テレビ東京が3月2日から4週連続で放送した「TXQ FICTION」第5弾の「神木隆之介」。同作は、「イシナガキクエを探しています」「飯沼一家に謝罪します」「魔法少女山田」「UFO山」に続く「TXQ FICTION」の5作目。テーマは「神木隆之介」で、神木隆之介が本人役で出演するフェイクドキュメンタリーだ。
監督は「フェイクドキュメンタリーQ」の寺内康太郎が務め、プロデューサーとしてテレビ東京の大森時生、「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」の近藤亮太、「ゾゾゾ」「フェイクドキュメンタリーQ」の皆口大地が参加する。
神木隆之介と「TXQ FICTION」という異色のタッグがどのように本作を制作したのか。前半の合同取材では神木隆之介、大森時生、寺内康太郎に、後半の個別取材では神木と大森に話を聞いた。
神木隆之介からの持ち込み企画
——劇中では神木さんからの打診で今回の作品が作られたように描かれていますが、実際の経緯は?
神木隆之介(以下、神木):劇中の描写とほぼ一緒です。もともと「ほんとにあった呪いのビデオ」や「放送禁止」シリーズが大好きでした。それで新参者なんですけど「TXQ FICTION」第2弾の「飯沼一家に謝罪します」を見て「こんなのをやっているんだ!」と思って「もし企画が通らなくても、とにかくこの作品を作っている方とお話がしたい、何かご一緒できたら幸せだな」と思って、自分からコンタクトを取らせていただきました。
大森時生(以下、大森):作品の冒頭はもはや再現ドラマですよね(笑)。最初、マネージャーさんからご連絡をいただいた時は率直に光栄でしたし、まさか神木さんが「TXQ FICTION」を見てくださっているとは思ってもみませんでした。
ただ、神木さんでフェイクドキュメンタリーをやる難しさは、寺内さんと真っ先に議論しました。何しろ国民的な知名度がある方ですから。作中で神木さんが死んだとしても、現実の神木さんが生きていると分かった瞬間に物語が成立しなくなってしまう。
神木:過去の取材で話した内容との整合性も考えないといけないですもんね。
大森:「子供の頃はこうだった」という設定すら、2歳からずっと活動されているから嘘がつけない(笑)。フェイクドキュメンタリーを作る上で他のどの俳優さんよりも一番難しい方だと思いましたが、逆にそれが面白いと感じました。
寺内康太郎(以下、寺内):僕は最初、大森さんから話を聞いた時、神木さんがどういうつもりでおっしゃっているのか、まったく分からなかったんです。僕らがやっているようなフェイクドキュメンタリーを求めているのか、それとももっとドラマ寄りの「POVドラマ」をイメージされているのか。初めてお会いした時にその不安は消えました。神木さんのリテラシーが非常に高く、こちらの姿勢を深く理解してくださっていた。最初から3時間くらい話し込みましたよね。そこで「絶対に面白いものが作れる」と確信しました。
——今回タイトルを「神木隆之介」にした理由は?
大森:これは「神木さんの物語」だと思ったので、最初からこれ以外のタイトルは思いつきませんでした。一択です。ただ、ご本人や事務所さんから「いや、ダメですよ。だって名前なんで」と言われたらどうしようという不安はありました(笑)。
神木:僕は聞いた瞬間、めちゃくちゃ声を出して喜びました。自分の好きなシリーズの横に、自分の名前がタイトルとして並ぶなんて、こんなに誇らしいことはないなと。初めて「神木隆之介という名前で良かった」と思えたくらい光栄でした。
本人が演じるフェイクドキュメンタリー
——「神木隆之介」本人役を演じる上で意識したことは?
神木:「今どこの世界線の話をしているんだっけ?」という確認は、常に3人でしながら進めていました。寺内さんの「はい、カット」という声すら、それが本当にOKの意味なのか、劇中のセリフなのか分からなくなるので(笑)。
演技という意味では僕は「演じて」はないです。もちろん言わなきゃならないことは頭にありつつ、神木隆之介という1人の人間として「てるちゃんは、なぜこの手紙を残して、現在はどうなっているのか。果たしてどういう結末を迎えているのか」というのを純粋に追っていた感覚です。だから「素」ですね。ただ、無意識が意識になってしまうとダメだなと思いました。「この先がこうだから、こう動いた方がいいかな」と考えた瞬間、そこに向かう演技になってしまう。辿り着かなきゃいけないセリフがあるけど、どうすれば無意識のままそこに辿り着けるか。意識してしまうのを頑張って抑えましたね。それはすごく不思議な体験でした。無意識なところを無意識のまま、だけど無意識すぎても逸脱しちゃうんで(笑)。そこの塩梅がめちゃくちゃ難しかったです。
寺内:もう神木さんが神木さん役をやるわけなので、演出なんて必要ない。それこそ木に向かって「もっと木らしく立って」と言う必要はない(笑)。木だとしたら風を吹かせるのは僕。共演者と初対面のシーンは極力ファーストテイクを狙いました。別々に打ち合わせをして、呼び鈴を鳴らして出てきた相手とガチンコでしゃべってもらう。
神木:だから僕も(作中の取材相手の)西口さんが扉から出た瞬間、「ブチ切れるんじゃないか」って(笑)。「大丈夫かな」っていう不安もあって話しかけてたんですけど。それが、ほどよくいびつで、ほどよくピタッと合って、不気味な空気につながったんだと思います。
大森:神木さんはもともと作品のファンで、打ち合わせでも鋭い考察を披露してくださっていたので、その熱量のまま現場で話してもらうのが一番だと思っていました。これまでは、そういう視点で話す「主人公」的な人があまりいなかったので、新鮮な面白さが生まれたと思います。
神木:山内圭哉さんも小林綾子さんもすごかったですよね。てるちゃんが実際には「いない」ってことは分かっているんですけど、話しているうちに「いる」感じになる。スラスラと本当の記憶を語っているような空気になるんです。
寺内:山内さんが終わった後に「役名がある芝居と違って、本当になんか悪いことをした気分になった」と噓をついた時の罪悪感を抱かれていて。ああ、やっぱり本人役を演じるってことは、普段のお芝居とは質が違うんだなと感じました。
今回はリアリティーを重視
※ここからは神木と大森の2人への取材
——ストーリー作りに関しては神木さんはどれくらい関与されたんですか?
大森:まず寺内さんと福井鶴さんが脚本を書いてくださって。最初は何案かあったんですけど、神木さんが言わなさそうなことは、今回はあり得ないので、神木さんと打ち合わせを重ね、そのリアリティーラインも含めて調整していきました。
神木:「自分だったら、たぶんこうすると思います」みたいなことはすり合わせさせていただきましたけど、物語そのものに関しては皆さんにお任せしました。
——本人役のフェイクドキュメンタリーを作るにあたって参考にした作品はありますか?
大森:例えばネイサン・フィールダーの「リハーサル」(U-NEXT/HBO制作)のようにメタ構造を重ねていくことでどこに到達するのか、というアプローチは、今回の作品とは方向性こそ異なりますが、「リアル」に納得感を持たせる方法として、参考にしたというよりは、確かにこういう手法はあるよな、と思いました。
一方で、既存の「本人役」を扱った作品と似てしまうことにはあまり意味がない。本人役のフェイクドキュメンタリーでは、「本人が実は変な人」「本人が実は狂っている」というパターンが多いんですけど、今回はリアリティーを重視したので、そうじゃないものを考えました。お会いしているからこそ思っちゃうんですけど、「だって狂ってないもんな」って(笑)。
神木:舞台挨拶か何かで僕が出た瞬間に魔法が解けちゃいますからね。
「子役」という特殊な立ち位置
——今回、「子役」が一つのテーマになっていますが、子役は芸能界において特殊な立ち位置だと思いますが、大森さんはどこに面白みを感じますか?
大森:作中でも神木さんに「どの段階で“自分”と“役”の差を認識するのか」とうかがったのですが、そこが現代的なテーマと接続する面白い部分だと思います。平野啓一郎さんが言う「分人」の概念にも近いですけど、人はそれぞれ役割を背負って、それぞれの場所によって、ペルソナを使い分ける。家で妻と話す自分も、会社で同僚と話す自分も、どちらも自分なんだけど、どこか演技しているように見える。その境目の分からなさや、「何をもって自分なのか」という問題は、SNSが発展した現代において誰しもが陥りやすいテーマだと思うんです。「子役」はある種、その問題と誰よりも早く向き合っている存在なのかもしれない。そういう「自我」みたいな部分に興味があります。
神木:作中で話したように、「自転車から落ちて泥まみれになる」シーンで違う人間を演じていると自覚したんです。本当に泥が苦手だったんですよ(笑)。だから「普段の自分は泥まみれにはならない」。だけど「泥まみれにならないと終わらない」。その矛盾を子供ながらに感じたのは事実です。だけど、それ以降、意識して分けていこうみたいなこともなく、途中で特別嫌な思いをしたり、ひねくれたりもしてないですから(笑)。純粋に楽しい気持ちだけで続けてこられたので、感謝しかないですね。
——本作の中に「僕は大人になりません」というてるちゃんのセリフがありましたが、それに似た感覚はありましたか?
神木:いや、ないです! 大人に「なる、なる!」って思っていました(笑)。髭が生えたり声が変わったりすることも「当たり前じゃない?」と思っていましたね。
ただ、今改めて考えると、あの言葉は、身体的な意味なのか精神的な意味なのか、あるいはもっと不穏な意味なのか……。自分は思ったことがないので共感はできないですけど、「子役」というフィルターを通すと妙に生々しく聞こえる、絶妙な境目の言葉だなと思います。
——子役出身の俳優への仲間意識はありますか?
神木:ありますね。やっぱり大人になってから見る現場を見た時の世界と、子供から見ていた現場の世界は違うと思うんです。時代は違うから、また違う景色なんでしょうけど、子役からやってきた人には、どこか共通する思いがあると僕は思っているので、親近感というか、近い距離にいるなと感じます。尾美としのりさんと共演した時には「俺たち『チーム子役上がり』だからな」と言われました(笑)。
「やっぱり『神木隆之介』で良かった」
——フェイクドキュメンタリーに合う俳優・合わない俳優があると思いますが、フェイクドキュメンタリーを演じるという観点から見た演者としての神木さんの魅力は?
大森:演技力が高いのは大前提として、何より「フェイクドキュメンタリーを本当にやりたい」という熱量が圧倒的だったことです。単に本人役を演じたいとか、生っぽい芝居をしたいというレベルではなく、「真実に見えるフィクションを作りたい」というビジョンを共有できた。もしこちらから有名俳優に声をかけていたら、最終的に意見が一致しなかったと思います。「本気でリアルなものを作りたい」という神木さんの強い意志があったからこそ、この作品は成立しました。
神木:やっぱり好きなものに飛び込んでいきたいんですよね。だけど、飛び込んでから思うんです。「自分が飛び込んでしまったがために良くなかったって言われるのは嫌だな」って(笑)。そのプレッシャーはありました。でも本気度は誰にも負けない。そこが支えでした。大好きだからこそ、一視聴者として純粋に楽しめてゾクッとする作品にしなければならないという使命感もありました。だから不安もあって、常に寺内さんや大森さんに「大丈夫でしたか?」と聞いていました(笑)。
大森:思った以上に確認されるなと(笑)。本当に心から「大丈夫です!」という感じでした。
——完成した作品を見てどう感じましたか?
神木:編集がどうなっているのか、すごく楽しみだったんですけど、スピード感があり、進んでいっているように見えて実は進んでいなかったり、逆に急ピッチで進んでいたり、そのアンバランスさがすごく気持ち悪くて。エンディングでもブチって切れてスタッフクレジットが出るけど、その後ろでとんでもないことを言っている。ある種突き放された感じがいいですね。
大森:現場で見ている神木さんと、カメラ越しに切り取られた神木さんでは印象が少し違う。基本的に現場はリアルなのでリアリティーを感じやすいんですけど、カメラで切り取られた神木さんは、現場では気づかなかったリアリティーを生み出すための種を細やかに撒いている。2~3話はほとんど劇中劇で進むので「神木隆之介」というタイトルで本当に良かったのか、少し不安に思ったんですけど、完成品を見て「やっぱり『神木隆之介』で良かった」と思いました。
神木:僕はホラーも“ヒトコワ”も大好きなので、独特の気持ち悪さ、不穏さ、ホラー感、ヒトコワ……それらが全部入った贅沢な“ハッピーセット”じゃないですか(笑)。一人でも多くの方に、映っているものや話している言葉の背後にある見えない真実に気づいた瞬間のゾッとする感覚を味わってほしい。そしてこの作品だけでなく、寺内さんの「フェイクドキュメンタリーQ」とか、「放送禁止」シリーズとか、フェイクドキュメンタリーというジャンルを楽しんでもらえたらうれしいです。
大森:「フェイクドキュメンタリーのアンバサダー」みたいな(笑)。心強いです!
PHOTOS:MIKAKO KOZAI(L MANAGEMENT)
STYLING:[RYUNOSUKE KAMIKI]DAISUKE IGA
HAIR&MAKEUP:[RYUNOSUKE KAMIKI]AKIHIRO OHNO(ENISHI)
[RYUNOSUKE KAMIKI]ジャケット 26万4000円、シャツ 2万6400円/共にマーカ(パーキング 03-6412-8637)、パンツ 4万4000円/マーカウエア(パーキング 03-6412-8637)
◾️TXQ FICTION「神木隆之介」
◾️TXQ FICTION「神木隆之介」
広告付き無料配信サービス「TVer」などで見逃し配信中。(※配信期間が3月31日まで)
また、「TXQ FICTION」公式YouTubeでも随時配信開始予定。
TVer:https://tver.jp/series/srog0v9atu
テレ東HP:https://video.tv-tokyo.co.jp/txqfiction/
U-NEXT:https://t.unext.jp/r/tv-tokyo_pr
「TXQ FICTION」公式YouTube:https://www.youtube.com/@TXQFICTION






