ファッション

“青一色”の異質な古着屋「M.O.S ブルー」業界歴25年のオーナーが脱サラして選んだ息子のためのセカンドキャリア

 東京・中野にブルーのアイテムのみを取り扱う古着店がある。「M.O.S ブルー(M.O.S BLUE)」というこの店は、看板もレイアウトしているアイテムもブルー一色。通行人は異質なオーラを放つ同店を、思わず二度見していく。さらに、同店の徒歩圏内にはグリーンを集めた2号店「M.O.S グリーン(M.O.S GREEN)」も出店している。2店舗のオーナーである大間洋一郎 M.O.S代表は、ファッションブランドで店長やエリアマネージャーを長年務めてきた人物だ。今回は、大間代表にカラーを絞った店づくりの裏側を聞いた。

家族のために選んだセカンドキャリア

WWDJAPAN(以下、WWD):経歴を教えてください。

大間洋一郎代表(以下、大間):僕はずっとファッションブランドで営業をしていたので、業界歴は25年くらいになります。最初はギャップ(GAP)に入社し、レナウンの「J.クルー(J.CREW)」を経て、オンワード樫山で複数のブランドの店長職を経験した後は、エリアマネジャーをしていました。

WWD:店を開こうと思ったきっかけは?

大間:高校生の時から古着が好きでした。当時は今より体が大きくて着る服を選べなかったのですが、たまたま出向いた高円寺でアメリカンサイズの古着にたくさん出合ったんです。その頃からアメカジ古着を買い漁るようになりました。就職してからも、いつか古着の店を出店したいという目標を持っていました。

 実際に店を開くきっかけになったのは、小学4年生の息子の存在です。息子が多動性自閉症という障がいを持っていて、生活するにも手助けが必要です。営業職は出張があったり、遠方の店舗に出向くと帰りが遅くなったりするので、できるだけ子供のそばにいられる仕事をしたかった。そこで、長年住んでいる中野に店を持つことにしました。隣の高円寺は古着の町ですが、息子が支援学校職員や地元の民生委員、放課後デーの保育士の方々にお世話になっているので、中野に恩返ししたいし、近隣に洋服屋が少ないこともあって地域密着型の店舗を目指していきたかったんです。

 色を絞ったのは、きれいな古着屋を作りたかったから。ごちゃごちゃとしてまとまりがないより、一つの色に絞ったほうが見栄えがいいのではないかと考えたからです。

WWD:目の前にホームセンターがある、この物件の決め手は?

大間:薄いグリーンに白い枠がついている外観が気に入りました。それに、都市部でこれほど大きいホームセンターがあるのはこの場所ぐらいなので、人通りもある。実際、駐車場の入り口の前だから、土日はすごく混んでいるのが分かります。青一色なので駐車待ちの人の目に付くようで、グーグルでの店名の検索数がすごいらしいんです(笑)。入店するかは別としても、会話のネタになっていたらいいですね。

WWD:店内のラインアップは?

大間:9割が古着で、オリジナルのアパレルやグッズを少し置いています。古着は状態のいいものを選んでいて、靴もできるだけきれいにしています。古着になじみのない方だと、古着だと気付かれない場合も多いですね。ブルーの店舗には、近隣で子供服を買える店が少ないので子供服も置いています。

 色をピンポイントで選ぶため、自分でピックできる国内の古着卸の業者から、好みのブルーとグリーンのアイテムを選んでいます。特にそろえているのはスエットで、4900円前後で販売しています。

WWD:価格設定のこだわりは?

大間:フェアプライスにはこだわっていますね。店内の商品はほとんど1万円以下で、例えば「リーバイス(LEVI’S)」のジーンズは全部3900円にしています。アパレル販売をしていた時、間に入る業者が多くなるとその取り分も上乗せされて、販売値段が高くなってしまっていました。最近は古着ブームで、1990年代の「チャンピオン(CHAMPION)」の“リバース ウィーブ(Reverse Weave)”が3〜4万で売られており、ファッションビルの店も若い人にとっては安くない。おしゃれしたい気持ちはあるのに、金銭的な理由で諦めざるを得ないのは悲しいので、この店では適正価格を大事にしています。

大型ホールがある中野
“推し活”のニーズにもマッチ

WWD:店に来るのはどんな顧客が多いですか?

大間:初年度は地元の年配の方が立ち寄ってくれることが多かったです。グリーンの店舗ができてからは、SNSで話題になって店の認知度が上がったのか、若い人も増えました。高校生の女の子が、制服に合わせるためのオーバーサイズのスエットを買っていくこともありますね。

 あと、カラーに特化しているので、“推しメン”のメンバーカラーのアイテムを探しに来る人も多いですね。最近はアイドルグループに“推しメン”がいて、そのメンバーカラーのアイテムを身に着けてライブに行く文化がありますよね。しかも、中野には中野サンプラザや、なかのZEROの大ホールなど大きな会場があるので、ライブの前に全身“推しメン"のメンバーカラーに着替えて行く人がいます。最近は、純烈ファンの年配女性たち3人組が来店しました。

WWD:中野に根ざした店作りを目指す上で、町の人とはどのように関わっていますか?

大間:近所のカレー屋と協力して店の前でカレーのランチを販売したり、子供服の在庫を近所の病院や保育園に寄付したりしています。あとは接客にもこだわっていて、お客さまがほしいものがあれば、仕入れの時に探すようにしています。でも、とあるお客さまからリクエストがあった「コンバース(CONVERSE)」のブルーの“ワンスター(ONE STAR)”はなかなか見つからないですね……。

WWD:今後の展望は?

大間:“推し活"に使うお客さまに「次の店舗は赤にして」と言われていますが、赤は難しいんですよね。アウターやトップスはあるけど、ボトムがなかなかない。でも、期待には応えたいです。黄色ならベージュのチノパンがあるから、可能性があるかもしれません。

 そして、もっと色を増やして中野をレインボーカラーに染めようとお客さまとも話しているんです。変なこだわりですけど、この1号店を一丁目、2号店を二丁目に出したので、次は3丁目に出したい。そして最後は、中野の聖地である中野ブロードウェイに進出したいんです。各店舗を歩いて移動できる距離にするのもこだわりなので、中野散策と称して各店を結ぶスタンプラリーができたら面白いなとか、夢だけは広がります(笑)。

■M.O.S used clothing blue
住所:〒164-0001 東京都中野区中野1丁目61-11
営業時間:10時30分〜19時
定休日:月曜日

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