ファッション

ヴァージル最後の「ルイ・ヴィトン」は“純粋な少年の視点で見た世界”

「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は1月20日、故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)=メンズ アーティスティック・ディレクターが生前に95%完成させていたという2022-23年秋冬メンズ・コレクションを発表した。パリ3区にあるかつて屋内市場だったカロー・デュ・トンプルを会場に、プレスやインフルエンサー向けとファミリー&フレンズ向けに分けて2回ショーを開催。ヴァージルの妻シャノン・アブロー(Shannon Abloh)や、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)=LVMH会長兼最高経営責任者、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)「ルイ・ヴィトン」ウィメンズ アーティスティック・ディレクター、ナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)をはじめ、合計700人ほど(推定)の観客が、ヴァージルが世界に遺した最後のクリエイションを見届けた。

少年の感性で世界を見たなら

今季のタイトルは、「Louis Dreamhouse(ルイの夢のような家)」。会場のエントランスを入ると、スカイブルーで彩られた空間が広がり、中央には煙突から煙が上る家の赤い屋根が飛び出している。その左右には、オーケストラが座る長い食卓のあるダイニングと、巨大なベッドが置かれた寝室。そして、角には階段と大きな扉も。ヴァージルと親交のあったミュージシャンのタイラー・ザ・クリエーター(Tyler, The Creator)が制作した楽曲の生演奏と共にショーがスタートすると、モデルのウォーキングと共にダンサーがしなやかな体でアクロバティックに舞い、壮大なシアターパフォーマンスのような世界観に一気に引き込まれる。

ヴァージルが今季取り入れたのは、“Boyhood Ideology®(ボーイフッド・イデオロギー®)”。社会の先入観や偏見の影響をまだ受けていない、純粋な少年の感性で世界を見るという考え方で、21年12月にマイアミで発表したショーにも通じるテーマだ。その視点には想像と現実を隔てる壁はなく、どんなことも叶う。これまでもさまざまな境界を飛び越え、業界の”常識”を変革してきたヴァージルは、ハイ/ローやマスキュリン/フェミニン、テーラリング/スポーツ/ドレスなどを、ルールに縛られることなく自由にミックスした。

ファーストルックは、ヴァージルが現職就任以降注力していたテーラードスーツ。かっちりとした肩と対象的に腰を絞ったジャケットに、スキニーシルエットのパンツ、ヒールブーツを合わせ、エレガントな雰囲気を醸し出す。そこからは端正なテーラリングにバギージーンズを合わせたり、魔法使いなどのオリジナルグラフィックのプリントTシャツのパッチワークを加えたり。テクニカルナイロンのスポーツユニフォームもパッチワークの手法でスカートに仕上げ、アウトドアパーカやワークウエアはベルベットやサテンでぜいたくにアップデート。ペンキの缶や花のブーケを模したバッグが、ユーモアを加える。

もう一つ特徴的なのは、昔の家の調度品にあったようなタペストリーや絵画のモチーフ。写実派のギュスターヴ・クールベ(Gustave Courbet)による「The Painter's Studio」(1855年作)と、初期のシュールレアリストであるジョルジョ・デ・キリコ(Giorgio de Chirico)による「Souvenir d’Italie」(1914年作)という2つの作品が、織りやプリントでトレンチコートやカーゴパンツ、テーラリングなどに落とし込まれた。また、19世紀に制作された花のゴブラン織はモノグラムモチーフとミックス。そこには、古いものの価値を保つと同時に、新たな価値で活性化させて革新する“Maintainamorphosis®(メインテナモルフォーゼス®)”という考えが反映されている。

天使が舞い降りた終盤

終盤には、凧のような骨組みとレースで作られた翼を背負う真っ白な天使のようなルックが舞い降りた。そしてフィナーレに四方から再び登場したモデルは皆、空を見上げながらゆっくりと歩き回る。その姿は、どこかから見守っているであろうヴァージルを探すかのようにも見える。タイラーの楽曲「SEE YOU AGAIN」が流れる中で迎えたクライマックスには、デザインチームが招待状にも使われた夕焼けのようなグラデーションのTシャツを着て登場。モデルや仲間とショーの成功を称え合い、ハグする姿には心を打たれた。深い悲しみの中、ヴァージルの意志を受け継いでショーをやり遂げたチームに、そして彼が見せてくれた大きな夢に、会場からスタンディングオベーションが贈られた。

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