
百貨店からショッピングセンター、個店、ECまで、さまざまなショップを覆面調査員がリポートする連載「ミステリーショッパーが行く!」。今回は伊勢丹新宿本店本館2〜3階婦人服を調査。2020年夏に自主編集売り場「リ・スタイル」をリニューアルしたほか、コロナを機にスタッフのSNS強化やDXも推進。ポップカルチャーやフェムテックなど、スタッフ発案の新規イベントにも積極的で、顧客を楽しませている。ウィズ・コロナ時代の同店の評価は?(この記事はWWDジャパン2021年12月20・27日号からの抜粋です)
■今回の担当調査員
加賀美勉(55)
PROFILE:百貨店やコンサルティング会社を経て、現在は商業関連メーカーで販促プロモーションの開発にいそしむ。自称“プロの消費者”として百貨店をウオッチし続ける。革靴とワインを語り始めると止まらない。調査歴17年
高瀬浩子(45)
PROFILE:百貨店でインポートブランドの販売、広報を経験後、インテリアパーツの輸入・販売代理店に勤務。出産を経験し、今は実務翻訳家として活動。買い物は、マッサージを超えた究極の癒し!と公言。調査歴17年
調査日時:加賀美調査員2021年12月9日(木)15:00〜 晴れ 14℃、高瀬調査員2021年12月11日(土)14:00~ 晴れ 13℃
ILUUSTRATION:ERI KOJIMA
【環境・施設】
加賀美:フロアガイドがなくなりました。壁のフロアマップからQRコードを読み取り、スマホでチェックするシステムです。
高瀬:紙媒体の配布をやめたそうですが、フロアガイドは手元に欲しいな。
加賀美:僕は時代に合った方向転換だと思いました。内装は、天井からブロンズのポールが突き出たスペースなど、凝った演出で客を楽しませます。
高瀬:気になったのは、レストスペースの少なさ。エレベーター前に椅子が並べてありましたが、ゆったりくつろげる雰囲気ではありません。
加賀美:高効率な店舗なのでレストスペースの確保が難しいのでしょうね。それでも、例えばデザイン性の高いファニチャーを置くなど、高級感のある伊勢丹のムードは徹底してほしいです。
【MD】
加賀美:自主編集売り場「リ・スタイル」を中心に、コロナ前よりも話題のブランドが増えた気がします。女性の冷えや子宮に優しいグッズ、人工ダイヤモンドなど、作り込まれた期間限定ショップも多かった。店全体でライフスタイルを提案していて、ポップを見るだけでも楽しかった。
高瀬:2階「ザ・ステージ」では、“ファイナルファンタジー”のグッズを扱っていました。大きなイラストやキャラクターの衣装・武器の展示など、知らない人でも楽しめます。
加賀美:広くないフロアですが、「セリーヌ」「ジル サンダー」「アクネ ステュディオズ」「マルニ」などの海外デザイナーズから、「オーラリー」「マメ」「クラネ」などの国内ブランド、百貨店らしい大きいサイズや小さいサイズまでそろいます。
高瀬:シーズンを象徴するアイテムが積極的に置かれていて、各ブランドの個性が際立っていました。
【接客・サービス】
高瀬:今年行った商業施設で一番混雑していました。フロアに人が密集するタイミングもあり、交通整理が必要かもしれません。とはいえ、リアル店舗に活気が戻っているのはうれしかった。
加賀美:楽しそうに笑い声が聞こえたり、食べ物の話で盛り上がっていたりと、顧客との距離の近さが伺えました。
高瀬:「クラネ」でスカートを見ていると、「かわいいですよね。今、私もはいてるんです」とアプローチされました。ワンピースを試着したときには、「お客さまの髪色だと、色違いのほうがいいかもしれないですね」とアドバイスをしてくれたり、アウターとの合わせや1枚で着るときのアクセサリーを提案してくれたりと、具体的な説明がとても参考になりました。
加賀美:私は母へのクリスマスプレゼントを探し、いくつかの店に入りました。3階「マルニ」では、予算に合う商品を複数ピックアップし、「年配の方も購入されています。お友達の間でかわいいと評判になると思いますよ」と背中を押してくれました。
高瀬:男性としては、リードしてくれる接客が心強いですよね。少し残念だったのは、フロア案内です。フォーマルドレスの売り場をいくつかのエリアで聞いてみると、どこも即答はできず、確認してからの案内や自信なさげな対応でした。
加賀美:主要なエリアは頭に入っていると良いですね。
【総合】
高瀬:質・デザイン共にレベルの高いアイテムが詰まったぜいたくな空間。時流に合わせて進化していました。
加賀美:イベントやポップアップストアのおかげで、何度来ても楽しそう。販売員のスキルも高く、安心してショッピングができます。
【合計得点】
