ファッション

生成AIが接客? 東京・久我山の無人古着屋「ジャンボデンキ」

「ジャンボデンキ」と書かれた青い軒先、昭和の家電製品を広告するPOP、レトロなストライプの壁紙──今年3月に東京・久我山に誕生した「古着屋 ジャンボデンキ」は、かつて地元で愛された電気屋の外観と内装、屋号をそのまま受け継ぐ無人の古着屋だ。運営するのは、デザイン会社ザ・カンパニーの橘啓介社長。普段はファッションや建設、医療とさまざまな業種のブランディングとデザインを手掛けている。

デザイン会社が
無人古着屋を営む真意

店内には約1000点の古着が所狭しと並ぶ。客はハンガーについたタグの色で値段を判断し、料金ボックスに現金を投函。小銭がないときは、ボックス横の両替機を使う。セキュリティーは防犯カメラのみの、完全に性善説に則った店舗だが、盗難は「ほぼゼロ」というから驚きだ。「お客さんの計算違いや、金額の入れ違いによる料金のロスはある。それでも、悪意のある窃盗はない」。

橘社長が同店を始めたきっかけは、知り合いが無人古着屋を運営していたことだった。「初期費用もそれほど高くないし、自分にもできそうと安易に考えた」と笑うが、真の目的は他にある。「本業で小売店のロゴデザインやブランディングを手伝うこともあるのに、自分で店を運営していないことがずっと気がかりだった。自らの店で実績を重ねれば本業の説得力も増すし、マーケティングやシステムの実験場としても使える」。たとえ売り上げが立たなくても、やる覚悟だったのである。

AI、セール、LINEスタンプ
さまざまな施策の“実験場”

同店ではデザインやシステムの“実験場”として、さまざまな施策を行う。その一つが、生成AIを活用した接客だ。ChatGPTと音声認識ツール、発話ツールを組み合わせて開発した独自システムで、タブレットに触れて質問すると、同店のマスコットキャラクター、ジャンボくんが音声で答えてくれる。ほかにも、SNS運用やLINEスタンプの制作、半額セールの実施、店舗のコンセプトまで、同店のあらゆる取り組みがノウハウとして蓄積され、本業であるデザインやコンサルティング事業に還元される。

久我山は橘社長が住み慣れた場所で、この地を盛り上げる思いも込めて出店した。電気屋の跡地を選んだのは、「昭和の雰囲気が残っていて、何より安かったから(笑)」。月間売り上げは70万〜100万円で、年内には初期費用も回収する見通し。多店舗化の予定はないものの、地域活性化や、空き家問題の解決策になる可能性はある。「似た課題を持つエリアに横展開するのはアリ。元クリーニング屋とか、元居酒屋とか。頭に『古着屋』を付けるだけだから」。

■古着屋 ジャンボデンキ
住所:東京都杉並区久我山4-50-1
営業時間:10:00~22:00(金、土、祝前日は24時間営業)

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

韓国ブランドの強さに迫る 空間と体験、行き渡る美意識

日本の若者の間で韓国ブランドの存在感が増しています。K- POP ブームが追い風ですが、それだけでは説明できない勢い。本特集では、アジアや世界で存在感を示すKブランドや現地の人気ショップの取材から、近年の韓国ブランドの強さの理由に迫ります。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。

メルマガ会員の登録が完了しました。