今回の目玉のひとつは、日本国内の廃漁網をケミカルリサイクルして生み出された再生フィラメント「ミューロン」だ。1年前のローンチ以来好評を博し、今回は日本を代表するナイロンメーカー、カジナイロンが自社生地の品番に初めて採用。厳しい品質基準をクリアし、バージン素材と遜色ない仕上がりを実現したという。また、京セラとの協業による、水をほとんど使わないインクジェット捺染プリントも披露した。
さらに、洋服のモノマテリアル化を可能にする再生PETを使用した副資材シリーズも登場。モノマテリアル化とは、製品を単一素材で構成することで、廃棄や回収時に素材ごとの分別をせずにリサイクルできる状態を指す。従来の衣服は、布地・ファスナー・ホック・糸など複数の素材が混在しており、リサイクル工程での分別作業や異素材混入による品質劣化が大きな課題だった。副資材まで同じ素材で統一できれば、製品全体を効率よくリサイクルできるため、循環型ファッションの実現に向けて大きな前進となる。今回のシリーズでは、ホックなどの小さな部品も従来のPOM(ポリアセタール)樹脂からPET素材に切り替えて開発。当初はコストが大幅に増したが、試行錯誤の末に削減し、量産によるコストダウンも視野に入れているという。
本展示会は「アパレルメーカーやデザイナーに直接新商品や思いを届けたい」(岩下貢 モリトアパレル取締役事業本部本部長)という目的で3年前にスタート。新作や過去に発表したものの認知度が低い製品、さらには開発中の試作品までを一堂に集め、反応を見ながら製品化を進める場として企画した。好評であれば定番化し、反応が薄ければ市場には出さないというユニークなスタンスも特徴だ。その一例が、今回披露した片手でも衣服を着脱できる「ワンハンドテープ」である。これは腕が不自由な方からの要望をきっかけに、大阪工業大学との産学連携で誕生した試作品だ。岩下取締役は「介護現場や日常生活の利便性向上にもつながる可能性がある。完全ではなくてもまず形にして発表し、共感いただけるお客さまと一緒に完成度を高めたい」と語る。