ファッション

好調「パリ・サン=ジェルマン」のアジアトップに聞くサッカークラブの枠にとどまらない多角化経営

 フランスのサッカーチーム、パリ・サン=ジェルマンFC(PARIS SAINT-GERMAIN FC以下、PSG)が日本のファッション市場で存在感を増している。2018年9月に欧州サッカークラブとしてアジア初の公式ストア「PSG ストア トウキョウ」をベイクルーズグループ運営のもとに、渋谷・明治通り沿いにオープン。ナイキの「ジョーダン ブランド(JORDAN BRAND)」と継続的にコラボしたり、メンズスキンケアブランド「バルクオム(BULK HOMME)」とパートナーシップを結んで、チームに所属する仏代表キリアン・エムバペ(Kylian Mbappe)の来店イベントを行ったりと、話題性にも事欠かなかった。さらに昨年11月には、新生渋谷パルコにPSGストアの2号店と初のカフェ事業「PSGカフェ」をオープンするなど出店攻勢をかける。事業拡大の背景をキーマンであるセバスチャン・ヴァゼル(Sebastuien Wasels)パリ・サン=ジェルマン アジア・パシフィック代表と、ファビアン・アレグレ(Fabian Allegre)パリ・サン=ジェルマン ブランド・ディバーシフィケーション・ディレクターに聞いた。

WWD:渋谷パルコに「PSGストア」の2号店と「PSGカフェ」を同時オープンしたが、日本で出店拡大する理由は?

セバスチャン・ヴァゼル=PSG アジア・パシフィック代表(以下、ヴァゼル):2018年に縁があってオープンした明治通り沿いの最初のストアが非常に好調なので、日本での出店を拡大するきっかけになった。渋谷パルコでは、1号店とは違う新しい客層を獲得できると考えている。われわれの存在感を示すのに最適な場所だ。

ファビアン・アレグレ=PSG ブランド・ディバーシフィケーション・ディレクター(以下、アレグレ):日本はアジアの中で最もファンが多く、われわれにとって非常に重要なマーケットだ。東京とパリはとても似ているし、日本もファッションに対しての感度が高い。そういった意味でもアジアで最初のストアを東京にオープンしたのは、シナジーが生み出せると考えたからだ。PSGと「ジョーダンブランド」のコラボレーションも話題になったが、それも想定通りだった。今後もいくつかの出店をしたい。

WWD:ベイクルーズグループはどのようなパートナーか?

ヴァゼル:6年前からライセンスパートナーとして、製品の企画、製造、販売を手掛けていただいている。同じ価値観を持ち、ファミリーのような存在だ。

アレグレ:われわれはパリのチームだから、ファッションを非常に大切にしている。だから同じような感覚を持ち同じようなビジョンを持っているベイクルーズは、われわれにとってパーフェクトなパートナーだ。

WWD:そもそもサッカークラブであるPSGが、なぜファッション事業も本格的に取り組むのか?

ヴァゼル:11年にカタール政府投資庁の投資が入ったことが大きい。そこからグローバルなチームを目指すためにファッションやミュージック、アート、エンターテインメントなど多くの戦略を掲げてきた。中でもファッションはパリを代表するカルチャーだし、より多くの人にチームを知ってもらえるきっかけになると考えた。

WWD:PSGとしては初のカフェ業態もスタートさせた。

ヴァゼル:イギリスにパブがあるようにカフェはパリの文化そのもの。その文化をわれわれはグローバルに伝えていく。カフェにはさまざまな可能性があり、例えば待ち合わせ場所として「PSGカフェ」を使ってもらったりと、PSGが人々の生活にもっと入り込める可能性がある。そして飲食からも新しいファン獲得ができるだろう。

アレグレ:パリの人々にとってカフェは、本当に日々の生活の一部なんだ。カフェで試合を観戦できるようにするなどといったことにも日本で取り組んでいきたい。

WWD:事業が多角化する中でも大切にしているPSGらしさとは?

ヴァゼル:どの分野にも共通することは、‟Excellence(優秀であること)”‟Diversity(多様性)”‟Innovation(革新的)”——この3つだ。何をするにおいても常にハイクオリティーでなければならないし、人種や性別、年齢に関係なくリーチできることが必要だと考えている。

WWD:昨年はスキンケアの分野で「バルクオム」とのパートナーシップ契約を発表した。パートナーを選ぶ際に重要視していることは?

アレグレ:同じような価値観や目標を持っていること。

WWD:今後の日本展開をどのように考えている?

ヴァゼル:日本には今580万人のヨーロッパサッカーのファンがいるが、その中でナンバーワンのヨーロッパサッカークラブになりたいという目標を持っている。PSGが人々の生活の中に毎日入っていけるようなチームにするため、さまざまな活動を引き続き行い、われわれのDNAを伝えていく。今後は日本でもサッカーアカデミーを開いたり、親善試合を行うことも考えている。全ての計画はパートナーが見つかってからになるので、今の段階で具体的なタイミングは言えないが、ほぼ毎日パートナー候補と話しており、近いうちに実現したい。

アレグレ:現在15カ国にアカデミーがあり、2万人の子どもたちがプログラムを受けている。ただし、われわれの戦略は他のクラブと違い、世界各国に無数のアカデミーを作ればいいというわけではない。本当に重要な都市で正しいパートナーと組み、進めることが重要だ。じっくりと時間をかけて最適なパートナーを探していく。

WWD:22年の「カタールワールドカップ」に向けて、中東でのビジネス展開も強化している。中東でのビジネス拡大については?

ヴァゼル:中東は戦略的にも重要な地域だ。中東のほとんどの国にファンクラブがあり、カタールにも最近オフィスを設け、ストアもオープンした。日常的にその地域でファンとコミュニケーションし、われわれの存在感を高めていくことを目的にしている。毎年冬にはチームのフレンドリーツアーという海外ツアーがあり、ローカルなファン層を強化するために、トップ選手の練習風景を間近で見られるような活動も行っている。PSGブランドをより多くの人に知ってもらうために今後も活動を続ける。

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