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ウィズコロナで進化する幸せ産業 実況でやる気アップ!「ライブラン」アプリでランニングを習慣に

 ここ数週間で、SNSの話題は音声SNS「クラブハウス(CLUBHOUSE)」一色に。その爆発的な増殖は不気味なほどだった。いち早く使いこなしている友人たちによると「映画を流しながらああだこうだと話す」「推しについて語り尽くす」「ライブで試合を見ながら応援する」などの、共通のテーマがあると盛り上がるらしい。なるほど。音でゆるやかにつながる“部室”なのか、と納得した。

 そして音でつながる「部活」として定着しつつあるのが、ランナー向けのアプリ「ライブラン(LIVERUN)」だ。“ライブラントレーナー”なる語り手が、ラジオのDJのように実況中継し、盛り上げるというコンテンツ。「クラブハウス」と同様、ライブであり、その場でつながっている者だけが音を共有する点も似ている。

 といってもまったく想像がつかないだろう。クラスは内容によって15~40分のコマがあり、すべてがラジオ番組のようにリアルタイムだ。実際に30分のクラスを再現してみよう。開始直前にスマホからアプリを立ち上げ、GPSを作動させる。“語り手”によるランニングのアドバイスを聞きながら、各自ウオーミングアップ。スタート時間になると走り始めるのだが、その距離やスピード、順位などの記録はライブラントレーナーのいるスタジオに共有される。

 「神奈川県のゲキサカさん、今2キロ地点を通過しました。50m先を愛知県のゆうゆうさんがいいペースで走っています」というように、ライブラントレーナーがニックネームを読み上げて実況中継してくれる。何度か参加すると同じくらいのペースで走るランナーも見つかるので、励みになるだろう。

 さらに、「20分が経過して、疲れてフォームが崩れがちなので、肩甲骨を意識しましょう」などのアドバイスもくれる。映画、ビジネス、美肌、俳句(!)などのテーマもあり、いろいろな情報を聞きながら走れるので飽きない。スタート前に「憧れのヒーローである映画のキャラクターは?」「あなたの日焼け対策は?」「うれしかった上司からの励ましの言葉は?」などの質問に答えると、ラジオのハガキのように読み上げられたりもする。一方的ではなく、互いに交流できる一体感があるのだ。
画面上では常に距離やペースが表示され、ゴール後は走った順位も共有される。参加した回数や合計距離、自己ベストなども記録されるので、練習日誌のように活用している人も多いだろう。参加者の中からトータル距離のTOP3が毎月発表されたり、一定の距離以上を走った人には抽選で賞品が贈られたりするなど“ご褒美”もある。

 ゲストも豪華だ。「GOGO2021」は瀬古利彦さんとその仲間による週末のランニングイベント。有森裕子さんや高橋尚子さんをはじめとするオリンピックメダリストや、箱根駅伝の名選手、数々のレースを実況してきたアナウンサーやジャーナリストが登場。私が参加したときは渡辺康幸=元早稲田大学駅伝監督が箱根駅伝さながらの実況をして、参加者からの質問に答え、テレビでは語らない裏話を語っていた。その回では瀬古さん自らがランナーとして参加し、他のランナーと競り合っていた。有名人と気軽にコミュニケーションできるのもオンラインならではだろう。

 アプリのダウンロードは無料で、ほとんどのコマが無料だが、一部メンバー限定のクラスも。メンバーは月1000円で無制限にレッスンを受けられる。

 このコンテンツを運営するのは、コンサルタントやエンジニア、ホテル業界や自動車業界、美容業界などランニングとは無縁のバックグラウンドをもつ人ばかり。海外でビジネスマンとして活躍するなど、国際的な感覚を身に付けたライブラントレーナーも多い。トレーナーの経歴も陸上競技だけでなく、ヨガ、サーフィン、格闘技など、違うジャンルを専門とする人がむしろ多数派。視覚に頼らず、声だけで導くブラインドヨガや筋トレなど、ランニング以外のクラスも充実している。

 ライブランのミッションは「100歳になってもアクティブライフを楽しむのが当たり前の世界」へと導くこと。米ハーバード大学によると、定期的に運動する人が25%増えると、心臓病患者にかかる医療費だけでも年間580億ドル(約6兆円)の削減につながるという研究データもあるという。運動することが経済の貢献にもつながるのだ。「運動することが楽しかったら、自然と継続でき、習慣となります。ランニングやウオーキングを日常生活に取り入れると世の中はよりよくなる。1%でも多くの人の健康寿命を伸ばすサポートをしたい」と、TOMOこと高田智之代表は語る。2017年に設立した運営会社ライブランは、現在166人の投資家の賛同を得て、約2700万円の資金が調達された。

 音でつながり、離れていても共に走る感覚を共有できる「ライブラン」。最近ではウオーキングで参加する人も多く、参加者層が広がっている。リアルなイベントになかなか参加できない今、楽しむことで運動を習慣化し、ゆるやかにつながる仲間とモチベーションを高め合うツールは世の中を変えそうだ。

間庭典子(まにわ・のりこ)/フリーライター:婦人画報社(現ハースト婦人画報社)を退社後、ニューヨークへ渡る。現在は東京を拠点に各メディアに旅、グルメ、インテリア、ウエルネスなど幅広いテーマで執筆。著書に「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」「走れば人生見えてくる」(共に講談社)など

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