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ファーフェッチが迷走!? リシュモンも困惑する非公開化やブラウンズ売却を検討との報道

高級ECのファーフェッチ(FARFETCH)の最近の動向が、さまざまな波紋を呼んでいる。事の発端は、11月28日、ファーフェッチの非公開化を創業者のジョゼ・ネヴェス(Jose Neves)会長兼最高経営責任者(CEO)が米投資銀行JPモルガン(J.P. MORGAN)と共に検討していると、英テレグラフ(The Telegraph)紙が報じたことだ。その同日、ファーフェッチが29日に予定していた2023年7~9月期(第3四半期)決算の発表を取りやめ、これまで発表した業績見込み(ガイダンス)も撤回する旨の声明を出したことから市場に臆測が広まり、同社の株価は前日比22.8%高の2.1ドル(約306円)を付けた。本件に関して、ファーフェッチおよびJPモルガンからのコメントは得られていない。

ファーフェッチは8月、「カルティエ(CARTIER)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」「クロエ(CHLOE)」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)が擁するラグジュアリーEC大手のユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)の株式の47.5%を取得することに合意。この取引には、ファーフェッチの企業向けECプラットフォームであるファーフェッチ・プラットフォーム・ソリューション(Farfetch Platform Solutions)をリシュモンとYNAPが導入する契約なども含まれている。取引は23年度中に完了する見込みで、10月には欧州委員会(European Commission)からの承認も得たが、リシュモンは取引の完了には「当社とファーフェッチの間で協議しているその他の要件に関する合意」が必要であり、詳細は追って発表するとしていた。

また、ファーフェッチは、中国のラグジュアリーEC市場における戦略的パートナーシップのため、20年に中国最大手EC企業のアリババ・グループ(ALIBABA GROUP以下、アリババ)およびリシュモンと提携している。こうしたことを背景に、テレグラフ紙は「ファーフェッチは、非公開化に関してアリババやリシュモンなどから一時的な支援を受けると見られている」と報じた。

リシュモンは“寝耳に水”だった!? 
アナリストらの反応は

一方、リシュモンは11月29日、「当社はファーフェッチに対する金銭的な義務はなく、融資や投資も考えていない。8月に発表したファーフェッチとの取引を含め、状況を注意深く見守っている。現時点で、当社の傘下ブランドやYNAPはファーフェッチ・プラットフォーム・ソリューションを導入しておらず、それぞれのプラットフォーム上で運営している。必要があれば、またアナウンスする」と声明を発表した。

これを受け、上昇していたファーフェッチの株価は大きく下落。前日比53.8%安の97セント(約141円)となったが、その後はやや回復し、12月7日の終値では1.17ドル(約170円)となっている。

投資銀行のアナリストらは、リシュモンの声明を評価。欧州の投資銀行ODDO BHFは、「リシュモンの声明は驚きだった。同社はファーフェッチから明確に距離を置こうとしており、YNAPに関する取引にも暗雲が立ち込め始めている。リシュモンとしては、YNAPを再び傘下にするのは当然避けたい事態だと思われるが、迷走気味のファーフェッチ事情に巻き込まれるよりはましだと判断する可能性も否めない」とコメントした。

カナダの投資銀行RBCキャピタルマーケッツ(RBC CAPITAL MARKETS)は、「ファーフェッチが非公開化し、かつYNAPの取引が予定通り進んだ場合、リシュモンとしてはYNAPは手放せるものの、傘下ブランドのECプラットフォームを非公開企業に委ねることになってしまう。これは運営上、多大なリスクが伴うことだ。一方で、YNAPの取引を破談にした場合、YNAPを売却するという当初の目的は達成できないが、ECプラットフォームは引き続き自社でコントロールできる。(ファーフェッチの非公開化という)想定外の展開となる可能性もある以上、リシュモンは最悪の事態を避けるため、後者の道を選ぶのではないか」と指摘した。

米投資銀行バーンスタイン(BERNSTEIN)は、「リシュモンの声明を歓迎する」とコメント。「ファーフェッチの混迷ぶりを見るに、距離を置くことを明らかにしたリシュモンの判断は賢明だ。これにより、リシュモンはラグジュアリー分野における超一流レベルに近づいたといえるだろう」。

S&Pはファーフェッチを格下げ 
アリババからの取締役も辞任

12月5日には、情報筋の話として、ファーフェッチが傘下の英セレクトショップ、ブラウンズ(BROWNS)の売却を検討していると複数の海外メディアが報じた。また、世界最大手の格付け機関S&Pグローバル・レーティング(S&P GLOBAL RATINGS)は、ファーフェッチの発行体格付けを“Bマイナス”から“CCCプラス”に引き下げている。

6日には、アリババのジョン・マイケル・エヴァンズ(John Michael Evans)=ディレクター兼社長が、ファーフェッチの取締役を辞任したと海外メディアが報じた。これはファーフェッチが規制当局に提出した書類から明らかになったもので、イギリスのファッションメディア「ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion)」によれば、同氏はファーフェッチが非公開化を検討していると報じられた2日後の11月30日付で同社の取締役を辞任したという。同氏は、前述の通り、20年にファーフェッチがリシュモンおよびアリババと提携した際にファーフェッチの取締役に就任している。

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