2021-22年秋冬シーズンも海外有力百貨店やセレクトショップの買い付けは大半がデジタルで行われた。やはり対面で実際に触れて買い付けたいという願いは圧倒的だが、デザイナーのクリエイティビティーを生かした発表方法や取り組みを評価する声もあった。バイヤーたちの心を捉えたブランドを紹介する。(この記事はWWDジャパン2021年3月22日号からの抜粋です)
【ニューヨーク】
■ノードストローム(NORDSTROM)
サム・ロバン(Sam Lobban)=デザイナー&新コンセプト担当シニア・バイスプレジデント
良かったブランド:「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」「コリーナ ストラーダ(COLLINA STRADA)」「サンディー リアング(SANDY LIANG)」「4Sデザインズ(4S DESIGNS)」「トムボゴ(TOMBOGO)」
デザインからコレクションの発表方法まで、多彩なクリエイティビティーが光るシーズンだった。「プロエンザ スクーラー」のインパクトあるコレクションに引かれ、「サンディー リアング」の遊び心あふれるフェミニンなクリエイションも楽しんだ。「エンジアド ガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)」で経験を積んだアンジェロ・ウルティア(Angelo Urrutia)による「4Sデザインズ」は、彼の人生経験を注ぎ込んだデザインで、ニューヨークで特別な立ち位置を示している。実際に洋服を見る体験に代わるものはないが、デジタルを介してファッションとどのようにつながりを生むかについて多くの工夫が見られた。
■バーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)
リンダ・ファーゴ(Linda Fargo)=ファッションオフィス&ストアプレゼンテーション担当シニア・バイスプレジデント
良かったブランド:「スタジオ 189(STUDIO 189)」「ウラ ジョンソン(ULLA JOHNSON)」
ニューヨーク・ファッション・ウイークの状況は変わり、デザイナーたちはビジネスのあらゆる側面をリセットしている。その多くがプレ・フォールと秋冬を統合。季節に合った販売を強化し、デザインやエネルギーの切り替えをできるだけ抑え、より長い販売期間を確保することを目的としている。いずれも課題に対する賢明な対応だ。また、デジタルになったことで、これから成長していくブランドも多く見ることができたが、新規ブランドの買い付けの鍵となるアイテム自体の仕上がりが分からないのは難しいところ。
■マイテレサ(MYTHERESA)
ティファニー・スー(Tiffany Hsu)=ファッション・バイイング・ディレクター
良かったブランド:「ザ・ロウ(THE ROW)」「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」「ロダルテ(RODARTE)」
多くのデザイナーがデジタルフォーマットを駆使して、ワクワクする演出を考えて発表した。「ザ・ロウ」はいつもながら、アイテムそれぞれの仕立てに目を見張るものがあり、優しく包み込むようなシルエットが際立っていた。
【ロンドン】
■ブラウンズ(BROWNS)
ヘザー・グラムストン(Heather Gramston)=ウィメンズウエア部門長
良かったブランド:「エフティシア(EFTYCHIA)」「モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)」「ユハン ワン(YUHAN WANG)」「16アーリントン(16ARLINGTON)」
「16アーリントン」のコレクションは、マキシマリズムをベースに、フェザーを生かしたモノ作りが際立っていた。ブランドの根幹を大切にしながら、ドレスアップすることの楽しさを思い起こさせるものだった。「モリー ゴダート」もお出かけムード満点。チュールが印象的で、今季はニットのアンサンブルがマストハブ。今後もロンドンの若い才能を発掘し、育成していきたい。
■ハロッズ(HARRODS)
マリア・ミラノ(Maria Milano)=ウィメンズウエア部門長
良かったブランド:「エミリア ウィックステッド(EMILIA WICKSTEAD)」
2020年のレジャーウエアの流行とは対照的に、シックなレザーや大胆な色合わせが特徴の“セクシー”なテーラリングが多く見られた。「エミリア ウィックステッド」はクロップトップと洗練されたスカートの組み合わせや彫刻的なラインのジャケットなど、ロックダウン後の世界に向けたアイテムが勢ぞろい。「ロクサンダ(ROKSANDA)」が発表した映像作品は、私たちが生きているこのシュールな時代について、ノスタルジックで希望に満ちた視点をもたらしてくれた。
■リバティ(LIBERTY)
リンリ・テー(LinLi Teh)=ファッション・アクセサリー バイイング部門長
良かったブランド:「ロクサンダ」「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」「アーデム(ERDEM)」
派手なプリントや色は控えめで、全体的に落ち着いたムードが感じられた。その分、カラーブロック、さりげないディテールや輝き、露出、柄で長引く“冬眠”から目覚めさせるような表現が見られた。前シーズンと比べて、確実に変化が見られるのはスカートの丈。前向きなムードに合わせて、ミニスカートがカムバックした。
【ミラノ】
■サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)
ルーパル・パテル(Roopal Patel)=シニア・バイスプレジデント兼ファッション・ディレクター
良かったブランド:「フェンディ(FENDI)」「プラダ(PRADA)」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」
変わり続ける世の中において、未来のインスピレーション源となるラインアップだった。キム・ジョーンズによる期待の「フェンディ」はシックで洗練されており、秋冬に向けて取り入れやすい服がそろっている。幅広いデザインとクリエイティビティーの可能性を見せた。「プラダ」では、アイテムを通して着飾ることの楽しさを思い起こした。「ヴァレンティノ」は詩的で幻想的。
■リナシェンテ(LA RINASCENTE)
フェデリカ・モンテッリ(Federica Montelli)=ファッション部門長
良かったブランド:「プラダ」「マックスマーラ(MAX MARA)」「フェンディ」「ヴァレンティノ」「ブルマリン(BLUMARINE)」「スンネイ(SUNNEI)」「マルコ ランバルディ(MARCO RAMBALDI)」「スポーツマックス(SPORTMAX)」
黒を中心としたダークカラーも随所に見られるが、ポジティブな雰囲気とワクワクを演出する明るい色使いが目立った。ゴージャスなイブニングウエアもあり、外出して思う存分人と触れ合いたいという皆に共通する気持ちを代弁していた。普段使いのコートやスカートはスリムなシルエットが印象的で、短い丈のワンピースも再び人気に火がつきそう。メンズから続くテクスチャーへのフォーカスも見られた。
■ネッタポルテ(NET-A-PORTER)
リビー・ページ(Libby Page)=シニア・マーケット・エディター
良かったブランド:「プラダ」「フェンディ」「ヴァレンティノ」
「プラダ」は、大胆な色柄をふんだんに使って前向きな姿勢を表現しているところが良かった。レイヤードを巧みに生かしたユニホームスタイルが印象的だ。「フェンディ」はシックでユニホームを感じさせるニュートラルなカラーのアイテムに投資することで、仕事用のワードローブを見直すことができると期待。全体としては、ニットドレスやブーツに注目している。
【パリ】
■ブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE'S)
アリエル・シボーニ(Arielle Siboni)=ファッション・ディレクター
良かったブランド:「クロエ(CHLOE)」「ディオール(DIOR)」「アルチュザラ(ALTUZARRA)」「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」
パリコレは、臆することなく楽観的で色にあふれていた。デザイナーたちが、私たちはこれからどうなっていくのか、そしてロックダウン後にどのような服を着たいと思うかということについて多くの時間をかけて考えたのは明らか。ほとんどのショーにイブニングウエアが登場するなど、未来へのインスピレーションを与えるアイテムが盛りだくさんだった。
■ホルト・レンフルー(HOLT RENFREW)
ジョセフ・タン(Joseph Tang)=ファッション・ディレクター
良かったブランド:「ミュウミュウ(MIU MIU)」「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「クロエ」
「ミュウミュウ」の“冬の逃避行”は、厚手のニットウエアをエレガントなスリップドレスと合わせるなど、コロナ後のワードローブを見据えた。「ドリス ヴァン ノッテン」は、ボリュームのあるコートと輝くドレスを躍動感あふれるダンスを通して見せてくれた。ガブリエラ・ハーストによる「クロエ」のデビューは、サステナビリティを強調したコレクション。ファッション業界が向かうべき道を示しながら、その流れをけん引する姿勢は、新鮮でワクワクした。注目アイテムは、機能性の高いパファーやフェイクファーのジャケットやアウターウエア。ツイードやレザー、ニットを中心とした異素材ミックスのレイヤードスタイルも目立った。
■プランタン(PRINTEMPS)
ナタリー・ルーカス・ヴェルディエ(Nathalie Lucas Verdier)=ウィメンズウエア、アクセサリー、ラグジュアリー、シューズ担当ジェネラル・マーチャンダイズ・マネジャー
良かったブランド:「シャネル(CHANEL)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」「クレージュ(COURREGES)」
「シャネル」はシンプルさの中に、魅力が詰まっていた。ヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)は着やすくてセンシュアルなパーティー向けアイテムやイブニングウエアを披露。マシュー・ウィリアムズ(Matthew Williams)による「ジバンシィ」の初ショーでは、ストリートとラグジュアリーの巧みな融合が見られた。「クレージュ」もまた、ニコラス・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)による初めてのランウエイだったが、時代にとても合っていてクール。ミニマルかつエッジの効いたアプローチでブランドの姿勢を見事に表現していた。
■レーン・クロフォード(LANE CRAWFORD)
ミア・ヤン(Mia Young)=チーフ・マーチャント
良かったブランド:「ドリス ヴァン ノッテン」「セシル バンセン(CECILIE BAHNSEN)」「リック・オウエンス(RICK OWENS)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」
デジタル発表の方法もバリエーションが豊かで、パリ現地でショーを見たときのような感覚を味わうことができた。ベネチアのリド島をモデルが闊歩する「リック・オウエンス」や、パリのサンジェルマン・デプレを舞台にした「クロエ」は頭から離れなかった。