ファッション

百貨店売上高3位「西武池袋本店」はヨドバシ主導でどう変わるか

 セブン&アイ・ホールディングスは、子会社のそごう・西武を米投資ファンドの米フォートレス・インベストメント・グループに売却することを正式発表した。フォートレスは百貨店再建のパートナーとして家電量販店のヨドバシホールディングス(HD)と組む。ヨドバシHDはそごう・西武の一部店舗の不動産を取得した上で、ヨドバシカメラを出店する。具体的な再建策は今後明らかになるだろうが、最大の注目は基幹店である西武池袋本店だ。

 西武池袋本店はコロナ下の2022年2月期でも売上高は1540億円。伊勢丹新宿本店、阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)に次ぐ百貨店売上高の日本3位である。旧セゾングループが消費市場を席巻した1980年代には1位だったこともある。現在でも西武池袋本店が一番店(全国で最大の売り上げ)というアパレルブランドが少なくない。

 JR、東京メトロ、西武、東武が乗り入れ、1日の乗降客数が260万人という池袋駅に直結する好立地に、7万3000平方メートルの巨大な売り場を構え、その集客力は日本トップクラスといえる。全国に百貨店を10店舗運営し、その他の事業と併せて売上高4469億円(22年2月期)のそごう・西武にとって、その3分の1を占める虎の子だ。しかし近年はそのトラフィック(通行量)を生かしきれていないという指摘も多い。

ヨドバシカメラはどこに入るのか

 同店は今年7月末、約10年ぶりの大型改装を発表した。対象は地下1階~2階の食品、2階のアート雑貨、化粧品、プレステージ雑貨、3階のハンドバッグ、婦人靴売り場の全4フロアで、合わせて2900平方メートルになる。9月上旬から2023年1月中旬にかけて、段階的に改装している最中だ。10月28日にもZ世代やミレニアル世代に向けたナチュラルコスメの売り場がオープンしたばかりだった。

 コロナ禍から消費が戻りつつある中、反転攻勢をねらった大型改装が、ヨドバシカメラの入居を前提に計画されていたかは不明だ。セブン&アイは、入札を経て優先交渉権を得たフォートレスと7月以降、具体的な条件面をすり合わせてきた。最も収益のポテンシャルが高い西武池袋本店をどうするかは重要事項だったはずである。

 ヨドバシカメラが入居することは、ほぼ確実と言われている。読売新聞オンラインは「西武池袋本店は、ヨドバシが建物のほとんどを取得するとみられる。1階などに家電量販店を出店したうえで、百貨店全体をヨドバシが運営する可能性がある」(11月12日付)と、かなり踏み込んだ見方を紹介している。

 「建物のほとんどを取得する」のは“自前主義”を重視し、全国の店舗で不動産を所有してきたヨドバシHDの定石といえる手法だ。実行に移されれば、いよいよヨドバシ主導が鮮明になる。また、気になるのは「1階などに家電量販店を出店」という見通しである。百貨店では上層部の1〜2フロアに家電量販店がテナントとして入ることは、現在では特段珍しいことではない。ただ、家電量販店が百貨店の顔である1階に入るとなると話は別だ。

 西武池袋本店は山手線に沿って長細い形をしているが、1階フロアには「ルイ・ヴィトン」「エルメス」「ロエベ」といったラグジュアリーブランドと化粧品の売り場が入る。長期低迷が続く百貨店において、ラグジュアリーブランドと化粧品は貴重な成長領域であり、特にラグジュアリーブランドは高単価で収益性が高い。1階の一等地を家電専門店に譲ることは、従来の常識では考えにくい。売上高が落ちているにもかかわらず、4フロア前後を占めている衣料品売り場などを集約して、ヨドバシカメラを入れるのが妥当だと思われる。

百貨店のブランド力を生かした再建

 大都市の百貨店は、成長領域であるラグジュアリーブランド、時計・宝飾品、アートといった高額品に経営資源を集めている。三越伊勢丹、大丸松坂屋百貨店、高島屋、阪急阪神百貨店も大都市の基幹店は、これまで以上に高額品の拡充に乗り出す。所得の2極化が、コロナを機にさらに顕著になったからだ。「ユニクロ」「ザラ」「無印良品」「ニトリ」「西松屋」といったカテゴリーキラー、あるいはショッピングセンター、ECモールと競合しない高額品こそが百貨店の強みを生かせる分野として認識されるようになった。

 コロナ前からラグジュアリーブランドや時計・宝飾品売り場の増床を進めてきた伊勢丹新宿本店は、22年4〜9月期の売上高が統合後最高を記録した(2008年に三越と伊勢丹が経営統合して以降の最高売上高)。中華圏の訪日客が戻り切っていないにもかからず達成した最高売上高は、国内の富裕層の購買力をあらためて印象付けた。そごう・西武も環境は同じだ。百貨店各社は、富裕層を対象にした外商事業の再強化にしのぎを削っている。

 西武池袋本店も豊島区や西武沿線を中心に、ロイヤリティの高い上顧客を大勢持っている。同社が長年かけて築き上げた最大の財産と言ってよい。ヨドバシ主導の再建イメージが前面に出過ぎると、こうした百貨店ならではの強みが削がれる懸念がある。読売新聞が報じたように「百貨店全体をヨドバシが運営する可能性がある」とすれば、「のれん」のイメージを守れるかが大きな鍵になるだろう。

 ヨドバシHDは11日にリリースを発表した。「不動産、事業再生等に関する豊富な経験を有するフォートレスと協力し、そごう・西武の百貨店と連携した新たな店舗の出店をはじめ、最先端の情報システム活用や、豊富な品揃え等により、お客様のご期待にお応えするよう、より一層、価値ある店づくりに努めてまいります」とコメントしている。ヨドバシといえば、小売業の自社ECとして屈指の成功事例といわれるヨドバシドットコムがある。家電だけでなく食品、書籍などを最短で即日配送する物流システムを持っている。そごう・西武とのECとの連携も注目されるところだ。

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