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「カルティエ」親会社のリシュモン、第4四半期はコロナ禍前を上回りV字回復

 コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)の2021年3月通期決算は、売上高が前期比7.6%減の131億4400万ユーロ(約1兆7481億円)、営業利益は同2.6%減の14億7800万ユーロ(約1965億円)、純利益は同38.4%増の12億8900万ユーロ(約1714億円)だった。純利益の大幅増は、主に為替差損益や有価証券の公正価格の変動によるもの。新型コロナウイルスの影響で通期は減収となったが、ジュエリーや中国市場、ECビジネスが売り上げをけん引して業績は下期(20年10月〜)からV字復調を成し遂げた。

 通期の地域別の売上高では、ヨーロッパが同31.2%減の29億5500万ユーロ(約3930億円)、南北アメリカは同14.9%減の23億8800万ユーロ(約3176億円)、日本を除くアジア太平洋地域は同18.9%増の59億3700万ユーロ(約7896億円)、日本は同22.4%減の9億2400万ユーロ(約1228億円)だった。

 部門別の売上高では、「カルティエ(CARTIER)」や「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」が好調なジュエリー部門が同3.3%増の74億5900万ユーロ(約9920億円)だった。一方、ウオッチ部門は同21.4%減の22億4700万ユーロ(約2988億円)と落ち込んだ。

 販売チャネル別で見ると、小売りは同1.2%減の72億4800万ユーロ(約9639億円)だった。これには為替の影響もあり、現地通貨ベースでは同2%増となっている。卸はコロナ禍による百貨店や免税店の休業が響き、同27.0%減の31億200万ユーロ(約4125億円)だった。ECは好調で、同5.5%増の27億9400万ユーロ(約3716億円)となり、売り上げ全体の21%を占めている。

 四半期ベースの売上高では、21年1~3月期(第4四半期)は中国本土の売り上げが3ケタ成長となったことが寄与し、前年同期比29.6%増の34億8000万ユーロ(約4628億円)と大幅に回復。コロナ禍以前の19年同期比でも6.5%増となっており、成長軌道に戻ったと言えるだろう。

 ヨハン・ルパート(Johann Rupert)会長は、「コロナ禍の影響で上期は大幅な減収となったものの、中国本土を中心としたアジア地域やジュエリー部門が売り上げをけん引し、下期には業績が回復した。上り調子で新年度を迎えることができたが、ワクチン接種による集団免疫効果が表れるまでは不確定要素が多く、先行きの不透明感は続くだろう。引き続き従業員、取引先、資産の安全を優先しつつ、物事に柔軟に対応できるように準備しておきたい。事業のデジタル化や顧客中心主義をいっそう推し進めていく」と語った。

 同氏はまた、「戦略的パートナーシップについても継続的に検討している」と述べたが、一部で流れていた事業売却の噂については「リシュモンは独立企業であり続ける」とし、完全に否定した。

 リシュモンは、4月24日に死去したデザイナーのアルベール・エルバス(Alber Elbaz)氏の新ブランド「AZファクトリー(AZ FACTORY)」を担うベンチャー事業のパートナーでもある。同ブランドはデビューコレクションを1月に発表したばかりだった。ルパート会長は、「アルベールはとても繊細で優しく、才能とクリエイティビティーにあふれた、ユーモアのある人だった。彼の夢だった“配慮のあるスマートファッション”は、インクルーシブ(包括的)かつポジティブで、革新的だった。幸運にも彼と知り合うことができた人々は、みんな彼の不在を寂しく思っている」と悼んだ。

 「AZファクトリー」の今後の事業展開については「協議中」としているが、まずはエルバス氏が生前に完成させた最後の作品群を発売する。同ブランドはコレクションベースではなく“プロジェクト”を中心とした新たなビジネスモデルを打ち出しており、今回発売するのは“スーパーテック スーパーシック(SuperTech-SuperChic)”プロジェクトの新作と、全く新たなプロジェクト“フリートゥ(Free To)”のもの。前者はエルバス氏の誕生日である6月12日に、後者はそれ以降の発売となる。これらに加えて、新たなカテゴリーとしてハンドバッグも発表する。また今秋に開催されるパリ・ファッション・ウイークの期間中に、エルバス氏を追悼するメモリアルイベントを行う予定だ。

 リシュモンといえば、20年11月にラグジュアリーEC大手ファーフェッチ(FARFETCH)および中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)とグローバルな戦略的パートナーシップ契約を締結して大きな話題となった。提携の一貫として、リシュモンは「カルティエ」「ヴァン クリーフ&アーペル」「IWC シャフハウゼン(IWC SCHAFFHAUSEN)」「ジャガー・ルクルト(JAEGER LECOULTRE)」「オフィチーネ パネライ(OFFICINE PANERAI」「ピアジェ(PIAGET)」「ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)」「クロエ(CHLOE)」などを含む11の傘下ブランドをアリババが運営する高級品に特化したEC「ラグジュアリー・パビリオン(LUXURY PAVILION)」に出店しており、これが売り上げに大きく貢献している。

 「カルティエ」は4月20日、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)およびプラダ グループ(PRADA GROUP)と共に、オーラ ブロックチェーン コンソーシアム(Aura Blockchain Consortium)を設立した。これは世界中のラグジュアリーブランドが共通のブロックチェーン上にデータを記録することで、顧客にいっそうの透明性や追跡性を提供することを目的としたもの。これによって消費者は原材料の調達から販売に至るまでの履歴や、商品の真正性(真贋)などを確認できるという。

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