ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。ワークマンがこのほど新製品発表会を開いた。業績の足踏みと戦略変更を受け、一部メディアで「迷走」と報道されたのを逆手にとり、会場には「単なる『迷走』か?『進化か?』」と題したポスターを掲示し、転んでもただでは起きない姿勢を見せた。新製品発表会を取材した小島氏はどう評するのか。
ワークマンが今春から「#ワークマン女子」を「ワークマンカラーズ」に業態変更してベーシック衣料のファミリー業態とし、地方都市ロードサイドのFC(フランチャイズ)店中心に多店化するとしているが、前期まで3期連続で既存店売上高が伸び悩んで2期連続の減益という踊り場から抜け出す突破口となるのだろうか。
踊り場からの再成長を図る「ベーシック衣料のファミリー業態」
地味ながら手堅く安定していたプロ向けワークウエア&用品専門店「ワークマン」のFCチェーンが職人人口の減少で頭打ちになったのを契機に、低価格機能性を武器にした一般向けワーク&アウトドアカジュアルの「ワークマンプラス」(1号店は18年9月のららぽーと立川立飛)でSCにも出店して再び成長に転じ、女性向けのファッション性を意識したワークカジュアルの「#ワークマン女子」(1号店は20年10月の桜木町コレットマーレ)で都心部にも出店してメジャーなカジュアルチェーンへと発展を図ったワークマン。コロナ明けのアウトドアブーム沈静化による「ワークマンプラス」の頭打ちや開店人気の反動による「#ワークマン女子」の落ち込みなどで既存店売上高が伸び悩んで2期連続の減益と踊り場に陥り、成長軌道へ復帰する「次の一手」が注目されていた。
その「次の一手」が、「#ワークマン女子」を「ワークマンカラーズ」に業態変更してメンズとキッズを拡充し、「ベーシック衣料のファミリー業態」として地方都市ロードサイドのFC店中心に多店化するという「ローカル回帰」「ロードサイド回帰」「FC回帰」(「ワークマンプラス」「#ワークマン女子」のSC店は運営代行委託型の直営店)で、人口3万〜8万人の地方小都市の3万〜5万人商圏に20年かけて900店(32年までに400店)を布石して「ユニクロ」超えを目指すとしている。3万〜5万人商圏というと「ファッションセンターしまむら」(標準店は2.5万人商圏)と大差なく、「小商圏回帰」でもある。
インパクトは大きかったがファッションイメージが先行して顧客の期待とすれ違う嫌いもあり立地も限定された「#ワークマン女子」の反省から、ローカルの小商圏ロードサイドでも客数を確保しやすい万人向けのベーシックなファミリー衣料が志向されたが、その狙いは具現化されたのだろうか。2月20日から3日間、P.O.南青山ホールで開催された「新生『ワークマンカラーズ』発表会」でのサンプル商品から探ってみた。
展示商品に見るマーケットポジション
展示された商品とその説明から、新生「ワークマンカラーズ」の狙いは以下の4ポイントだと受け止めた。
(1)ライバルを引き離す圧倒的低価格
ベーシックアイテムは南アジアの工場と直接にガッチリ組んで、1年掛かりで生産仕様を詰めて大量計画生産することで圧倒的低価格を実現。メンズのポリエステル100%コットンライクストレッチ(ウールライクストレッチもあり)のシャツジャケット(4色、3サイズ)とパンツ(4色、4サイズ)のセットアップは各々1500円と、低価格カジュアルチェーンの半値水準。“カルキュロ“(帝人フロンティアの高機能合繊素材)のサマージャケット(3色、5サイズ)とパンツ(3色、5サイズ)のセットアップでもジャケットが2900円、パンツが1900円と、ライバルよりそれぞれワンライン低い。キッズの超撥水シェフジョガーパンツ(4色、4サイズ)が1280円、スーピマシルケットコットン半袖Tシャツ(6色、4サイズ)が780円、キャンバススニーカー(4色、10サイズ)が980円と、「しまむら」価格に抑えている(「西松屋」はさらに安い)。
レディスはリネンライク“ソロナ“(米デュポン社開発の植物由来サステナ高機能素材)キャミビスチェ(4色、3サイズ)が1280円、撥水ランダムプリーツスカート(5色、2サイズ)が1900円、高撥水フードポンチョアウター(3色、2サイズ)が3500円、ワンピースも素材やデザインによって1900円〜3900円と、「しまむら」のカジュアル単品価格と同水準。デザインやトレンドを意識した商品は中国の協力工場でロットを抑えて短サイクル生産しており、こちらはワンライン高い商品もある。
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