売のヒントを探る連載。インフルエンサーマーケティングは“現代の資本主義”そのものだ。一部の“選ばれし者”が優遇され、大多数の消費者は取り残される──その構造は、思想家カール・マルクスが喝破した資本主義の本質に限りなく近い。本明さんが語る、インフルエンサーマーケティングの本質と、消費者の熱狂と冷笑のあいだに潜む構造的な分断とは。そして最後にたどり着いたのは、“運”という見えない力!?(この記事は「WWDJAPAN」2025年8月11&18日合併号からの抜粋です)
──ジャングリア沖縄がオープンしましたが、ネット上では批判の声も見受けられます。これに対して、ワンメディアの明石ガクトさんがSNSで「万博にしてもジャングリアにしても、特別待遇のインフルエンサーの絶賛そのものがヘイトを生む装置になりつつあることに、PR業界は意識的になった方がいい気がする。わかりやすく言うとクラスの人気者だけ特別扱いされるのを見せつけられ、自分たちは全然楽しめなかったらそれは不満爆発するって話」(一部抜粋)と発信していたのが気になりました。僕はスニーカー業界のPR手法であるシーディングに通じるものを感じたのですが、本明さんはどう思いますか?
本明秀文(以下、本明):一部の人だけが手に入れられて、その他大勢が手に入れられない……そう仕掛けることで物欲を掻き立てる手法は、何十年も前からあるPRの王道だよね。昔は「俺も欲しい、行きたい」って思う人が多かったんだけど、今は情報の速度が速すぎて、すぐにシラけちゃう。例えば、話題の「ラブブ」もタレントやセレブはともかく、インフルエンサーがこぞって付けてるじゃん。最初はいいけど、しばらくして「自分が買えない」って気付いた瞬間に冷める。それって疎外感だよね。熱狂させるために一時的に気持ちをワーっと燃やして、燃え尽きたら次の国、またその次の国と市場を移していく。今のナイキもまさにそんな感じで、もう燃やす場所がないから売れない。消費者の期待感をあおる行為は、やり過ぎると逆に不信感を生む。それが分からず、猫も杓子もインフルエンサーを使うのが当たり前。それが失敗なんだと思う。
──SNSがなかったころは、限られたコミュニティーの人だけがその服を着たりその場所に行けたりして、そのコミュニティーに憧れていたけど、今はSNSのフォロワーが多いだけでそういう特権が与えられる構造だから、昔ほどの憧れ感みたいなのがないのかもしれませんね。
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