PROFILE: 内田佳佑

人気メンズサロンの店長として活躍してきた内田佳佑スタイリストが立ち上げた「アンサー(ANSWER)」は、開業から約1年で“アンサーらしさ”を築いてきた。その象徴が「かっこいい」という共通言語だ。異なるサロン出身のスタッフが集まりながら、その価値観は服装やヘアスタイルだけでなく、接客や言葉遣い、仕事への向き合い方にまで浸透している。
店の色をどうつくり、人をどう育てているのか。内田代表に、ブランディングと人材育成について聞いた。
「この動画は『アンサー』だ」と分かる状態をつくる
WWD:「アンサー」が始動して約1年が経った。現在、どのような文化が育っていると感じる?
内田佳佑「アンサー」代表(以下、内田):ストイックに美容と向き合い、やるべきことを全部やる、という文化ができてきたと思います。自分がなりたい姿に対して、どれだけの熱量と行動量が必要なのかを、全員が考えながら動いています。スタッフは毎月、自分の目標と必要な行動を決め、月末に振り返ります。それを継続できるようになってきました。
WWD:すでに「アンサー」らしさの醸成を感じる。
内田:最初からブランディングをすると決めていました。スタイルや動画を見たときに、すぐ「アンサー」と分かる状態をつくりたかったんです。
もともと全員が違うサロンから集まっているので、動画の質感や構成、起用するモデルをそろえました。色気があって中性的な、“アンサーっぽい”モデルを選び、それを1年間続けてきた。「この質感は『アンサー』だ」「このモデルは『アンサー』だ」という印象を、少しずつつくっていった感覚です。
WWD:モデルやヘアスタイルにも、共通する方向性がある?
内田:いわゆるゴリゴリのメンズサロンらしい男性像とは少し違います。中性的で色気があり、少しおしゃれな雰囲気の人が多い。スタイリスト自身の空気感ともつながっています。定番から少し外した提案を続けてきました。「ミディアムヘアにしたい人は、どこに行けばいいのか」と考えたときに、「アンサー」が選択肢になるようにしたかったんです。
WWD:サロン全体の統一感と、スタッフの個性はどのように両立させている?
内田:その人がどうなりたいか、どのようなブランディングをしたいかを大事にしています。全員に同じ作品をつくらせるのではなく、「この子はこれで伸ばす」「この子はこっちで伸ばす」と考える。本人がやりたいことと、その子の魅力がずれていると感じたら別の方向を提案することもありますし、起用するモデルも一緒に考えます。本人がやりたいことを続けながらきちんと数字もつくれる。それが美容師としての充実感につながると思っています。
今は、スタッフにどれだけ時間を使えるか
WWD:人を育てる上で、コミュニケーションはどのように取っている?
内田:とにかくスタッフと一緒にいる時間を優先しています。外で食事をするなら、まずスタッフとの食事を優先しますし、練習を見る時間も取ります。今の「アンサー」の段階では、どれだけスタッフと接点を持てるかが重要。僕自身が現場で動き、背中を見せることも必要だと思っています。
WWD:次の段階に進む目安は?
内田:年数や人数ではなく、自分の思いを共有できて、「この人には任せられる」と思えるメンバーがどれだけ増えたかです。僕が現場にいなかったり、営業時間を一緒に過ごさなかったりすると、少しずつ距離ができる。だから今は、同じ方向を向ける人を増やしている段階です。ただ人数を集めればいいわけではありません。「アンサー」が目指す場所に、きちんと矢が刺さっている人を集めたいと思っています。
採用基準は「真っすぐ、素直、ポジティブ」
WWD:採用では、どのような人を求めている?
内田:一番大事なのは、真っすぐで素直。あとはポジティブであること。そこに本人らしさがあり、「『アンサー』の雰囲気に合う」と感じれば、一緒に働きたいと思います。
WWD:「『アンサー』の雰囲気に合う」とは?
内田:ファッションや髪型、空気感です。かなり感覚的ですが、この子と一緒に働いている姿を想像できるか、という部分もあります。
尖った装いをするなら、人一倍丁寧に接する
WWD:スタッフの服装にルールはある?
内田:ないです。皆好きなものを着ればいいと思っています。結果として黒っぽいファッションが多いですが、全員が同じに見えてはいけない。それぞれ違うから面白いです。
WWD:服装について伝えていることは?
内田:鼻ピアスを着けていたり、少し尖ったファッションをしていたりすること自体はいいんです。ただ、その分、お客さまへの話し方や距離感には人一倍気を配ってほしい。見た目で「少し怖そう」と思われる可能性があるなら、すごく丁寧に接客して、良いギャップをつくればいい。自分がどう見られているかを理解した上で、接することが大事です。
WWD:内田さんは美容師にとってのファッションをどう捉えている?
内田:自分の世界観を表現できるものだと思います。今は似たようなヘアスタイルがたくさん発信されています。その中で最後に見られるのは、その人自身です。どちらの美容師にお願いするか迷ったとき、技術や口コミだけでなく、本人の雰囲気も見られている。
ただ、僕自身はそれほど難しく考えていません。今、自分がイケていると思うものを着ているだけです。その感性を好きだと思ってくれる人が来てくれれば、それでいいと思っています。
「会社のためにやれ」とは言わない
WWD:スタッフには、仕事への向き合い方をどのように伝えている?
内田:僕は「会社のためにやれ」とは絶対に言いません。僕自身、そう言われてもピンとこなかったから。「知らないよ」と思っていました(笑)。美容師は自分のために頑張るものだと思っています。ただし、自分のため“だけ”になることはやめよう、と伝えています。
自分が頑張った結果や、その過程が、仲間や会社にも良い影響を与える。例えば同じ売り上げ1000万円でも、自分だけが結果を出し、周囲に負担をかけていたら、組織の力にはなりません。支えてくれたスタッフや環境に感謝し、最後に全員が「やって良かった」と思える。その過程が、組織の栄養になると思っています。
オーナーが1人目にならなければいけない
WWD:スタッフのモチベーションをどのように高めている?
内田:可能性があるのに、自分でふたをしてしまっている人は多いと思うんです。それがもったいない。「一緒にやっていこうぜ」と言う人間が明るくて、自分自身も行動し、背中を見せていたら、「この人と一緒にやってみよう」と思えるじゃないですか。
スタッフに練習してほしいなら、まずオーナーがやる。掃除をしてほしいなら、自分が掃除する。朝練をしてほしいなら、自分が参加する。撮影してほしいなら、自分が撮影する。サロンを良くしたい方向に対して、まず自分が一人目にならなければいけない。その姿を見せ、みんなが自然とまねしたくなるような行動をすることを意識しています。
WWD:そうした考え方が、スタッフにも浸透してきた?
内田:ある意味、“良い洗脳”かもしれないですね(笑)。良い考え方にはまり、みんなが良い方向に変わり、数字もブランド力も上がるなら、それは良いと思うんです。僕は、みんなを良い方向へ持っていきたいと思っています。
「1年間本気でやれば人生は変わる」
WWD:この1年で、スタッフにはどのような変化があった?
内田:売り上げが10倍になった子が2人います。2倍、5倍になった子もいる。1000万円、800万円、500〜600万円を売り上げるプレイヤーも出てきました。
僕は常に、「20歳を過ぎた大人でも、1年間本気でやれば人生は変わる」と言っています。実際に、月の売り上げが70万円だったスタッフが、1年で800万円になりました。変わったのは数字だけではありません。考え方や言葉遣い、お客さまやスタッフとの向き合い方まで、根本から変わりました。
WWD:成長に必要なものは?
内田:成功体験です。小さな成功体験を積み重ねることが、すごく大事だと思います。アシスタントにも目標を決めてもらい、それを達成する経験を積ませる。全員が毎月目標を明確にしているのも、1カ月ごとに成功体験をつくるためです。できたと実感すれば、次も頑張れる。その積み重ねで、人の考え方や行動は変わると思っています。
色を崩さず、「アンサー」を大きくする
WWD:今後、どのような美容師が選ばれ続けると思う?
内田:きちんと技術があり、お客さまとの距離感が上手な人です。技術が上手でも、距離感が下手ならリピートにはつながりません。
その上で、自分の目標を決め、継続できる人が選ばれ続ける。一度有名になったからといって継続をやめたら、選ばれなくなります。魅力を下げないためにも、続けることが大事です。
WWD:今後の展開は?
内田:まずは「アンサー」というブランドを、もっと確立したいです。今のメンバーに次のステージを用意するためには、拡大していく必要があると思っています。ただ、今の「アンサー」の色は崩したくありません。この色を保ったまま、同じ思いを持つ仲間を集めて大きくしたいです。
WWD:「アンサー」を一言で表すなら?
内田:「かっこいい」。会社としても、「かっこいいに妥協しない」を共通言語にしています。見た目だけではなく、自分の在り方や接客、言葉遣いまで、全てにおいて妥協しない。そこが崩れたら、「アンサー」ではないと思っています。
店舗情報
◼︎「アンサー 渋谷(ANSWER)」
時間:平日 11:00〜21:00/土曜 10:00〜20:00/日曜 10:00〜19:00
住所:東京都渋谷区神宮前 6-18-11 明治ビル 4F
インスタグラム:@answer_hair_
◼︎「アンサー 原宿(ANSWER)」
時間:平日 11:00〜21:00/土曜 10:00〜20:00/日曜 10:00〜19:00
住所:東京都渋谷区神宮前 4-31-11 re-belle原宿 5F