ファッション

“文化の盗用”問題で、ファッション業界にできることは? メキシコ文化相が語る

 メキシコのアレハンドラ・フラウスト・ゲレロ(Alejandra Frausto Guerrero)文化相は、フェアチャイルド・メディア・グループ(FAIRCHILD MEDIA GROUP)が3月24日にオンラインで開催した「ダイバーシティー・フォーラム(Diversity Forum)」に登壇し、ファッション業界が先住民の文化を尊重する重要性について語った。

 同氏は、メキシコの先住民に特有の模様などをデザインに使用するのは“文化の盗用”だとして、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「キャロリーナ ヘレラ(CAROLINA HERRERA)」「イザベル マラン エトワール(ISABEL MARANT ETOILE)」などのブランドにそれを非難する書簡を送ったことでも知られている。

 メキシコはアステカ、マヤ、サポテカ文明などの豊かな文化遺産を有しているが、こうした文化や民族が過去のものだと誤解されている場合が多いという。同氏は、「メキシコには先住民の人々の子孫がおり、その文化は現代に脈々と受け継がれている。彼らのコミュニティーはクリエイティブ性が高いので、国際的なファッション市場に参入して経済的に発展できる可能性がある。しかし彼らの民族衣装などをインターネット上で見た人々は、それを自分のものとして勝手に流用してしまう」と説明。「ファッション業界における“文化の盗用”問題は、盗用された側とブランド側が協業する機会にもなり得るが、それはあくまでも盗用された側が了承した場合に限られる。これは尊厳の問題だ」と述べた。

 同氏はまた、「ファッション業界は、先住民の文化が持つ美しさやそれがいかに洗練されているかを理解することはできても、その衣装や模様の真の価値、すなわち文化的な背景や意味を理解していないのではないか」と話した。

 例えば、先住民族の衣装の一つであるウィピルは、主にチュニックやワンピース型をしており、刺しゅうで模様が施されている。この模様は民族や地域ごとに異なっていて、人々の間で大切に育まれてきた。同氏は、「物事の背景を知らずに、それを尊重することはできない。文化遺産は誰か一人のものではなく、コミュニティー全体に属するものだ」と述べた。

 また民族衣装や模様に基づいたデザインをした場合、それを“トリビュート”だと呼ぶだけでは十分でないと同氏は説いた。「トリビュートだというなら、その元になった相手を招くのが筋だと思う。そもそも、その対象となった民族やコミュニティーの了承を先に得るべきだ」と語った。

 メキシコには50以上の先住民族が住んでおり、伝統的な衣装や工芸品作りに携わる職人が数百万人いるといわれているが、貧困状態にあるケースも少なくない。こうした状況を踏まえて、同国では2021年中に職人らの作品を展示するファッションの見本市、オリジナルズ(Originals)を開催する予定だ。来場者として多数のブランドが招かれているが、ブランド側が提携する職人を選ぶのではなく、職人側がブランドを選べるようになってほしいと同氏は話した。「この見本市を機会に、さまざまな対話が生まれることを期待している。われわれは、(搾取されている)コミュニティーでよく掲げられているスローガンの一つ、“私たち抜きに、私たちのものを使うな(Nothing from us without us)”ということを推進したいと考えている」。

 メキシコ政府は国連およびユネスコと協力し、同国の職人などクリエイティブなコミュニティーの保護や育成に取り組んでいる。また、同国の工芸品などに対する集団的権利を与える法案を議会で審議中だという。

 ゲレロ文化相は、ゆっくりとではあるものの、“文化の盗用”問題についてファッション業界の意識の変化を感じると話した。最近では、「ナイキ(NIKE)」や「ルイ・ヴィトン」などのブランドから相談を受けたという。「『ナイキ』はメキシコ文化の要素をコレクションに使うことについて、『ルイ・ヴィトン』はウィピルについての問い合わせだった」と述べた。

 “文化の盗用”問題が起きないようにするため、ファッション業界にできることはあるのだろうか。同氏は、「デザインの元となった文化を作った民族の声に耳を傾け、理解を深めることが重要だ。豊かな歴史や文化を持ちながらも経済的な貧困状態にある地域について知り、彼らが望むのであれば、仕事や収入につながるように開発してほしい。民族衣装の裏にはそれを生み出した文化があり、コミュニティーがある。彼らと共に、未来を織ることを考えていきたい」と締めくくった。

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