表題のテーマ「単一素材の服作りへの挑戦はロマンか制約か」は、サステナビリティのものづくり界隈でたびたび話題に上り、ともすれば激論にも発展する難題です。難しさと同時に可能性をはらんでいるからです。
そもそも「なぜ単一素材(モノマテリアル)を目指すのか」。その答えは「繊維to繊維リサイクルを実現するため」です。大量に廃棄されている衣服を「ごみではなく資源」として活用できないか?この問いを突き詰めると、浮かび上がるのが「単一素材化」という選択肢です。
日本ではペットボトルや段ボールのリサイクル率は80〜90%台と世界的にも高水準を誇り、業界努力や制度整備、市町村の分別収集が継続されたことで「リサイクルは当たり前」という意識が消費者に根づきました。一方、衣服の再資源化率はわずか15%(環境省調査)。しかも、その大部分がダウンサイクルであり、衣服として再び循環する水平リサイクルは「ごくわずか」です。
「もったいない。なんとか繊維to繊維リサイクルはできないものか」。この問いが、サステナビリティ分野で熱く議論され続けています。
複合素材の壁と技術革新
衣服のリサイクルを難しくしているのは、複数素材や部材の組み合わせです。一見シンプルなシャツでも、コットン100%やポリエステル100%であることは少なく、多くはコットン×ポリエステルなどの複合素材。さらに縫い糸、タグ、ボタンといった副資材も加わり、素材の多様さはペットボトルや段ボールとは大きく異なります。
こうした課題の突破を目指し、世界では技術革新の動きが加速しています。米国では2024年、ギャップやターゲットが繊維to繊維リサイクルのスタートアップ「サイア(SYRE)」との協業を発表。H&Mも出資を行いました。
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