
「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」が6月30日(ニューヨーク現地時間)に2025年秋冬コレクション(実売期は2026年春夏)を発表した。2026年春夏メンズ・ファッション・ウィークの最中、ファッションジャーナリストたちはニューヨーク公共図書館に舞い戻った。
コレクションノートに記されていた今シーズンのテーマは”BEAUTY(美)”。「心や感覚に喜びを与える性質、またはその組み合わせのことで、形や色の調和、比率、信憑性などの性質」というメッセージが目に飛び込んだ。コレクションスタート前に目を通した資料に書かれたルック数はわずか19体。通常のシーズンよりも絞り込まれたコレクションに期待が高まる。
クチュール感が増したおとぎ話の中のドールたち
スーパープラットフォームのブーツを履いたモデルたちがゆっくりと長い回廊のランウェイを歩いてくる。いつもよりゆっくりとした歩調のウォーキングは今にも転びそうになる不安定なシューズによるものでもあるように見えるが、われわれが一体一体をじっくりと眺められるためのペース、配慮とも捉えられる。
ファーストルックはショルダーラインが極端にデフォルメされたレースのボディスーツとカーゴパンツ。続くモデルたちが纏うルックも大袈裟にどこかがデフォルメされている。今シーズン、マーク・ジェイコブス(MARC JACOBS)が見せたのは、彼が2024年春夏コレクションからシリーズのように描いてきたドールたちが登場するおとぎ話の世界。見覚えのあるようなデフォルメ感と人形のように歩くモデルたちだが、今季はさらにボリューミーで繊細なテクニックを駆使したデザインでクチュール的な要素が増している。マークが描くおとぎ話は終章を迎えるのか?
パニエでボリューム感を出したスカートやふんだんに使われたレース、大きく膨らんだショルダーライン、コルセットのディテールはビクトリア朝時代のお姫さまのよう。ほぼすべてのモデルがヘア、またはバックスタイルにペーパードールのような大きなリボンを着けている。何十にも重ねられたレース、ランジェリー、小花柄など、おとぎ話を構成するガーリーな要素が全体的に流れる中、今季はデフォルメされたカーゴパンツやデニムのようなワイドパンツ、パンクのようなムードも感じられる。
渾身の19ルックに込められたコレクションは、リアルクローズが先行するニューヨークでは珍しいオートクチュールのような存在感だ。アメリカではバーグドルフ・グッドマン限定でコレクションラインを販売している。今回のコレクションからは限られた顧客に向けてマーク・ジェイコブスのクリエーションへの強い思いを届けようというメッセージも感じられた。