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アンゴラ館の館長は「女性の社会進出」のパイオニアだった【ライター橋長の万博探訪(2)】

盛り上がりを見せる大阪・関西万博も10月13日の閉幕まで残りわずか。158の国と地域によるパビリオンでは、地球規模の課題の解決に取り組む各国の最新技術やアイデアを知ることができ、未来社会のあり方を考えるきっかけにもなった。この連載では各国の政府関係者へのインタビュー、海外パビリオンの取材を通して万博を振り返りたい。2回目はアフリカ大陸の南西部のアンゴラ。パビリオンを率いる館長はとてもユニークな人物だった。

自らショートムービーの脚本を担当

アンゴラはアフリカ大陸のなかで唯一、独立した専用パビリオンで万博に参加している。メインコーナーでは、マラリアに感染したひとりの少女が、国の健康教育によって医療人へと成長する実話に基づいたストーリーを映像で披露した。企画・脚本はアンゴラ館の総代表を務めるアルビナ・アシス・アフリカーノさんだ。元化学エンジニア、教育者であり、大臣経験も持つ彼女は、アンゴラにおける女性リーダーの象徴的存在でもある。愛知万博から20年間、アンゴラ政府の代表として万博に携わってきたアルビナさんに、アンゴラが取り組んでいること、女性の社会進出についても話を聞いた。

――アンゴラ館のテーマを教えてください。

アルビナ・アシス・アフリカーノ=アンゴラ館・総代表(以下、アルビナ):テーマは「よりよい未来を築くために地域会を啓発する」です。すこやかな未来を築くために、いかに健康のための教育が大切なのかに焦点を当てている。アンゴラは独立してまだ50年の若い国だ。社会状況を改善するためには社会基盤である健康の管理が不可欠であり、都市部だけでなく農村部にも保健医療への大規模な投資を進めている。

――実話をもとに描いたショートムービーが印象に残りました。

アルビナ:脚本は私自身が書いた。アンゴラはアフリカ有数の経済⼤国でありながら、マラリアによる感染症に悩まされた地域でもある。映像では、マラリアに苦しんだ幼少期の経験をきっかけに医療従事者を志す少⼥チッソラの実話をもとに制作した。伝統医療と先進医療の共存の重要性、アンゴラにおける健康と教育分野において⼥性が果たす役割の大きさも描いている。

――アルビナさんは幅広い分野で長年にわたってご活躍のようですね。

アルビナ:私はもともと化学エンジニアで、教育者として中高から大学まで化学を教えてきた。その後、6年間、石油大臣と工業大臣を務めた。2005年の愛知万博でアンゴラ政府代表に任命され、以来20年間、万博に携わってきた。現在は大統領府顧問として政策にも関わり、同時に農村地域のコミュニティ開発を支援するNGO団体のCEOも務めている。

学校を作るプロジェクトを長年続ける

――アンゴラは女性が活躍している国だと聞きました。

アルビナ:南部アフリカ開発共同体(SADC)で女性の社会進出に力を入れていて、アンゴラもその方針にしたがって政策を決めてきた。大臣や政府の重要ポストに占める女性の割合は日本よりも高く、女性が政治や経済で積極的に登用されている。民間企業においても、多くの女性が重要な役職についている。ただ単に女性という理由だけでなく、能力を持つ人材として評価され、その実力を発揮している。女性のエンパワメントは非常に重要で、アンゴラには強力な女性団体が存在する。現在の大統領夫人も活躍している一人。NGOや子供の教育の団体を設立するなど社会プロジェクトに熱心に取り組んでいる。今回の万博では、ウーマンズパビリオンで開催されたイベントに、IT系の民間企業から4人の女性リーダーが参加した。

――アルビナさんがいま力を入れていることは何ですか。

アルビナ:これまでも教育に注力してきた。教育を通じて医療分野に多くの人材を輩出してきた。今後も教育こそが持続可能な開発の鍵だと考えている。また、石油産出国に共通する課題だが、石油依存から脱却するため、農業や加工生産の発展にも力を入れている。

――独立して50年。アンゴラはどのように変化しましたか。

アルビナ:かつては学校も病院もなく、地方から都市部の施設に行かないといけなかった。アンゴラ政府は何もないところから学校や病院を作り、教員者や医療従事者を育ててきた。私は学校を開発するプロジェクトに参加し、積極的に関わってきたし、それは現在も続いている。アンゴラの将来世代のために持続可能な発展に尽力するという強い決意を持っている。50年間で開発してきたことをいかに持続していくかがこれからの課題だ。

――最後に大阪万博の感想を聞かせてください。

アルビナ:建築がユニークで、とくに大屋根リングがすばらしい。パビリオンに興味がない人でもリングを見るだけで万博全体を感じることができる。私自身、この20年の変化を振り返りながら、日本政府や万博組織、すべての関係者に対して感謝の意を伝えたい。

      ◆

アンゴラは1975年にポルトガルから独立。その後、内戦が続き、終結以降は石油、ダイヤモンドなどの輸出を背景に、一時は高い経済成長を記録した。現在は安定した経済成長率を維持しながらも、石油依存型経済から脱却すべく、産業の多角化を進めている。

アンゴラの女性リーダーを代表するアルビナさんの言葉からは「教育」と「女性の力」によって未来を切り開こうとするアンゴラの姿が浮かび上がってきた。石油資源に頼らない経済政策を進める一方で、健康教育と女性のリーダーシップが社会の基盤を支えている。日本では初の女性総理が誕生するかという点が話題になっているが、アンゴラをはじめとするアフリカでは、女性の存在感が国を前進させていることを改めて知ることができた。

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