村上亮太デザイナーが手がけるブランド「ピリングス(PILLINGS)」は、初の書籍「pillings knitting works 2020-25」を刊行した。アートワークピースとセットの限定版(3万3000円)を30部、書籍のみの通常版(1万4300円)を70部の計100部をそろえる。10月14日まで伊勢丹新宿本店3階「センターパーク/ザ・ステージ#3」で販売・展示する。
本書では、「リョウタムラカミ(RYOTA MURAKAMI)」から「ピリングス」に改名して以降、ブランドの代名詞と言える存在であるハンドニット作品にスポットを当てた。厳選した22点の作品の物撮り写真と編み図の2冊組で構成し、完成品と制作プロセスが対応する形で編集している。
「ピリングス」は創業当初からハンドニットを編むニッターやその工程に目を向けて欲しいという思いでブランドを続けてきた。「編み図にはニッターそれぞれの個性が表れる。全てを緻密に手書きで書く人もいれば、自分の頭の中で補填して省略した形で描く人もいる。そのままを掲載することで、過程や背景に思いを馳せるきっかけになれば嬉しい」と村上デザイナーは話す。
また、ブランド創設5周年を経て、村上デザイナーは「ただブランドとして面白い作品を作りたいというだけでなく、文化的価値としてハンドニットの魅力を高めたいという気持ちの高まりがある」と話す。これは2025年度の「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」でセミファイナリストに選ばれて得た経験も大きいという。「ファッションの本場であるヨーロッパで、テーラリングやドレスメイクに比べ、ハンドニットはポジションが低いことを痛感した」(村上デザイナー)。
その課題意識から、村上デザイナーは今後、ブランド自前の工房設立や職人の内製化を構想。すでにニッティング・デザインスクール「アミット(AMIT)」を展開するなど、ニッターを目指す若者たちの教育に注力している。
「まずはパリで評価されるブランドとなり、国際的なファッションの文脈に位置付けられる存在を目指す。その上で、ブランドとして工房設立や職人育成に注力し、ひいてはハンドニット業界全体の地位向上に寄与することができたら嬉しく思う」。