ファッション

“心の支えになるようなファッションを” 「トゥ エ モン トレゾア」がジーンズに特化した思い

 東京発のウィメンズブランド「トゥ エ モン トレゾア(TU ES MON TRESOR 以下、トレゾア)」は2020年、ブランド設立10周年を経て、ジーンズに特化したブランドへとリブランディングした。これまでも「トレゾア」はパールやビジューを装飾したジーンズがアイコンで、国内外で支持されてきたが、今回のリブランディングでは、着心地のよさと体が美しく見えるシルエットを追求したデザインに一新。エメラルドやアメジストなどの宝石の名前を付けた13型をそろえている。定番として長くはき続けられるようシーズンの概念をなくし、セールも行わない方針。“女性のためのセーフプレイスを作りたい“というデザイナーの佐原愛美の思いのもと、子どもや女性の人身売買をなくすために活動するNPO法人「かものはしプロジェクト」との取り組みを開始し、売り上げの一部を寄付する。

 昨年9月には、英セレクトEC「マッチズ ファッション(MATCHES FASHION)」でリブランディング後の商品をエクスクルーシブで発売し、日本では今夏、ビオトープを皮切りにエストネーション、APストゥディオ、伊勢丹新宿本店リ・スタイルで取り扱う。7月16日~8月2日まではエストネーション六本木ヒルズ店にポップアップストアをオープン。佐原デザイナーにリブランディングを行った経緯や、デニム作りのこだわり、ファッションから考える社会的問題について語ってもらった。

WWDJAPAN(以下、WWD):リブランディングを行った理由は?

佐原愛美「トゥ エ モン トレゾア」デザイナー(以下、佐原):デビューした10年前はマイペースにジーンズを中心にした定番商品を販売していましたが、2016年に海外ショールームのトゥモロー※と契約したのをきっかけに年4回のコレクションを発表するレディ・トゥ・ウエア(プレタ・ポルテ)に切り替えました。シーズンごとにその時代のメッセージを発信できることに意義を感じていましたが、大量生産、大量消費のモノ作りには矛盾もある。シーズンの考え方やセールを無くしたいとリブランディングを決めました。

※トゥモローはミラノを拠点にする有名なファッションのセールスエージェンシー。ロンドンや香港などにもオフィスを構える

WWD:アイテムをジーンズに絞った理由は?

佐原:これまでアイコンだった「トレゾア」のジーンズは、無骨で荒っぽい1940年代のビンテージジーンズの形をもとに、パールやビジューなどデコラティブな刺しゅうをすることで、“男性的なアイテムを女性の視点で作り替えて“いたもの。でも、この10年で“男性が力強く、女性がかわいらしい“というイメージは薄れてきました。これまで培ってきた経験を生かして、女性の体やライフスタイルに寄り添うデザインを提案できれば、刺しゅうがなくてもフェミニンなジーンズが作れるのではと考えました。

宝石のように長く大事に
受け継がれるように

WWD:新たなジーンズのこだわりは?

佐原:もともとジーンズは炭鉱夫のために作られたもの。機能的な美しさがありますが、仕様は男性的なシルエットで作られています。「トレゾア」では女性の自然な体の形に沿うような形を目指し、異なる女性たちの体型に寄り添えるように13型を作りました。それぞれのジーンズには宝石の名前を付けています。宝石が長く大事に受け継がれるものであることと、ブランド名がフランス語で“あなたは私の宝物“という意味であることにちなんでいて。ストレートのボーイフレンドデニム“ジ・エメラルド ジーン“をはじめ、フレアデニムの“ジ・アメジスト ジーン“、スキニーフィットの“ザ・ルビー ジーン“などがあります。今年新たに追加したリラックスフィットの“ザ・ラピスラズリ ジーン“などの4型にはオーガニックコットンを採用しました。ボタンホールと内側のステッチは、色を宝石の色に合わせているほか、ボタンとリベットも新しくオリジナルで作り変えました。

WWD:セールを行わないなど、販売方針も変化がある。

佐原:定番ものをセールなしで販売してもらうためには、お店と関係性を築いて、理解をしてもらうのが大事になります。まずはチーム作りからスタートしました。セールスはショールームではなく、グローバルで個人で優秀な方にお願いできることになり、しっかりと販売方針を話し合いました。セールをしないといっても美しくて、素敵な商品ではないと話にならないので、品質もデザインに時間や労力をかけて、何年経っても着ていたいと思えるモノづくりを意識しました。今後もたくさんのお店に扱ってもらうというアプローチではなく、限られたお店と密に連携して販売していきたいと思っています。

心の支えになってくれるような
“女性を安心させてくれる服”

WWD:“女性のためのセーフプレイスを作りたい“というコンセプトを掲げているが、その思いとは?

佐原:私も多かれ少なかれ、若いころから“女性だから“という理由で辛い経験をしたことがあります。その時にファッションの世界に浸ることで癒されたり、励まされたりと、ファッションが安心できる場所(セーフプレイス)になっていました。女性の市場が大きいファッション業界には、心の支えになってくれて、女性を安心させてくれる服がある。私はそのような服を作りたいと思っています。また、今回取り組みを開始したNPO団体「かものはしプロジェクト」は商業的性的搾取による人身売買を無くすために活動している本当の“セーフプレイス“を生み出すプロジェクト。人身売買や性犯罪は暗い話ですが、ブランドを継続していく中で、そういったことを少しでも多くの人に知ってもらうきっかけ作りをしたい。私は学生の頃からボランティアに参加して、個人的に数々のチャリティ団体と取り組んできましたが、一般の方たちが信頼できる団体を探すことは容易ではないと感じていました。この「かものはしプロジェクト」は私個人もサポートを続け、「トレゾア」のお客さまも安心して支援できる団体。02年にカンボジアでスタートし、現在は問題の根が深いインドでの子どもたちの人身売買問題に着手し、日本国内での活動もはじめています。ブランドをリブランディングしたことで、より社会的な問題とファッションを結びつけることができるようになったと思います。(※トレゾアはこれまでも社会問題を裏テーマにしたコレクションを発表してきた)

WWD:環境問題に関する考えは?

佐原:モノを作る責任を持ち、できることからやっていきたいと思っています。3割のデニムは、オーガニック繊維の認証であるGOTS認証のオーガニックコットンを使っています。実際に現地に行って確かめていないので、信頼できるのか断言することは難しいですが、コットンには農薬のこと、強制労働の人権問題などさまざまな課題がある中で関心が高まることで、少しずつコットン生産地の環境を変えていけるはずだと思います。

■Tu es mon Tresor POP UP STORE AT ESTNATION
会期:7月16日~8月2日
場所:エストネーション 六本木ヒルズ店
住所:東京都港区六本木6-10-2

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