PROFILE: シェーン・ウルフ/アヴェダ & ヘアケア プレジデント

昨年、「アヴェダ(AVEDA)」のグローバルプレジデントに就任したシェーン・ウォルフ(Shane Wolf)氏は、美容師としてキャリアをスタートし、サロン経営や製品開発に携わるなど、美容業界で30年以上の経験を持つ。「アヴェダ」の創設者であるホースト・レッケルバッカー氏とともに働いた経験もある同氏に、日本市場のとらえ方やサステナビリティの重要性、および今後の取り組みを聞いた。
WWD:最近の日本市場をどう見ているか。また、どんな製品が売れているか。
シェーン・ウルフ=アヴェダ & ヘアケア プレジデント(以下、シェーン):日本では、高い効果と心地よい感覚体験を両立する製品に対する消費者の関心が高まっており、これは「アヴェダ」の“機能性とホリスティックなウェルネスの融合”というブランド価値観と強く一致しています。中でもトリートメントカテゴリー、特にアウトバストリートメント(洗い流さないタイプ)の伸長が目立っており、日本のお客さまがヘアケアを日々のセルフケアルーティンの重要な一部と捉えていることが表れています。これは「傷んだ髪を補修する」から「健康を維持する」へという、予防的なケアへの意識の高まりを反映しています。日本ではもともとヘアトリートメントは好まれるカテゴリーであり、「アヴェダ」でもインバス・アウトバス両方で高機能かつ自然由来成分に基づく製品群が高く評価されています。また、スカルプケア、ダメージケア、艶感の強化といった分野でも引き続き高いニーズがあり、「アヴェダ」は植物由来の革新性とサステナブルな美を追求する姿勢を生かし、これらの分野でリーダーシップを発揮しています。代表的な製品には“スカルプ ソリューションズ”“ボタニカル リペア”、そして7月に登場した“コンセントレイト シャイン オイル”があります。
WWD:サロンビジネスにおけるサステナビリティの重要性を、どのように考えているか。
シェーン:サステナビリティは「アヴェダ」の中核にあり、サロンビジネスにおいても極めて重要な価値だと考えています。「アヴェダ」のパートナーサロンは、スタイルと環境責任を融合させるという私たちの理念を美しく体現しています。私たちのサロンパートナーは、「アヴェダ」のミッションとサステナビリティへのコミットメントに深く共鳴しており、環境に優しい運営のための革新的な取り組みを自主的に進めてくれることも多いです。これは「アヴェダ」にとっての大きな差別化要素であり、世界中のお客さまとプロフェッショナルの両方に響く強みとなっています。
WWD:「アヴェダ」サロンでは、具体的にどのようなサステナブル活動に取り組んでいるか。
シェーン:「アヴェダ」のパートナーサロンでは、廃棄物の削減、資源の節約、地域社会への貢献といった取り組みが、ゲスト体験の一部として自然に組み込まれています。例えば一部のサロンでは、“グリーンサイクル”プログラムに参加し、サロンから出る廃棄物のリサイクルや再利用を行っています。また、LED照明や節水型の蛇口、必要時のみ加熱するヒーターの導入など、省エネ対策も広く取り入れられています。ブラジルの「アヴェダ ビオマ サロン」のように、雨水を再利用してシャンプーに使用する事例もあります。さらに「アヴェダ コンセプト サロン」では、再生可能エネルギーの利用、EV充電設備の設置、リサイクル素材の内装など、より進んだ取り組みを行っているところもあります。また、地域社会とのつながりも大切にしており、4月の“アースマンス”ではウォーク・フォー・ウォーター(清潔な水を届けるためのチャリティーイベント)や募金カットイベントなどを実施し、チャリティー活動“チャリティー: ウォーター”を支援しています。
WWD:「アヴェダ」が提案する“次世代のナチュラルビューティ”とは。
シェーン:「アヴェダ」はナチュラルビューティのパイオニアであり、創業者ホースト・レッケルバッカーは、ヘアドレッサーとしての高いパフォーマンス要求を満たしながら、人と地球に優しい自然由来成分を追求する先駆者でした。私たちにとって“次世代のナチュラルビューティ”とは、創業時のビジョンの進化形です。ホーストの信念であるアーユルヴェーダの原則、ケアの精神、環境への配慮は今も受け継がれており、自然の力を生かしながら高い効果を実現する製品を作り続けています。現在のナチュラルビューティは、単に成分のことだけではなく、ホリスティックな美やウェルネスの習慣、多様な美のあり方、インクルーシブな価値観の尊重などを含む広い概念です。サステナビリティは今や新しいラグジュアリーの定義であり、「アヴェダ」は今後も目的・性能・ケアの精神を軸に、リーダーとして歩んでいきます。
WWD:「アヴェダ」のクリエイティブの最近の傾向は。
シェーン:「アヴェダ」のクリエイティブディレクションは、ブランドの精神と自己表現の融合を大切にしています。私はアヴェダを「ブランドというよりムーブメント、ライフスタイル」と捉えています。私たちは、お客さまやアーティストの個性、パーソナライゼーション、自己表現の重要性に刺激を受け、インスピレーションを得ています。「アヴェダ」のビジョンは、自然と科学の交差点で、サステナビリティと高機能性が出合う場所にあります。この考え方は、ホリスティックで進化し続ける美の表現であり、包括的かつ意義あるクリエイションとして、「アヴェダ」のミッションと深く結びついています。
WWD:“コンセントレイト シャイン オイル”の特徴と、開発においてこだわったポイントは。
シェーン:新製品“ミラクルオイル”(“コンセントレイト シャイン オイル”)は、全ての髪質・ヘアテクスチャーに対応するスタイリングのマストアイテムを目指して開発しました。「アヴェダ」製品全てに共通するように、この製品もお客さまとスタイリスト双方のニーズを考慮して作られています。仕上がりとしては、髪に3倍の艶感をアップ、滑らかな手触り感は5倍、さらにうねりを抑えて一日中まとまる髪に仕上がります。開発において重視したのは、妥協のないパフォーマンス、「アヴェダ」らしい五感に訴えるリチュアル体験、そして責任ある原料調達です。処方には、オメガ3・6・9脂肪酸を豊富に含む「アヴェダ」独自のカメリナ発酵成分(ヘアケア業界初)を採用。さらに、ツバキオイルとダイコンシードオイルの植物ブレンドも配合されており、自然由来成分による輝きと柔らかさを提供します。全ては“ケアの精神”に基づいた設計です。
WWD:グローバルブランドとして、現在「アヴェダ」が挑戦していることは。
シェーン:「アヴェダ」はグローバルに展開しており、それぞれの地域のお客さまとつながることができる特別なブランドです。そのため、地域ごとに異なる文化的背景や美容ニーズに適応することがとても重要です。例えば、地域によって髪質や期待される効果、好まれる成分などに違いがあるため、製品やキャンペーンをその地域ごとに最適化・ローカライズする必要があります。また、私たちのもう一つの大切な焦点は、世界中のプロフェッショナルなスタイリストやアーティストを惹きつけ、育成・支援することです。彼らの専門性があってこそ、「アヴェダ」が本物として世界中のお客さまとつながることができます。
WWD:今後、日本市場で取り組みたいことは。
シェーン:今後の日本市場では、サロンとリテール両方のチャネルにおいて、ブランド認知と独自の価値に対する理解をさらに深めることに注力していきます。「アヴェダ」は単なるヘアケアブランドではなく、ウェルネスを中心としたホリスティックなビューティ体験を提供するブランドです。その哲学をより多くの日本のお客さまに伝えるために、教育プログラムやパーソナライズされたカウンセリング、没入型の体験提供をさらに拡大していきたいと考えています。また、サロンとのパートナーシップ強化も引き続き重要な優先事項です。アーティストたちが「アヴェダ」のホリスティックな世界観を体現し、お客さまに届けられるように、必要なツールや支援を提供していきます。こうした取り組みは、ウェルネスを重視する日本のビューティカルチャーとも非常に親和性が高いと考えています。