
研修名:
富裕層体験研修
対象者:
全社員
研修前の課題:
東京の価値を伝える新店オープンに伴い、
既存店も再編成して美容室の「ラグジュアリー」を模索
研修の効果:
サービスを受ける側の視点を学び、
顧客の背景やインサイト、ニーズの想像が加速
全スタッフがアマンに宿泊
自分の価値に自信を持つ契機に
少子高齢化による労働力人口の減少やグローバル人材の確保など、人材育成の課題が長く指摘されてきた。コロナ禍を経て、働き方やコミュニケーションに変化が生まれ、人材育成の重要性はさらに高まっている。本特集では、独自の研修プログラムで成果を上げる12社の取り組みを紹介する。(この記事は「WWDJAPAN」2023年6月5日号からの抜粋に加筆しています)
ヘアサロンのカキモトアームズは今春、総勢360人の全スタッフがアマンホテル東京(以下、アマン)に宿泊することで、ラグジュアリーの真髄や富裕層の価値観などを体感する研修を実施した。加えて宿泊時には、各自に自由に使える4万円を渡し、「“ラグジュアリーホテル縛り”でアマンやその他のホテルに赴き、ランチやディナー、アフタヌーンティー、バーを楽しんでもらった。他のホテルに行けば、“アマンジャンキー(「ホテルは『アマン』」と決めている、“アマン中毒者”を指す言葉”の存在理由が分かるかもしれない」と村松亜子・柿本榮三美容室取締役。この研修に費やした総額は、5000万円を軽く超える。
「次の時代」を見据え、「カキモトアームズ」は改めて将来の顧客像を定義した。彼らは「選ぶ意思がある女性・男性で、インテリジェントで、ファッションに敏感。グローバルな視点を持ち、健康やビューティ、セルフケアへの関心が高く、丁寧な暮らしを実践している。『メルセデス・ベンツ』に乗り、『シャネル』の新作は常に気にして、ヴァージル・アブローの『ルイ・ヴィトン』を持っているような人。もちろん休日は、家族でアマンに宿泊している」人たち。そこで、アマンへの宿泊を決めた。同時に「今のお客さまにも、そんな場所に行き慣れている方々は多い。お客さまにどんな背景があるのか想像できないと、理想とするヘアスタイルやカラーは実現できない。だからこそ、お客さまが日々受けていらっしゃるサービスを、私たちも受けるのが大事」という。
「宿泊研修は、確実に売り上げにつながっている。もちろんモチベーションやムード、ホスピタリティーもアップしたので、コロナ禍以降は過去最高売り上げを更新し続け、客単価もアップしている」という。中でも村松取締役が価値を置くのは、「(老舗なのに1泊8万円前後の)帝国ホテルでも、ホテルオークラでも、ホテル ニューオータニでもなく、(老舗より日本での歴史が浅いのに、宿泊費は高い)アマンに泊まったこと。そして、サービスに対して総額4万円を自分たちが支払ったこと。私たちが提供するサービスの価値を再考したり、(日系ホテルが得意な)“心の表れ”だけでは『老舗』と呼ばれてしまうのかもしれないと考えたりの契機になった。50年近い歴史があるが、わたしたちは『老舗』にはなりたくない。一流のホスピタリティーと技術を提供できるなら、その価格は高く設定できると自信を持つことが大事。その上で大切な、幅広い視野と人間力向上のきっかけになった」と振り返る。