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トム・クルーズ主演最新作「トップガン マーヴェリック」の舞台裏 キャスト陣の入れ替えに賛否両論

※本記事は一部ネタバレを含みますので、未鑑賞の方はご注意ください

 映画やドラマなどのエンタメを通して、ファッションやビューティ、社会問題などを読み解く連載企画「エンタメで読み解くトレンドナビ」。LA在住の映画ジャーナリストである猿渡由紀が、話題作にまつわる裏話や作品に込められたメッセージを独自の視点で深掘りしていく。

 第5回は、1986年に一世風靡した映画「トップガン(Top Gun)」の続編「トップガン マーヴェリック(Top Gun: Maverick)」について。トム・クルーズ(Tom Cruise)主演のヒット作が36年ぶりに復活した理由や、新キャストを迎えた製作秘話などに迫る。

クルーズの呼びかけで再始動

 全世界を沸かせて、36年。「トップガン」の続編「トップガン マーヴェリック」が5月27日についに公開された。

 映画が一つ成功したら、すぐに続編の企画が立てられるのはハリウッドの常識。だがこの映画は、さまざまな理由のせいで、実現にはとても長い時間がかかった。プロデューサーのジェリー・ブラッカイマー(Jerry Bruckheimer)によると、スタートに時間がかかったのは、キャストのほとんどが売れっ子だったから。「トップガン」で世界的スターとなったトム・クルーズには次々とすばらしい映画のオファーが来たし、1作目で監督を務めたトニー・スコット(Tony Scott)も同様。ブラッカイマーも同作を手掛けた後、「バッドボーイズ(Bad Boys)」「ザ・ロック(The Rock)」「コン・エアー(Con Air)」「アルマゲドン(Armageddon)」「パール・ハーバー(Pearl Harbor)」「パイレーツ・オブ・カリビアン(Pirates of the Caribbean)」などの大ヒット映画を世に送り出していった。

 ようやく続編について話し合おうということになったのは、2010年のこと。クルーズの呼びかけで、彼ら3人は、あらためて「トップガン」を見直し、新たなストーリーを考え始めた。しかし12年、スコットは自ら命を絶ってしまう。その後も、ブラッカイマーは、脚本家を雇い、製作準備を進めていったが、映画監督のジョセフ・コシンスキー(Joseph Kosinski)に相談を持ちかけたことで一気に弾みがついた。クルーズと「オブリビオン(Oblivion)」でタッグを組んだコシンスキーにブラッカイマーが脚本を見せ、「何か意見はあるか」と聞くと、彼はまったく新しいアプローチを提案してきたのだ。グースの息子を出すというアイデアである。

 アンソニー・エドワーズ(Anthony Edwards)が演じたグースは、クルーズ演じる主人公マーヴェリックの親友。彼には愛する妻と幼い息子がいる。だが、1作目の最後で、彼は事故死してしまった。今やその息子が大人になり、父と同じ道を選んで、マーヴェリックに指導されることになるというのが、続編のストーリーだ。「そうすることで感情面が高まると思った」とコシンスキーは語っている。

 もうひとつ感情を高めるのは、1作目でマーヴェリックのライバル的存在だったアイスマンを再び登場させること。これはクルーズが強く望んだことだったそうだ。アイスマンを演じたヴァル・キルマー(Val Kilmer)は喉のガンと闘っているため、普通にしゃべったり、食事したりすることが難しい。それでもキルマー自身も出演を希望し、時間は短いが、とても感動的な再会のシーンが実現することになった。

ハリウッドが目指す“多様化”

 一方で、1作目でマーヴェリックの恋人役を務めたケリー・マクギリス(Kelly McGillis)や、グースの妻を演じたメグ・ライアン(Meg Ryan)は登場しない。彼女らには声もかからなかったと分かると、一部では女性差別なのではないかとの声も上がっている。マクギリスは現在64歳、ライアンは60歳。ハリウッドは昔から一定の年齢を越えた女性を冷たく扱ってきた。今作には、マーヴェリックの恋人として、51歳のジェニファー・コネリー(Jennifer Connelly)が新登場する。59歳のクルーズと不自然なほど歳が離れ過ぎていないが、彼よりは若い。だがコシンスキーは、「後ろばかりを振り返るのではなく、新しいキャラクターも出していきたかったから」とマクギリスとライアンを出さなかった理由を語っている。

 ハリウッドでは、男優はいくつになってもトップスターの座を守り続けることができる。ハリソン・フォード(Harrison Ford)は79歳にしてまだ次の「インディ・ジョーンズ(Indiana Jones)」に主演する。アーノルド・シュワルツネッガー(Arnold Schwarzenegger)は74歳であり、67歳のブルース・ウィリス(Bruce Willis)も、病気を理由に最近引退を発表するまで映画を作り続けていた。

 だが女性だとそうはいかない。ハリウッドでは、かつて「40歳になったら女優は終わり」と言われ、実際その年齢になると、人気だった女優をスクリーン上で見ることは減っていった。ライアンは、とりわけ典型的な例と言えるだろう。ハリウッド映画の主役はたいてい男性で、そのお相手に若い女優を望むのだから、考えてみればそれは当然である。

 しかし、そんな中でも、最近は少し良い兆候が見えつつある。4月公開の「マリー・ミー(Marry Me)」で、52歳のジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)の婚約者を演じたマルーマ(Maluma)の実年齢は28歳だ。また、6月日本公開の「ザ・ロストシティ(The Lost City)」の主演は57歳のサンドラ・ブロック(Sandra Bullock)だが、お相手役のチャニング・テイタム(Channing Tatum)は42歳。つまり、ひとまわり以上若いのだ。

 トップ女優の座を守り続けてきたブロックは、2009年の「あなたは私の婿になる」でも、現在45歳のライアン・レイノルズ(Ryan Reynolds)を恋のお相手にしていた。それから13年が経つ今も彼女は同じことができている。それはきわめて異例だ。だが、ブロックやロペスだけが特別であってはいけないのである。男たちは、そんなに特別ではなくても、ずっとそれをやってきているのだから。50代や60代の女性が、同年齢かそれより下の男性と恋をする状況が、同じくらい普通にならなくてはいけない。ハリウッドが目指す“多様化”には、その部分も加えられるべきなのである。

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