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大丸松坂屋で風土改革が進行中 ボトムアッププロジェクトで経営層のコミュニケーションに変化

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1611年創業の松坂屋と1717年創業の大丸が経営統合し、持ち株会社J.フロント リテイリング(JFR)が設立されたのが2007年。10年に、松坂屋と大丸が合併して、大丸松坂屋百貨店は誕生した。老舗百貨店同士の合併ながら、JFR傘下のパルコとの人材異動も活発で、24年3月にはJFRと大丸松坂屋それぞれに40代の社長が就任。業界を驚かせた。現在、大丸9店舗、松坂屋4店舗を中心に、全国に15店舗(分店・関連会社含む)の百貨店を構え、従業員数は3860人(社員は3717人)。そんな大丸松坂屋百貨店で今、風土改革「コノハタプロジェクト」が進行中だ。しかも、ボトムアップで推進しているという。リーダーを務める泉もも経営戦略本部 経営企画部 風土担当に進捗を聞いた。

大事にしたのは「自分たちが主体であること」

WWD:プロジェクト発足の経緯と目的は?

泉もも大丸松坂屋百貨店 経営戦略本部 経営企画部 風土担当(以下、泉):2021-23年中期計画策定時に、「戦略にフィットした風土改革が必要だ」と決断が下されたのが出発点だ。私は22年5月に経営企画部に育休から復職して程なく、風土改革推進担当に指名され、プロジェクトチームが発足した。8月に経営会議でコンサル会社を決め、9月に公募で集めたメンバー2人を加えた8人で活動を開始した。そこから半年間、「変革の考え方」を学ぶところから始めた。大事にしたのは、自分たちが主体であること。コンサルには、“正解”ではなく、自走する私たちの“伴走パートナー”であることを求めた。

WWD:何から着手したのか?

泉:まず、上位層が変わる姿勢を見せて、変革の阻害要因を取り外さないと現場を主役にした改革はできないだろうと考えた。そこで、澤田太郎社長(当時)をはじめとする幹部に「半期に4回2時間ずつほしい」とお願いした。その時間で、会社の問題構造や、今後やっていくべきこと、現場の実態などを知ってもらい、「どういう風に動けば、店の変革が進むのか」を考えてもらった。そして、インタラクティブなコミュニケーション機会を増やし、もっと対話に近い形にするなど、儀礼的な会議をやめることに取り組んでもらった。また、年に1度以上実施されている経営層合宿の中身も変えてもらった。日常から離れた場所で、会社について長期的な目線を持って考える機会とし、会社の今後についてテーマを設けて話し合う。企業の規模が大きくなると、経営層同士の繋がりも希薄になりやすい。交流機会を持つことで結束力を高めることにもつながっている。

WWD:経営層が率先して変わろうとするのは素晴らしい。非常に重要なポイントだ。

泉:並行してそれまでの組織文化の言語化をした。社内アンケ―ト調査やインタビューから浮かび上がったのが、“包装紙文化”だ。百貨店として相手への思いやりを大切にする文化自体は素晴らしいが、社内では言いたいことを飲み込んでしまい、効率や役職・役割を重視する考え方が悪い方向に転んでしまっていた。どうやるかばかりに注力して、何故やるのか?何をするべきか?を考える人材を育成できていなかった。

また、本社と店舗、上司と部下、部門間などで“バーサス構造”が生じやすかった。さらに、1人で成果を出すことができる約5%の社員がスポットを浴び、75%の人財は静観する実務家で、チームや組織で成果を上げるという風土がなく、5%と75%の間で共感が生まれづらかった。そうした問題点を掘り下げていくと、「圧倒的に対話機会が足りていない」という結論に至った。これを“構造”の問題ととらえ、対話を通じて変えていくことを目的に据えた。

WWD:“包装紙文化”とは、百貨店らしくあり、うまい表現だ。

泉:納得感の高い言葉だと思う。“包装紙文化”を課題仮説とし、戦略の実現に向けた組織能力を獲得すべく、3年間の活動保証と人的リソースの投入が図られ、23年9月に専任組織が発足。人財開発部ではなく経営企画部に置かれたことで、経営とのより近いコミュニケーションも可能となり、事業方針策定・戦略立案・浸透と連動した風土改革の推進ができた。

WWD:しかし、専任組織とはいえ、経営陣を動かすのは難しくはなかったのか?

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