大阪で衣料品の循環システムの構築に向けて官民一体の取り組みが本格化する。2030年度までに年間8000t以上の衣料品を回収し、年間3500tを国内でリユース・リサイクルすることを目標にして仕組みを構築する。衣料品循環の大阪モデルを作り、関西および全国に波及させたい考えだ。
阪急阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)、ルクアのJR西日本SC開発、「洋服の青山」の青山商事などの民間企業と大阪府および府内の自治体が連携し、家庭から古着を回収してリユース・リサイクルにつなげる「サステナブルファッション・プラットフォーム協議会」を25日付で設立した。環境省のモデル実証事業として24年に始まった「oHOHo(オホホ)プロジェクト」を発展させたもので、現時点で16の企業・自治体が参画する。今後も参加企業や自治体を募る。
企業・自治体はそれぞれ役割を分担する。自治体として参画する泉佐野市、堺市、吹田市、藤井寺市は住民への告知や回収方法などの新しいスキームを研究する。主な回収拠点になるのが、商業施設や店舗を運営するH2O、阪急阪神百貨店、エイチ・ツー・オー商業開発、JR西日本SC開発、青山商事で、売り場に回収ボックスを設ける。
要となるのが衣料品のリユース・リサイクル大手のファイバーシーディーエム(堺市)だ。同社は膨大な量の古着をリユースするもの、リサイクルするものに選別する。リサイクルは技術力を持つシキボウとモリリンが担う。廃棄に回す古着は住友大阪セメントが、コンクリートに繊維を混ぜ込んで強度向上に用いたり、サーマリサイクル(焼却の際の熱エネルギーを発電や熱源に利用)に活用したりする。
また、大阪府が事業連携協定を結ぶEarth hacksが提供するデカボスコアを活用し、CO2排出量を可視化する。
25日に大阪で行われた記者発表には、環境省や経済産業省の担当者も登壇した。協議会の代表理事の一人であるH2Oの荒木直也社長は「循環の取り組みは、生活者を巻き込まないとうまく機能しない。単に回収ボックスを増やすのではなく、共感の輪を広げることが重要だと考えている」と述べた。泉佐野市に国内最大級の古着の選別工場を持つファイバーシーディーエムの泉谷康成会長は「(30年度の目標とする)8000tの古着の選別は当社のキャパシティーでまかなえる」とした上で、「繊維から繊維へのリサイクルなど、まだ時間のかかる課題もあるが、官民が本気で力を合わせれば道は開ける。未整備だった静脈のインフラを整備する一歩にしたい」と抱負を語った。
実証実験を行なった24年6〜12月の期間には回収ボックスを65カ所に設け、4932kgの古着を回収した。回収ボックスをいきなり増やすと、物流などのコストがかさむため、まずは1拠点あたりの回収点数を増やす。回収ボックスは店舗や役所などに置く。
今回の協議会設立によって衣料品の循環の課題を検討・解決するための態勢を整え、数年後には関西の他の地域と協力関係を築けるコンソーシアムへと発展させる。その上で30年を目安にこの大阪モデルを全国に広げる青写真を描く。
日本では家庭や事業所が手放す55万tの衣料品がリユース・リサイクルに回らず、そのまま焼却・埋め立て処分されている。店舗や自治体が回収ボックスを設置する事例も近年は増えているが、設置状況やルールに統一性がないため、消費者にとって利用しづらく、結果としてリユース・リサイクルに回るのは全体の3割未満にとどまる。