ファッション

「インソール界の生き字引」こと杉山浩章シダスジャパン社長が語る“コロナ禍でも売り上げを伸ばせた理由”

 「シダス(SIDAS)」は、1975年にフランスで生まれたグローバルなインソール(中敷き)ブランド。スポーツ分野での実績と医療のバックボーンを生かし、快適さとパフォーマンス、トラブル予防を実現する足周りのプロダクトを研究し続けている。「日本に初上陸した89年から販売に携わり、以来約30年間、インソール一筋に人生をささげてきたのが杉山浩章シダスジャパン社長だ。日本におけるインソールの認知拡大に尽力し、最近ではコロナ禍においても売り上げを伸ばしている。ここでは“インソール界の生き字引”ともいえる同社長に、インソール周りのトレンドと業績好調の理由を聞いた。

インソールの効果を知る人が増加中

WWD:インソールの始まりは?

杉山浩章シダスジャパン社長(以下、杉山):スキーブーツを足にフィットさせるために柔らかいインナーブーツを履いていた時代、インナーブーツではカバーしきれない足裏にフィットさせるツールとしてカスタムインソールが生まれました。そのためインソールは「フットベッド」とも言われていました。「シダス」が生まれた1975年もそうした時代です。

WWD:どうやって一般に普及していった?

杉山:1975年はスキーブームが起きていて、当初インソールはスキー選手やコアなスキーヤーが使うフィッティングのスペシャル用品でした。そこから登山や自転車、ゴルフなどさまざまなスポーツに戦略的に広げていきましたね。当社は熱可塑性素材(60~70度で加熱すると柔らかくなり変形し、型をつけられる素材)を使ってカスタムしていたのですが、95年くらいから「はじめから形のついたものを売ってはどうか」という流れになり、成形品を販売するようになりました。そこから価格も下がって一気にフィールドが広がり、スポーツ量販店などで手軽に購入できるようになりました。

WWD:インソールを使うと変わる?

杉山:姿勢は嘘のように変わりますね。姿勢がよくなって「背が高くなった」という声をよくもらいます。上半身の歪みは下半身からくるので、足は重要なポイント。肩が痛いのも、実は足からきているというケースはよくあります。フランスだと“足病医”という足の医者がいて、足を怪我した人はそこでカスタムインソールを作るのが一般的なんです。

WWD:体の歪みにアプローチすること以外には?

杉山:足の故障の予防はもちろんですが、疲労疲労を回復させるために利用するスポーツ選手も多いですね。例えば“3D サンダル by シダス”(税込5390~9790円)という商品は、普段履きの靴に「シダス」のインソールを使用して常に体に気を遣っているアスリートから「リラックスタイムにも『シダス』の効果を実感できるサンダルが欲しい」という熱い要望があり生まれたサンダルです。確かにサンダルにインソールは入らないので、培ったインソールの技術をベースに開発しました。一般の人にも活用する人が増え、20年は前年比で60%増の出荷数(自社オンラインショップ販売数合算)でした。

WWD:コロナの影響は?

杉山:基本的な販売先はスポーツ量販店などの専門店だったため、コロナ自粛で店舗が休業して、EC強化が必要となりました。また、高機能インソールのベネフィットが認知されておらず、ポテンシャルユーザーがいるのにリーチしきれていなかったことも以前からの課題でした。そこで、イオンやマツモトキヨシのPBのブランディングに携わったブランドコンサルタント乙幡満男氏とリブランディングに取り組みました。ブランドの提供価値を再考、「足から動きが変わる」という新コピーを策定し、一般向けのエントリーモデルのインソールを“マクアケ”で発売するなど、新たな顧客獲得のためのチャレンジも実施しました。また、社員全員によるSNS発信や、インソール認知拡大のためのPRも強化しています。

WWD:コロナ禍での売り上げの変化は?

杉山:密にならない運動としてランニングをする人が増えたことで、売り上げは伸びています。これまで走ってこなかった人が急に走り始めると、思っている以上に足に負担がかかるんです。それでインソールを試した人から「膝裏や足裏が痛くならない」といったクチコミが広がり話題になりました。でも実は、ランニング用のインソールはもっと売れてもいいと思っていたんです。ところが、昨春はそれほど伸びなかった。調べてみると、マラソン大会や学生の部活が中止になってしまったから、という理由でした。逆にいえば、そういう活動をしている人が購入してくれていたんだと分かりましたね。夏くらいから部活が再開し始め、秋頃から売り上げが伸びてきました。

WWD:“室内履き”も人気と聞いた。

杉山:“インソールをシューズにする”という発想から生まれた“パルク”(税込1万1110円~)という商品が、リモートワーカーを中心に人気です。いわゆる室内履きで、「自宅でも仕事時間には靴を履いて切り替えたい」とか「自宅にいる時間が長くなると姿勢が悪くなるので、インソールで姿勢を正したい」などと考える人が購入してくれています。特に料理で立っている時間が長い人や、妊娠中で体重が重くなった人などに好評のほか、職場で履いている人も多く、アパレルショップのスタッフにも活用してもらっています。

WWD:最近のトピックスは?

杉山:インソールはパフォーマンスを上げたいダンサーも多く愛用してくれているので、最近発足したダンスのプロリーグ“Dリーグ”の盛り上がりに期待しています。また4月に、主力の“3Dシリーズ”(3000円台後半~5000円台)の一つ下の価格帯を狙った“マックスプロテクトシリーズ”(税込1980~2530円)を発売しました。高機能インソールを初めて使う人や、「シダス」が気になっていたけど価格で躊躇している人、スポーツやウォーキングを始めて足の痛みが気になる人におすすめのシリーズになっています。

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