ビューティ

コティのロビーCEOがわずか1年余りで退任 ジミー チュウCEOが後任

 コティ(COTY)は今夏、ピエール・デニス(Pierre Denis)現ジミー チュウ(JIMMY CHOO)最高経営責任者(CEO)をCEOに起用する。2018年11月に起用されたピエール・ロビー(Pierre Laubies)現CEOは入社わずか1年余りで退職することになる。また、ピエール・アンドレ・テリス(Pierre-Andre Terisse)最高財務責任者は最高執行責任者も兼務する。

 デニスCEOはカプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS)のもとで「ジミー チュウ」を1億ドル(約107億円)規模のブランドに育てるために取り組んできた。また、ビューティ業界では「ジャン パトゥ(JEAN PATOU)」のフレグランス事業を率い、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のパフューム・コスメティックス事業部の「ディオール(DIOR)」で経験を積んだ。一方のロビーCEOはコティでこれまで組織やサプライチェーンの再編を行い、プロフェッショナル事業部の見直しや「カイリー・コスメティクス(KYLIE COSMETICS)」の買収などを進めた。

 ロビーCEOの前はカミロ・ペイン(Camillo Pane)がCEOを務め、16年にプロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE)から41のブランドを買収。それが大きな負担となり、不採算ブランドのリブランディングなどを通して立て直しを図ったものの、なかなかうまくいかず業績を落とし続けた。特にマスブランドを抱えるコンシューマー部門が苦戦し続け、同部門の19年7〜12月期の売り上げは前年同期比15.6%減を記録。全体では同5.6%減の42億8700万ドル(約4587億円)で、「グッチ(GUCCI)」「バーバリー(BURBERRY)」「ティファニー(TIFFANY & CO.)」などを擁するラグジュアリー部門は同0.7%増、「ウエラ(WELLA)」「OPI」などを擁するプロフェッショナル部門は同1.4%増だった。なお、再建の一環として19年8月にデジタルネイティブブランド「ユニーク(YOUNIQUE)」を売却し、同年11月に「カイリー・コスメティクス」を買収。今後プロフェッショナル部門の売却を予定している。

 今回の人事発表について、ウオールストリートのアナリストの間では意見が分かれているようだ。スタイフェル(STIFEL)のマーク・アストラチャン(Mark Astrachan)は「コティは再建プランに対し、これまで結果を出せていない印象だ。同社の中では重要な資産のプロフェッショナル事業部を売却したり、『カイリー・コスメティクス』を買収したりすることも正解ではないだろう。ロビーCEOは再建に向けての第1フェーズを担ったが、今後本格的な業績の改善を率いるリーダーとしてデニス新CEOに期待がかかっている」と話す。

 コティは世界の売り上げトップ10に入るフレグランスブランドのうち3つと、マスコスメブランドのうち4つ、そしてヘアカラーブランドのうち3つを傘下に持ち、世界最大規模の化粧品企業、ロレアル(L'OREAL)と肩を並べる。再建に対するプレッシャーが高まる中、外部からの力も受けている。「グッチ」の親会社であるケリング(KERING)は公的にビューティ事業についての不満を表している。ジャン・フランソワ・パリュ(Jean Francois Palus)=ケリング グループ マネジング ディレクターは「『グッチ』のビューティは大きなポテンシャルを持っており、もっと成長しているべき。この成長スピードには満足していない」とコメントし、ブランド全体の売り上げでは「グッチ」の5分の1ほどの「サンローラン(SAINT LAURENT)」がロレアル傘下ではるかに大きなビューティビジネスを築いていることに言及した。

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