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“午後の紅茶”ならぬ午後のカクテル“アフタヌーンバー”に注目 ウィズコロナで進化する幸せ産業

 緊急事態宣言が解除されてもなお、感染拡大への不安は募り、積極的に夜の街へ繰り出そうという気持ちにはまだなれない。皆で集うのは楽しいけれど、なんとなく地元でなじみのある店を選んだり、10時過ぎにはおひらきになったりという優等生な日々。

 その分、この期間に覚えた“昼呑み”に味をしめ、スタートを早めるようになった。これは時間の融通が利く、フリーランスならではの役得。“午後の紅茶”ならぬ午後のカクテルもなかなか乙なものなのだ。日本一のハイボールでおなじみの銀座の名店「ロックフィッシュ(ROCK FISH)」でも、緊急事態下に「純喫茶かさご」として営業していたなごりで、ピザやサンドイッチなどのフードメニューがますます充実。週末だけでなく平日も14時半から営業開始し、宣言中に出していたノンアルコール“あのハイボール”も引き続き提供しているという。

時間やエリアをずらして、くつろぎを提供

 そして年末。バーの季節がやってきた。友と語らう機会も増えるこの時期、時間帯やエリアをずらして、ゆったりと過ごす“アフタヌーンバー”が今年は注目されそうだ。1年を振り返りながら、自分自身と向き合う時間をつくるのもいい。

 先日、そんな今のバー事情を反映するようなイベント取材があった。「東京カクテル7デイズ」という2017年から続く企画で、各バーが趣向を凝らしたオリジナルカクテルを1杯1100円(税込)で提供し、カクテルの奥深さを広める。1000円分の無料クーポン付きのパスポートを2420円(税込・前売価格)で購入し、それを手に、好きなとき、好きなタイミングで各バーを巡るというものだ。

 今まで7日間だった開催期間が、密を避けるために1カ月に延長。都心以外に吉祥寺や小岩などにもエリアは広がり、参加店舗は80軒以上となった。

 特筆すべきは、早い時間から営業を開始するバーが増えたこと。例えば、渋谷ファイヤー通りの「バー ロカイユ(Bar Rocaille)」や、荒木町の「バー アードロッサン(BAR ardrossan)」などは14時から、日比谷OKUROJIの「ミクソロジーヘリテージ(Mixology Heritage)」や、池袋駅前の「バー リブレ(Bar LIBRE)」は15時から営業している。いずれも夜のムード漂うオーセンティックなバーだ。コロナ禍を機に、週末は午後、早い時間から営業するバーも急増した。

 また、珈琲スタンドでもあり、珈琲のカクテルもある渋谷の「リキッド ファクトリー(LIQUID FACTORY)」はなんと平日朝9時から、週末も11時からオープンしている。ジェラート専門店でもあり、カクテルとのマリアージュも楽しめ、テラス席もある四谷の「ティグラート(TIGRATO)」など、カフェ気分で明るいうちから通いたくなるバーもある。14時からオープンしている日本初プロセッコ専門バー「マルティノッティ プロセッコ バー&カフェ(MARTINOTTI Prosecco Bar & Caffè)」など、夕暮れ前からカクテルを楽しめる名店も多い。

ラグジュアリーホテルのバーで心の旅を

 今年の東京カクテル7デイズは、「マンダリン オリエンタル 東京」「ザ・リッツ・カールトン東京」「ザ・ペニンシュラ東京」など、ラグジュアリーホテルのバーも多く参加した。「キンプトン 新宿東京」「アンダーズ 東京」「トランク ホテル」など、エッジィなホテルのラウンジも早い時間から営業しているので、敷居の高い洗練された空間も気軽に活用できそうだ。

 私ならば昼間のバーで読書を楽しみたい。カクテル片手に本を読むのに適した環境のラウンジも増えた。神谷町駅に直結したホテル「東京エディション 虎ノ門」内の「ロビー バー(Lobby Bar)」もそのひとつ。フロア全体が観葉植物に包まれ、陽当りがよい空中庭園のようだ。カクテルを片手に物語の世界に没頭する——なんてぜいたくなひとときだろう。日が暮れていくうちに目の前にせまる東京タワーがライトアップされ、現実に戻る。

 新宿のフルーツブランデー専門店「バー ビー&エフ(Bar B&F)」も大きな窓があり、読書や手紙を書くなど、一人の時間を豊かに過ごすのに適している。離れのような感覚で、集中したいときにこもる昼営業のバーを行きつけにすることも、この時期のぜいたくだろう。海外旅行に匹敵するような、心の旅だって可能だ。

 今や“バー=アルコール”という概念はなく、贅沢な時間を過ごすための空間となった。フォトジェニックなホテルのアフタヌーンティーの人気は相変わらずだが、芝浦の「メズム東京、オートグラフ コレクション」では、ノンアルコールのモクテルとのマリアージュをバー&ラウンジ「ウィスク(Whisk)」で提供している。芸術家のアトリエをコンセプトとしたこのバーでは、アフタヌーンコレクションと称してレオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)の「最後の晩餐」や、サルバドール・ダリ(Salvador Dali)の「記憶の固執」など、誰もが知る名画をモチーフとしている。この冬のテーマはマネ(Edouard Manet)の「笛を吹く少年」。コース仕立てのアフタヌーンティーは、マネが影響を受けたスペインのチュロスと日本の芋羊羹、甘酒のモクテルから始まる。メインの少年の衣装を模したフォトジェニックなケーキには、ホットワインをほうふつとさせる、スパイスを効かせた紅茶のモクテルを。いずれもアルコールこそ含まれていないが、複雑に重なり合う奥行きのある味や、アーティスティックな華やかさはカクテルならでは。そんな非日常的な高揚感を味わえるのが、バーでのアフタヌーンティーだ。

NoLo傾向の時代に対応したモクテルバーも

 そして驚いたのは、モクテル専門のバーの台頭。六本木にオープンした「0%」は、「エスジー クラブ(The SG Club)」の名バーテンダー後閑信吾氏が考案した、モクテルも提供するノンアルコールに特化したバーだ。ドリンクやフードもヴィーガン対応で、リラックス効果のあるCBDオイルを追加するなど、今の時代に即したノンアルコールドリンクを提供している。

 今年7月、日本橋から神田万世橋の高架下へ移転リニューアルした「ローノンバー(LOW-NON-BAR)」もユニークだ。モクテルと低アルコールドリンクの専門で、さまざまな自家製素材や発酵技術を駆使したローアルコールカクテルは絶妙。カクテルが持つ奥行きのある複雑さを表現している。「0%」と「ローノンバー」は、いずれも昼間から営業。世界的にもアルコールをあえて控えるNoLo傾向があり、日本でも今後広まるだろう。

 明るい時間からゆったり過ごせ、サードプレイスとなり得るアフタヌーンバー。呑兵衛にも、そうでもない層にとっても、バーとの向き合い方がこれからは進化しそうだ。

※各店舗の営業時間は、時期によって変更する場合があります。

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