ビューティ

ルンルンが言語化できると「きれい」になれる!? 美容家 × 予防医学博士が考える「マインド・ビューティ」Vol.1

 なぜか(!?)仲良しの美容家と、予防医学を研究する医学博士と考える「マインド・ビューティ」の新連載をスタート!!「肌がキレイになると、心もウキウキ」や、「気持ちが沈んでいると、なんだか疲れているように」は、誰もが経験しているはず。果たして心と美の関係性は?初回は、美容家の深澤亜希に「マインド・ビューティ」に注目し始めた理由を聞きました。

WWD:深澤さんが「マインド・ビューティ」を提唱するようになったのは、いつ頃?そして今の段階では、「マインド・ビューティ」ってなんですか?

深澤亜希(以下、深澤):美容を始めた頃から、「マインドとビューティの関係は深いな」って思っていたんです。キレイになれば、心も晴れます。一方コンプレックスに悩んでいる人は、自分の外見上の違いを「欠点」と捉えがちですよね?ずっとそう考えていたけれど、マインドの話って、特に誌面では言葉にしづらかったんです。どうしても“スピリチュアル”と捉えられてしまうことが多くて……。でも私には、メイクのHow toも大事だけれど、“心持ち”も重要です。「きれい」という言葉の意味は広がっていて、最近は「幸福感」も「きれい」。15年前からずっと考えてきた、心と「きれい」の関係性、「マインド・ビューティ」への興味がますます増しています。

石川善樹(以下、石川):オウム真理教の事件以降、日本ではマインドの話が敬遠されがちでした。でも最近は、その存在を知らない世代も多い。そろそろ「マインド」という言葉も、スッと受け入れられる環境が整いつつある。

深澤:「マインド・ビューティ」を考える上では、「幸福感」と「自分を知る」こと、そして「継続する」ことの3つが大事だと思っています。最近、特に注目しているのは、「幸福感」。若い世代の「幸福感」は、私たち世代より低いと言われていて……。

ルンルンする?ルンルンしない?
理由を言語化すると「きれい」になる

石川:「幸福感」が強い人の方が長生きするのは、すでに知られた事実。人は、概念の世界で生きています。石の上のコケを見て「ほぅ」って思うのは、「侘び寂び」という概念があるから。その概念が無ければ、人は、石の上のコケなんか気にしないでしょう?概念は、それくらい重要なんです。そして概念や感情に関する言葉をたくさん知っている人は、自分の感情に向き合うときの解像度が増してくる。「マインドを磨く」は、「言葉を知る」ともいえます。「ととのう」という言葉が生まれたサウナに、人々は「ととのう」ことを求めて通うようになりました。言葉と体験、双方を知るのが大事です。

深澤:人は、インプットしたものをアウトプットしているもんね。私は、自分を一番「きれい」にしてくれるのは、質問されることだと思っています。いろんな取材で「なぜ、この化粧品なんですか?」や「何がいいんですか?」と毎日聞かれています。聞かれると、考えて、言葉にする。これを繰り返すうちに自分を知りました。自分を一番「きれい」にしたと実感しています。

石川:MoMA(ニューヨーク近代美術館)が開発した、美的感覚を養うプログラムがあるそうです。プログラムでは、いろんなものを見て、「好き」か「嫌い」かを決める。「どちらでもない」はダメなんです。そして「なぜ好きなのか?」もしくは「なぜ嫌いなのか?」を言語化します。それを繰り返すと、自分の偏りが理解できるようになり、嫌いものの良さまで見えるようになる。マインドとは、好きや嫌いと言う感情的なものと、その感情の言語化のように理性的なもの、双方を行ったり来たりする往復作業ですね。

深澤:私は、好きか嫌いかを「ルンルンするか?」「ルンルンしないか?」と捉えています。本当はルンルンするものだけに囲まれていたいけれど、それは無理。しかも身の回りの全てがルンルンするものだと、ルンルンを感じられなくなっちゃうって思うんです。だから理想は8:2。身の回りの8割がルンルンするものであれば、と思っています。

石川:白馬の王子様のように一瞬でルンルンを感じる場合もあれば、サウナやビールのようにルンルンを感じるまで時間が必要なケースもある。そして人は、ルンルンだけだと飽きちゃって、“ルンルン地獄”に陥っちゃう。変化は、あった方がいい。嫌なことがあると、改めてルンルンに気づくこともあるから。

深澤:たまには違う人とデートすると、それまでの人の良さに気づくことがあるのと一緒かもね(笑)。

石川:ルンルンを確かめるため、あえて他に手を出してみる必要性さえあるかもしれない。ヨーグルトは、同じものを食べ続けるより、時々違うものを取り入れた方が新陳代謝が良くなるんだって。

目指すのは「高み」
じゃなくて「奥深さ」

深澤:「肌は保湿」みたいに揺らぐことのない“共通ルンルン”と、そうじゃないルンルンがあるのかな?

石川:ベーシックルンルンだね(笑)。「幸せ」には、万人共通はないかもしれない。でも、大勢が「幸せ」と感じる可能性が高いものはある。1つは、「豊かなつながり」かな?

深澤:SNSが普及して、他者との比較で落ち込む人が増えているように思います。「きれい」という概念さえ一辺倒になっている気がして……。SNSは、「幸福度」をあげるのかな?

石川:普及し始めた頃は、SNSに触れている人の方が「幸福度」は高かったように思います。でも今は、「幸福度」が悪化しているSNSユーザーも多い。特に若い世代は、「高み」を目指すから疲れているのかな?「高み」を目指すと、社会は多様化しないし、競争になっちゃうからツラい。「高み」を目指すと、ピラミッドのような構造が生まれてしまうんです。元来日本には「高み」ではなく「奥深さ」の思想が存在します。神社などを想像してみて。入り口の反対側にある「奥」に向かって、みんなウネウネとした道を進むでしょう。しかも、「奥には何があるのか?」よくわかっていない場合も多いのに(笑)。日本人は「奥深さ」の思想を持ちつつ、その奥にあるもの、つまり大事なものは言わないんです。それが結果、多様性につながった。「マインド・ビューティ」とは、美の「奥深さ」を探ることかもしれないね。今はまだ、美の「高み」を見せつけられている場面も多いのかもしれない。

深澤:人は、衰えます。そして40歳を過ぎた頃から、人はそれに抗うようになります。これもやっぱり「高み」を目指しているからかもしれません。でも、それは「きれい」なのでしょうか?私は、そうは思わない。40を迎えて、豊かに生きたり、仕草が素敵だったりを「きれい」と思うようになりました。でも、やっぱり周りの40代以降は、皆、悩み始めるんです。だから私は美容家として、「美」の幅を広げたい。すでに変わってきたけれど、もっと変えたいと思っています。

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