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ファーフェッチ、経営破綻まで秒読みか 事業売却が成立しなければ管財人の管理下に

高級ECのファーフェッチ(FARFETCH)が、経営破綻の瀬戸際にあることが明らかになった。現時点で少なくとも2社の買い手候補がいるものの、近日中に取引が成立しない場合に備え、本拠地の英国ですでに管財人の選定を進めているという。なお、買い手候補の一人は大手ファッションECサイト「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」の共同設立者である起業家兼投資家のカルメン・バスケッツ(Carmen Busquets)で、もう1社は個人投資家ではなく企業と見られている。

バスケッツ「ネッタポルテ」共同設立者は、ファーフェッチやモーダ・オペランディ(MODA OPERANDI)のほか、ファッションECの検索プラットフォーム、リスト(LYST)など、ラグジュアリーファッション分野におけるEC関連企業の可能性に早くから着目し、投資してきた実績を持つ。今回は、ファーフェッチ救済のため5億〜10億ドル(約725億〜1450億円)を調達する予定であることや、同社を5年で成長軌道に戻す再建計画などを提示したという。同氏は、「私はファッションとテクノロジーを融合したマーケットプレイスの可能性を信じており、ファーフェッチは現在でも業界のリーディングカンパニーだと確信している。同社は複数の企業取引を抱えているため、ただでさえ経済環境が複雑化する中でさらに難しい舵取りを強いられているが、その戦略的な資産価値の高さは損なわれておらず、戦略的な提携や統合の機会はまだ数多くあるだろう」と語った。

ファーフェッチの最近の動向

ファーフェッチの最近の動向は、さまざまな波紋を呼んでいた。11月28日には、同社の非公開化を創業者のジョゼ・ネヴェス(Jose Neves)会長兼最高経営責任者(CEO)が検討していると英テレグラフ(The Telegraph)紙が報道。同日、ファーフェッチは29日に予定していた2023年7~9月期(第3四半期)決算の発表を取りやめ、これまでの業績見込み(ガイダンス)も撤回するとの声明を発表した。

ファーフェッチは8月、「カルティエ(CARTIER)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」「クロエ(CHLOE)」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)が擁するラグジュアリーEC大手のユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)の株式の47.5%を取得することに合意。この取引には、ファーフェッチの企業向けECプラットフォームであるファーフェッチ・プラットフォーム・ソリューション(Farfetch Platform Solutions)をリシュモンとYNAPが導入する契約なども含まれている。取引は23年度中に完了する見込みで、10月には欧州委員会(European Commission)からの承認も得たが、リシュモンは取引の完了には「当社とファーフェッチの間で協議しているその他の要件に関する合意」が必要であり、詳細は追って発表するとしていた。

また、ファーフェッチは、中国のラグジュアリーEC市場における戦略的パートナーシップのため、20年に中国最大手EC企業のアリババ・グループ(ALIBABA GROUP以下、アリババ)およびリシュモンと提携している。こうしたことを背景に、テレグラフ紙は「ファーフェッチは、非公開化に関してアリババやリシュモンなどから一時的な支援を受けると見られている」と報じた。

一方、リシュモンは11月29日、「当社はファーフェッチに対する金銭的な義務はなく、融資や投資も考えていない。8月に発表したファーフェッチとの取引を含め、状況を注意深く見守っている。現時点で、当社の傘下ブランドやYNAPはファーフェッチ・プラットフォーム・ソリューションを導入しておらず、それぞれのプラットフォーム上で運営している。必要があれば、またアナウンスする」と声明を発表した。このことから、「リシュモンはファーフェッチと距離を置いた」との見方が市場に広がっている。

12月5日には、情報筋の話として、ファーフェッチが傘下の英セレクトショップ、ブラウンズ(BROWNS)の売却を検討していると複数の海外メディアが報じた。また、同日に世界最大手の格付け機関S&Pグローバル・レーティング(S&P GLOBAL RATINGS)がファーフェッチの発行体格付けを“Bマイナス”から“CCCプラス”に引き下げたことに続き、12日には格付け会社ムーディーズ(MOODY'S)も同じく“B3”から“Caa2”に格下げした。

6日には、アリババのジョン・マイケル・エヴァンズ(John Michael Evans)=ディレクター兼社長が、ファーフェッチの取締役を辞任したと海外メディアが報じた。これはファーフェッチが規制当局に提出した書類から明らかになったもので、イギリスのファッションメディア「ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion)」によれば、同氏はファーフェッチが非公開化を検討していると報じられた2日後の11月30日付で同社の取締役を辞任したという。同氏は、前述の通り、20年にファーフェッチがリシュモンおよびアリババと提携した際にファーフェッチの取締役に就任している。

今回の事業売却が成立しなかった場合は?

買い手候補との取引が成立せず、ファーフェッチが管財人の管理下となった場合、主に機関投資家である債権者への支払いのため、さまざまな資産が売却される見込みだ。その中には、前述のブラウンズのほか、故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」などを擁するニューガーズグループ(NEW GUARDS GROUP)、スニーカーのリセールサイト「スタジアム・グッズ(STADIUM GOODS)」、米百貨店ニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP)における2億ドル(約290億円)相当のファーフェッチの持ち分や、ファーフェッチの企業向けECプラットフォームであるファーフェッチ・プラットフォーム・ソリューション(Farfetch Platform Solutions)の知的財産などが含まれる。また、情報筋によれば、管財人の管理下となった場合にはYNAPの取引もなくなる可能性が高いものの、今回の事業売却が成立した場合は、新たなオーナーとリシュモンが再交渉して取引が継続することもあり得るという。

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