エルメネジルド ゼニア グループ(ERMENEGILDO ZEGNA GROUP以下、ゼニア)は11月24日、エルメネジルド(“ジルド”)・ゼニア会長兼最高経営責任者(CEO)が2026年1月1日付でCEO職を退き、エグゼクティブ・チェアマンに就任することを発表した。これに伴い、新たなCEOにはジャンルカ・タリアブーエ(Gianluca Tagliabue)最高財務責任者兼最高執行責任者(CFO&COO)が就任する。同社で創業家外からトップに就くのはこれが初めて。なお、新たなCFOには、ジャンフランコ・サンシア(Gian Franco Santhia)=グループコントロール&最高会計責任者が就任する。
また、ゼニア新エグゼクティブ・チェアマンの息子で、それぞれグループ内で要職を務めるエドアルド・ゼニア(Edoardo Zegna)とアンジェロ・ゼニア(Angelo Zegna)は、「ゼニア(ZEGNA)」ブランドの共同CEOに就任する。
ゼニア新エグゼクティブ・チェアマンは、「今回の人事について誇らしく、そしてうれしく思う。リーダーの最も重要な責任の一つは先を読むこと、すなわち将来を見据えて準備し、次世代のリーダーシップをエンパワーすることだ。これは当家に深く根付いている価値観であり、今回の人事もこれに基づいている」と語った。タリアブーエ新CEOについては、「ジャンルカはここ10年、ゼニアが大きく変化する中、その礎としてグループをけん引してくれた。ゼニアは信頼できる本物であることの守護者であり、彼はその哲学を体現する存在だ。先見性のある先導者として、傘下ブランドのCEOらをサポートし、グループの使命を実現すべく尽力してくれると確信している」と述べた。
70歳でCEOから退くべく2年前から準備
ゼニアは1910年、イタリア・ピエモンテ州で創業。以来、一族経営を続け、2006年に創業者の孫であるゼニア新エグゼクティブ・チェアマンが会長兼CEOに就任した。同氏の指揮の下、同社は18年にトム ブラウン(THOM BROWNE)を買収。21年12月には、特別買収目的会社(SPAC)であるインベストインダストリアル・アクイジション(INVESTINDUSTRIAL ACQUISITION CORP.)との合併によってニューヨーク証券取引所に上場した。なお、ゼニアは06年ごろから「トム フォード(TOM FORD)」とライセンス契約を締結しメンズウエアを手掛けてきたが、22年11月にエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)が同ブランドを買収したことに伴い、23年4月からはメンズに加えてウィメンズやアクセサリーなどファッション事業全体を担っている。
ゼニア新エグゼクティブ・チェアマンは、現在70歳。以前からこの年齢でCEO職から退くことを意識し、2年前から本格的に準備を進めていたという。なお、同氏は今後も同社の祖業であるテキスタイル部門を統括するほか、法務部門(内部監査を含む)やIR部門などを監督する。同氏は、「年末までスケジュールが詰まっているが、健康にも気を使いたい。また、これまであまり省みることができなかった私生活に時間をかけられるようになるのが楽しみだ」と話した。
「ゼニア」の共同CEOとなる4代目の兄弟について
創業家の4代目であり、「ゼニア」の共同CEOに就任するエドアルドは39歳、アンジェロは37歳。前者はグループの最高サステナビリティ責任者と「ゼニア」の最高マーケティング兼デジタル責任者を、後者は「ゼニア」のEMEA(欧州・中東・アフリカ)地域担当CEOおよびグローバルイベント戦略ディレクターを務めている。
ゼニア新エグゼクティブ・チェアマンは、「エドアルドは外交的で合理的、アンジェロは実行力に優れている。互いに競い合うのではなく、補完し合うことで自然とバランスが取れる関係性だ。2人ともクリアなビジョンを持っており、優れたリーダーシップを発揮しているので、一族のレガシーやブランドのタイムレスなヘリテージを受け継ぎ、さらに強化してくれるだろう」と述べた。
米投資会社ジェフリーズ(JEFFERIES)は、「2人の息子のどちらかがいずれグループのトップとなることは以前から明白だったが、それに先立って主力ブランドの共同CEOとしたのは良案だ。エドアルドは各部門について幅広い専門知識があり、アンジェロは実務経験が豊富なので、バランスの取れたリーダーシップとなるだろう」と分析した。