ファッション

サンローラン支援の「蔡國強」展が国立新美術館で開催 火薬のアートで脚光浴びる

国立新美術館とサンローラン(SAINT LAURENT)が共催した、現代美術家・蔡國強(ツァイ・グオチャン/さい・こっきょう)の大規模個展「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」が、6月29日~8月21日に開催する。同氏の日本での展覧会は、2015年に横浜美術館で行った「蔡國強展 帰去来」以来、8年ぶり。28日のプレスカンファレンスには、蔡國強とフランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)=イヴ・サンローラン社長兼CEO、逢坂恵理子=国立新美術館館長が登壇した。

蔡國強は、1957年中国福建省・泉州市生まれ。86年に来日し、95年までの約9年間、日本で制作活動を行った。火薬の爆発を用いて描く火薬画の技法が特徴で、93年に発表した、火をつけた導火線で万里の長城を1万メートル延長した作品「万里の長城を1万メートル延長するプロジェクト」で一躍世界の注目を集めた。99年第48回ヴェネチア・ビエンナーレで国際金獅子賞を受賞しているほか、2007年には「キノコ雲のある世紀」でヒロシマ賞を受賞。08年北京オリンピックと22年北京冬季オリンピックの開閉会式では視覚特効芸術と花火監督を務めた。

日本初公開を含む54点を展示

同展のテーマは、宇宙や見えない世界との対話。蔡が1991年に東京で発表した展覧会「原初火球:The Project for Projects」を彼の芸術の起点と捉え、火薬の爆発を用いた創作の原点から今日に至るまでに何が起こったのか、過去・現在・未来をたどったものだ。2000平方メートルの空間には、火薬ドローイングや記録映像、アーカイブ資料、巨大なLEDによるインスタレーションなど、蔡自身が展示構成した日本初公開の新作を含む54点の作品を展示。テーマに沿って5つに区分しながら、全体を一つのインスタレーションのようにキュレーションしている。

ベレッティーニ社長兼CEOは、「創設者イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)は、ファッションと芸術の関係性を革命的に変えた人物でもある。だからこそ、アートや映画、音楽など、さまざまなクリエイティビティーをサポートすることはわが社の使命」と支援への思いをコメントした。

蔡國強は同展開催にあたり、日本移住直後の日記を読み返したといい、「約37年前の1986年12月13日に、私は中国から日本に一人で来た。混乱もあったが、収穫も大きかった。私のアーティストの原点は日本にある」と振り返った。

同展のタイトル「宇宙遊」については、「日本で暮らしていたころは、東京・板橋区の4畳半のアパートに妻と住んでいた。火薬を使うのは、深夜近所が寝静まった後、狭い台所でのみ。子ども用の花火やマッチを解体して爆発させていた。生活は貧しかったが、宇宙と時間、空間について考え続け、最も宇宙を近くに感じていた」。そして、今も当時の考えや精神を持ち続けているかを自分に問いかけるといい、「東京で展覧会を開催するのは、リスタートするため。若いころから今まで行ってきた、宇宙や見えない世界との対話を伝え、原点から出発するのは自分にとって意義がある」と説明した。さらに、「現代は不景気で、戦争が起こり、AIが台頭し、これまでにないスピードでさまざまなことが人間の生活に衝撃を与えている。混沌とした時代だからこそ、宇宙規模の広い視点で物事を捉え、対話することは人々にとっても意義があるのではないか」と続けた。

同展の開催に先駆け、26日には蔡が「第二の故郷」と呼ぶ福島・いわき市で花火のパフォーマンスを実施した。「東北大震災による津波や原発事故などで失った命に捧げる」として、「満点の桜が咲く日」と題した昼花火約4万発を、高さ120メートル、幅400メートルにわたって打ち上げた。

■蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる
会期:6月29日〜8月21日
時間:10:00〜18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで
定休日:火曜日
場所:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
入場料:一般1500円/大学生1000円/高校生、18歳以下は無料

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